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地名散歩 山帰来川内(かからごうち) 諫早市多良見町

長崎地名的散歩
07 /23 2024
 諫早市多良見町の市布(いちぬの)地区に、山帰来川内(かからごうち)という地名がある。
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 場所は、JR市布駅から長崎バイパスの古賀市布IC出入口へ向かう途中の、谷間の辺り。
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 前回の「九重里(こつづら)」のすぐ近くで、ここも長崎市古賀町との市境。多良見町側には長崎バイパスの出口がある。
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 バイパスの高架をくぐると、古賀町の「正念」という地区になる。
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 正念も気になる地名だが、昔、この山の中腹にあった「正念寺」にちなんだものだと地元の古老が教えてくれた。正念寺は、450年ほど前にキリシタンの焼き打ちで廃寺になっている。

 「カカラ」とは、サルトリイバラ(猿捕り茨)という、ユリ科のつる性低木の別名。トゲがあり、猿が引っ掛かるのでその名がついたとも言われている。
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 猿はトゲのあるつるに絡まり、全身チクチクして痛いのだが、そのうち何だか気持ちがよくなって、顔と尻をいつもより紅潮させ、「ウッキ〜」と恍惚の表情を浮かべ、次回は自分から絡まりに行った。そういう事だろうか?
 (そういう事だろうか?じゃねぇよ)

「山帰来(サンキライ)」も、サルトリイバラの別名とされているが、普通は「カカラ」とは読まないようだ。こちらはトゲが無く、実際は別の品種らしい。これじゃあ猿は喜ぶまい。

 植物地名は、土地の状況を植物の名や特徴になぞらえている事が多いが、今回はそうではなさそうだ。無論、カカラの群生地という事でもない。

 ここは、九重里(こつづら)の近くで、面倒くさい植物地名であることから、どうやら、例の「インテリ坊主」が絡んでいる気がする。
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 山帰来河内(かからごうち)の「カカラ」は、地形から推測すると、おそらく「カクレ」だったのを、植物の名に変えたのだと思う。

 国土地理院の地図では、長崎バイパスの大きな円弧の内側全体が「山帰来川内」であるかのような表記がしてある。
 しかし、実際の小字「山帰来河内」と「上山帰来河内」の位置は、広い道路から西側の細長い部分。※小字地名では「河」
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 緩傾斜の車道沿いには、コンクリート製の側溝がある。これが「川内」の川だったのだろう。
 昭和37年の航空写真を見ると、道路部分には水田や畑が広がっていた。
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 そして、その西側の小山は、浸食地形なのか、えぐれた部分が細長く続いており、その内側は隠れて見えない。 
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 ここにも小さい川があり、水もそこそこ流れていた。わずかな水田もあったようだ。
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 細い道を登っていくと、山の陰になり、最後はまた下って長崎バイパス出口付近に出る。
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 他にも細長い谷間があったり、崖の上に囲まれた平地があったりで、元々は「山に隠れた川のほとり」を意味する「隠れ川内」だったのだろう。
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 長与町には「隠川内(かくしがわち)」という集落があり、入口が狭くて外から見えない地形になっている。

 「神楽(かぐら)」のつく地名も、土地を確認すると、多くが「山の中の見えないところ」であり、「隠れ」が変化したか、意味を含ませたものと思われる。
・山ノ神楽(やまのかぐら) 長崎市野母町
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・山犬神楽(やまいぬかぐら) 長崎市為石町
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 長崎市式見町の北、見崎町にある「神楽島(かぐらじま)」(別名:猫島)は、断崖の「クラ」が由来かもしれないが、陸から見えない側に浜があり、海蝕洞もあることから「隠れ島」の意味だったのかもしれない。

 日本神話では、天の岩戸に隠れたアマテラスをひっぱり出すために神楽を演奏し舞を舞ったという。これは偶然だろうか。

 佐賀県唐津市には「加唐島(かからじま)」があり、ここも見えにくい深い入江が多いため、「隠れ島」だった可能性がありそうだ。

 こういう「隠れ地名」は、「鬼」「別当」「布」など、いろいろなバリエーションがあり、例は多い。
 地名散歩 畦別当(あぜべっとう) 長崎市
 地名散歩 諫早市多良見町 市布(いちぬの)

 神楽島が属する見崎町には、ズバリ!「カクレ」という小字地名がある。キリシタンに関する地名の可能性もあるが、山ばかりなので、「隠れ地名」だと思う。

 こういう隠れた土地は、年貢を逃れるために「隠し田」や「隠し畑」が作られる場合も多かったらしい。貧しい農民に同情して、見て見ぬ振りをする役人も中にはいたという話も聞く。
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 もしかしたら、寺のインテリな坊さんは「隠れ地名」であることを隠すために「山帰来(かから)」などという、風流でよくわかんない地名に変えたのではなかったか。

 本当は心優しい僧侶だったのかもしれない。「インチキくそ坊主」とか言って、申し訳なかった。
 (いや、そこまでは言ってないと・・)



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