第3回生まれる前から余る運命 カバの出目丸は異国へ旅立った
動物園で生まれ祝福されるのもつかの間、成長するにつれてスペースの都合などから飼えなくなる「余りやすい動物」がいる。繁殖しやすく寿命は長め。飼育に必要なスペースは相対的に広く、プールなど特別な施設も必要――。代表的な存在がカバだ。動物園関係者は、カバを「難しい動物」だと言う。動物園にとって「想定外」の生を受け、海外に渡った1頭がいる。
神戸市立王子動物園で2017年4月、父・出目男(でめお)と母・ナミコの第4子として生まれた出目丸(オス)は、生まれる前から余剰になることがわかっていた。
出目丸の誕生には、ある事情があった。14年7月生まれの兄・出目吉の送り出し先探しが難航。近親交配リスクが高まる2歳を超えてしまい、ナミコと別居させる必要がでてた。
このことは、寝室が二つ、展示スペースは一つしかない王子動物園にとって同時に、出目男・ナミコ夫婦の同居を意味した。「新たな子ができる可能性も覚悟のうえでした」と谷口祥介・飼育展示係長は振り返る。そして、出目丸が生まれた。
出目丸が生まれるとすぐに、送り出し先探しが始まった。「オスがいます。なんとか引き受けてもらえませんか?」。谷口さんらは、ほかの動物園に相談を重ねた。
「ちょっと余裕がない」
「いまいるカバが死んだら入れられるけど」
「オスはいらない」
断られ続けるうちに出目丸は成長する。母と同居できる期限がじわじわと近づいてきた。兄・出目吉の時と同じ轍(てつ)は踏みたくない。
プレミアムA 動物たちはどこへ 変わりゆく動物園
日本に動物園ができてまもなく140年。これからも存在していくために、果たすべき役割は何か。情報公開請求して入手した84の公立動物園の資料と取材をもとに、動物園が抱える理想と現実、ひずみに迫ります。
「一刻も早く送り出し先を見…
- 太田匡彦
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