京都・嵐山に歌川広重も描いた名所が復活 雨の後だけ出現「幻の滝」

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日比野容子
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 藤原定家ら多くの歌人に愛され、和歌に詠まれた京都・嵐山の「戸無瀬(となせ)の滝」。近年は樹木で覆い隠されて知られぬ存在になっていたが、地元観光関係者らが復活を目指して取り組んできた。水量が減って雨が降った後だけしか見られないことを逆手に取り、「幻の滝」として新たな観光名所にしたいと意気込む。

 戸無瀬の滝は渡月橋の上流、大堰(おおい)川(桂川)右岸の国有林内にある。幅1メートルほどの小さな滝だが、かつては約85メートル下の川面まで、3段になって流れ落ちていた。郷土資料収集家の金久孝喜さんによると、昔の大堰川は水量が多くて流れも速く、戸を立てても水に流されて無くなることから別名・戸無瀬川と呼ばれたという。

 戸無瀬の滝は古来より歌枕として知られ、藤原定家は「となせ河玉ちる瀬々の月をみて心ぞ秋にうつりはてぬる」と詠んだ。歴史書「増鏡」は、後嵯峨上皇の離宮から戸無瀬の滝を望むことができたとし、「いみじき絵師といふとも、筆も及びがたし」と絶賛。離宮の跡地に創建された世界遺産天龍寺の庭園は戸無瀬の滝を借景として造られたと言われ、江戸時代には歌川広重浮世絵に描くなど、戸無瀬の滝は長い間、渡月橋と並ぶ嵐山有数の観光名所だった。

 しかし、明治以降にかつて天…

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この記事を書いた人
日比野容子
京都総局
専門・関心分野
オーバーツーリズム、歴史文化、医療・介護、クラシック音楽、スキー、料理、欧州事情など