東大卒AI技術者が挑んだ選挙の常識 契機は妻の「都知事選出たら」

有料記事東京の政治東京都知事選2024

小川聡仁
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 「政治を、テクノロジーでアップデートする」

 過去最多の56人が出馬した東京都知事選で、そんな旗印を掲げた異色の候補者がいた。AI(人工知能)エンジニア、起業家、そしてSF作家という三つの肩書を持つ安野(あんの)貴博氏(33)。台湾の「天才デジタル担当相」と呼ばれたオードリー・タン氏からの後押しも受けた安野氏の17日間の選挙戦を追った。

 都知事選の投票が締め切られた7日午後8時。報道各社が一斉に小池百合子氏の「当選」確実を報じ、安野氏の初めての選挙戦は終わった。全体の5位にあたる15万4638票を獲得したが、当選は遠かった。

 それでも、支援した同級生ら約40人が集まった会場で、安野氏は胸をはった。「私たちが今回この1カ月やったことっていうのは、本当に選挙の常識を変えるものだったと思っています」。大きな拍手が上がった。

 文京区出身。9歳の時から親が買ってきたパソコンに夢中になり、ゲーム作りやプログラミングを始めた。私立開成中・高を経て入学した東京大学工学部ではAIを研究。「テクノロジーで社会システムをよりよくしたい」と、卒業後はAIを活用し、企業の業務を支援するベンチャー企業2社を創業し、軌道に乗せた。

 ただ、元々社会を変える力のある「政治の世界」に関心は強かった。学生時代から国会議員の質問の特徴を議事録から分析し「政治の仕組みを変えたい」と思い続けてきた。

オードリー・タンも認めたアイデア

 出馬のきっかけは、ほんの3…

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この記事を書いた人
小川聡仁
ネットワーク報道本部
専門・関心分野
人口減少、法律、経済、震災、商品
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    鳥海不二夫
    (東京大学大学院教授=計算社会科学)
    2024年7月8日8時28分 投稿
    【解説】

    安野氏はAIエンジニアということで,比較的近いところにいたため周りに応援する人も多く,個人的には頑張ってほしいと思っていましたが,得票数で5位とかなり健闘されたのではないでしょうか. ちなみに,「NHKなど多くのメディアでは「主要候補」とし

    …続きを読む
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    菅野志桜里
    (弁護士・国際人道プラットフォーム代表)
    2024年7月8日16時40分 投稿
    【視点】

    私が安野さんに1票投じたのは、SNSを「人気の拡散」「非難の応酬」ではなく「民意の集約と公開」に使う選挙手法に好感し、次の挑戦の機会に繋げて欲しかったから。他の候補者陣営がブロードキャスト(発信)の質量アップに全エネルギーをそそぐ選挙戦のな

    …続きを読む
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