能登の仮設入居、過去の災害を教訓に 独居101歳「頼む、帰して」
能登半島地震は1日で発生から半年を迎えた。避難所から仮設住宅に移る被災者は増えており、生活の再建に向けて第一歩を踏み出している。仮設住宅の入居は、元のコミュニティーを維持する対応が取られている。
101歳の松本ミサさんは、仮設住宅で一人暮らしをしている。元日の能登半島地震で大きな被害を受けた石川県穴水町にある「甲(かぶと)第1団地」だ。
「かわいがってくれた人たちにお礼を言って死にたい。頼む、甲に帰してくれ」。地震で自宅が全壊し、福井の長男一家と同居するつもりだったが、甲地区に仮設住宅ができると聞くと、息子たちを説得して、5月に入居した。
石川県内では9市町に仮設住宅計6810戸が建設される。市町は、元のコミュニティーを維持するため、地区単位で入居できるようにした。
この対応は、過去の大災害を教訓にしている。1995年の阪神・淡路大震災では、仮設住宅の入居者は高齢者や障害者を優先したうえ、抽選で決めた。元のコミュニティーが分断され、入居者の孤独死が相次いだ。
甲第1団地では、25世帯のうち23世帯が甲地区の住民だ。昔からの顔見知りが松本さんの一人暮らしを支えている。
ただ、今回の地震でも都市部で被災者が多かったり、地区内に十分な広さの土地がなかったりして、地区単位で入居ができないところもある。
穴水町役場近くにある由比ケ丘の仮設住宅団地(190戸)もその一つ。ここに拠点を置くNPO法人「レスキューストックヤード(RSY)」(名古屋市)が6月、被災者のべ約250人にアンケートをしたところ、「睡眠時間が減った」と答えた人が4割、「不安が強まった」とした人が2割いたという。
浦野愛常務理事は「元気に見えても、内面で問題を抱えている人が多い。放置すると心身の健康状態の悪化を招くおそれがあり、孤立させないようにしたい」と語る。
被災自治体では今後、被災者の孤立を防ぐための見守り態勢をいかにつくるかが課題となる。(千種辰弥)
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