最高益たたき出す決算に期待と不安 上場企業経営者たちの受けとめは

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松岡大将 清井聡 益田暢子 湯地正裕 渡辺七海 山本精作
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 上場企業の2024年3月期決算は、値上げや円安に押し上げられて最高益を更新した。25年3月期もAI(人工知能)ブームなどに期待が集まる。一方、経営者からは円安の負の側面や中国経済の動向、消費者の「値上げ疲れ」を警戒する声も出ている。

 好調ぶりが際だったのが自動車メーカーだ。トヨタ自動車が過去最高を大幅に上回る4.9兆円の純利益を出したのに続き、ホンダも前年比7割増の1.1兆円の純利益を計上した。「N―BOX」のように、モデルチェンジの際に性能を引き上げつつ値上げしたことや、北米で「CR―V」や「アコード」の販売台数が伸びたことなどが好業績に寄与した。値下げ幅の低いハイブリッド車(HV)が好調なことも後押しした。三部敏宏社長は「価値に見合った売価をつけることで、大きく改善できた」と語った。

 コロナ禍後の世界的な資源高などによって相次いだ値上げを、客足減といったマイナスでなく、工夫によって増収増益につなげた企業もある。

 セレクトショップ大手のユナイテッドアローズは、高価格帯のブランドを中心にデザインの改良が奏功。前年と比べて客足は横ばいだったが客1人あたりの売り上げが6.2%伸びた。松崎善則社長は決算会見で「価格上昇に信頼感を得られている手応えをしっかりつかめた」と述べた。

 純利益が前年比28.6%増のハウス食品グループ本社は、主力のカレールーやレトルト商品を値上げした一方、100円ほど安い新製品も出す「合わせ技」が効いた。一昨年の値上げ時に販売が鈍った反省を生かしたという。浦上博史社長は「日本の顧客は中間(層)が厚いイメージがあるが、もうそういう状況ではない」と話した。

賃上げの状況を注視

 今年の春闘では大企業で賃上げが相次いだ。日本銀行がめざす物価と賃金の「好循環」が続くには、企業がコストを今期もうまく転嫁できるかに注目が集まる。

 海外での調味料や食品販売が好調な味の素の藤江太郎社長は、原材料や人件費アップの影響について「しっかりと給料をあげていくためのコスト構造に向け、必要な値上げはやっていきたい」と述べる。

 一方、値上げによる消費の冷え込みに懸念を示すのがレジャー施設を手がけるラウンドワンの杉野公彦社長だ。昨秋、「スポッチャ」で7%分、ボウリングで2%分の値上げを行った。「徐々に上がるコストを取り込むため、今後も値上げはしないと」と話すが、競合する遊園地などとの競争も意識し、「我々の価値がどんなバランスだったらいいのか。右や左を見ながら、恐る恐る値上げしていくしかない」とも話す。

 ロート製薬の杉本雅史社長は13日の決算会見で「消費者の購買動向を左右するのは所得。今年度に限っては5%を超える賃上げがあり、落ち込みはそれほど心配していないが、来年もこの水準の賃上げが続くかどうか、状況に留意していく必要がある」と語った。(松岡大将、清井聡)

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