ドジャース大谷翔平投手が、4年連続のオールスター先発出場を決めました。7月5日には30歳の誕生日を迎えました。前回のコラムでも書いたように、シーズン前半終了を前に、ナ・リーグで打率、本塁打、打点とも上位につけ、打撃3冠を狙える位置にいます。

メジャーで3冠王は、打者にとって最も難しい偉業の1つです。1920年にメジャーで打点が公式記録となって以降、最初の48年間で9人、のべ11人も3冠王が誕生しました。しかし、68年以降の56年間でたった1人しか3冠王を成し遂げていないからです。

理由として、選手数の増加が挙げられます。1961年以降ア、ナ両リーグとも球団数拡張、いわゆるエクスパンションの時代を迎えました。中南米諸国はじめ、世界中から優秀な選手たちがやって来てプレー。競技レベルが高く、才能あふれる選手が多い時代となり、特にホームランやヒット打ちの名人などスペシャリストの時代となりました。

2012年、ア・リーグでミゲル・カブレラ(タイガース)が45年ぶりの3冠王に輝くと、それ以降、毎年のように3冠王を狙えそうな選手が出てきています。

具体的に名前を出すと、18年ナ・リーグでクリスチャン・イエリチ(ブルワーズ)、21年ア・リーグでウラジーミル・ゲレロ(ブルージェイズ)、22年ア・リーグでアーロン・ジャッジ(ヤンキース)、ナ・リーグはポール・ゴールドシュミット(カージナルス)らで、シーズン終盤まで3冠王獲得なるかと騒がれました。

今年はア・リーグでジャッジ、ナ・リーグでは大谷が3冠を狙えそうです。かつて、1933年にア・リーグがジミー・フォックス(アスレチックス)、ナ・リーグがチャック・クライン(フィリーズ)と両リーグ同時に、しかも同じフィラデルフィアを本拠地としたチームから3冠王が誕生しました。それ以来、91年ぶりに両リーグとも3冠王誕生の可能性があります。

3冠王獲得のために、最大の難関は打率だと思います。しかし、20世紀前半と現代の野球を比べると、最大の違いは打率にあります。20世紀前半、メジャーの平均打率は2割8分前後もありましたが、最近は2割5分以下となり、今年は68年以来最低の2割4分2厘まで下がっています。

驚異的な高打率を残すアベレージヒッターが少なくなり、ホームランバッターでも首位打者を取れるチャンスが巡って来ました。それによって、3冠王の可能性が高まって来たわけです。ただし、7月2日にジャッジが3冠になったと思ったら、翌日にガーディアンズのスティーブン・クワンが規定打席に到達。何と、打率3割6分でトップに登場しました。

一方、ナ・リーグも大谷にとって最大の強敵がいます。22年ア・リーグで首位打者、昨年はナ・リーグで首位打者に輝き、今年5月に電撃トレードでパドレスに移籍した「トニー・グウィン2世」ことルイス・アラエスです。また、18、19年と2年連続ナ・リーグ首位打者に輝いたクリスチャン・イエリチ(ブルワーズ)も規定打席到達で脅威の存在となりそうです。

ちなみに、大谷は21年シーズン前半戦打率2割7分9厘から、後半戦はホームラン数の失速だけでなく、打率も2割2分9厘と低下。しかし、22年は前半戦打率2割5分8厘から後半戦2割9分3厘にアップ。昨年も前半戦3割2厘から後半戦3割8厘に上げました。

メジャー史上初の異なるリーグで2年連続首位打者に輝いたアラエスとの首位打者争い、さらにホームラン王と打点王争い、それと両リーグ同時の3冠王誕生なるか? という意味で、大谷&ジャッジの3冠王争いから目が離せません。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)

ヒマワリの種をほおばるドジャース大谷翔平(2024年7月4日撮影)
ヒマワリの種をほおばるドジャース大谷翔平(2024年7月4日撮影)
ヤンキース・ジャッジ(2024年6月9日撮影)
ヤンキース・ジャッジ(2024年6月9日撮影)