大地震、徒歩の帰宅は危険いっぱい 「すぐ帰らないで」

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井上充昌
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 首都圏を襲った最大震度5強の地震で、出先に足止めされる「帰宅困難者」が発生した。だが、今回より被害が大きい首都直下地震が起きれば、もっと多くの帰宅困難者が生じることが予想される。こうした状況を念頭に、専門家は心構えの徹底を訴える。

今回無事に帰れた人も油断しないで

 「今後起こりうる首都直下地震は今回の地震より被害が大きくなる。今回は無事に帰宅できた人も油断しないで」

 こう呼びかけるのは、東大大学院の広井悠教授(都市防災)。都市部の大規模災害で交通網がストップして会社や学校など出先から帰りにくくなる「帰宅困難者」が、何とかして自宅に帰ろうとすることに警鐘を鳴らす。

 7日午後10時40分ごろ発生した地震は最大震度5強、都心の多くは震度4を観測した。首都圏の交通網は乱れ、「日暮里・舎人ライナー」が脱輪するなど、公共交通機関の運転見合わせや遅れが相次いだ。都内のJR駅前ではタクシーを待つ人で行列ができた。

 だが、東京都は今回、大規模災害時に外出先にとどまる「一斉帰宅の抑制」を呼びかけなかった。都によると、多くの交通機関が地震後間もなくの復旧が見込まれ、夜間だったために一斉の帰宅による混雑の恐れが少ないなどと判断したためだ。

 10年前の東日本大震災では都心は震度5弱などで、交通網が混乱し、内閣府の推計では首都圏で515万人の帰宅困難者がいたという。広井教授が当時約2千人を対象にインターネットで調査したところ、8割が当日に帰宅したと回答した。多くが都心から徒歩で帰ったとみられる。

 30年以内に70%の確率で起きるとされる首都直下地震では、マグニチュード7程度、震度6以上が想定される。今回より大きな被害が見込まれる。こうした大規模災害では、広井教授は「落ち着くまで帰宅しない方がいい」と呼びかける。余震や火災の危険がある中、普段は歩かない道を行くのは危ないためだ。

 広井教授のシミュレーションでは、都内の勤務者や学生らが平日昼間に一斉に帰宅しようとすると、歩道では1平方メートルに6人程度が集まる「すし詰め」の場所があちこちで発生するという。駅などの人の多い場所では、特に高齢者や子どもは危険が大きい。

 またシミュレーションでは、車道は車の交通渋滞が起きるとされた。救急車などの通行に支障が出る可能性もある。

 ではどうすればいいのか。

記事の後半では、職場や学校などで大規模災害に遭った場合の具体的な留意点を紹介します。

 内閣府は2015年、大都市…

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    田渕紫織
    (朝日新聞社会部記者=メディア、子ども)
    2021年10月14日12時27分 投稿
    【視点】

    では子どもの迎えはどうするか。 学校や保育園などで「引き渡し訓練」がよく行われますが、現実的でしょうか。 「引き渡せない」場合について、想定をしているでしょうか。 3・11の時から議論は進んでいません。 子どもに「地震が起きたら

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