連載:おれたちの富士

2010年11月23日

おれたちの富士 ~五合目~

oretachno


10年くらい前、
妻(当時スケ)と富士山に登りました。

若気の至りとでも言いますか、
ジーンズにレッドウィング、PRADAのバッグ、
クーラーボックスにビールを入れて頭はアフロ(別にいっか)。
買ったきりろくに読まず、玄関先に置き忘れて来た“るるぶ富士山”。
完全に山をなめてました。

富士急ハイランドでお化け屋敷が5時間待ち
→じゃあ富士山登っちゃう?!
→あれー、どの登り口から登るんだっけ
→どこでもいいやー。ってか道迷ってね?
→スイマセーーン。富士山はどこから登れますか?
という流れでした。
(初級者コースから登るつもりが
道に迷って中級者コースから登っていた事が後に判明しました)

 

それではそんなバチ当たりなふたりの旅に、しばしお付き合い下さいませ。

(タイトルはもちろん塀内夏子さんの名作『おれたちの頂』のパクリ、オマージュです)

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第一話 ~五合目~


「(゚д゚)、ハァ?五時間待ち?たかがお化け屋敷に?
五時間もありゃあ富士山登れるぜ!」
と若気のイタリーズは急遽予定変更。
富士急からMt.富士へと向かった。

とりあえず、“るるぶ富士山”で五合目までの道と
どの登り口から登るのが良いかの確認だ。ってあれ?
るるぶ、ないぞ。

そうだ、出発直前
玄関先でパラパラっと観て・・・・
そのまま車のボンネットの上に置いてきちゃった。

――――結局、道にも迷い
ガソリンスタンドのおっちゃんに道を訊いて
5合目には辿り着いたけど、何て登り口だったか憶えてないです(たぶん須走口)。――――


駐車場にいた下山ホヤホヤっぽい大学生2人にインタビューしてみる。

大学生A:「いやー超、余裕ッスよ」

大学生B:「往復4時間ッスよ」

ぼく:「うそ?そんなもんなの?」

じゃあ家の裏の山に毛が生えた程度か(“はげた山”だけに) と
完全に勘違いしてしまうぼく。

“いよいよ登りますよ”的な神社みたいな場所で
色々なものが売っていた。
携帯酸素も売っていた。1000円なり。
まさか、要らねえよ。とスルー。

六角形の杖も売っていた。
これはちょっと格好いいので買った。
旅の思い出タペストリー的に。

・・・この選択が後にとんでもなく響く事になろうとは
この時のイタリーズには知るよしもなかった。

おれたちの富士登山ははじまった。


つづく


第二話 おれたちの富士 ~六合目~

第三話 おれたちの富士 ~八合目~

第四話 おれたちの不時 ~八合五勺~

第五話 おれたちの無事 ~9.9合目~

第六話 おれたちの富士 ~御来光~

第七話 おれたちの富士 ~下山~

最終話 おれたちの富士 ~そしてぼくは途方に暮れる~ 


プロローグ そこに山ガールから

リンク : 初心者必見!富士登山のアドバイス&レポート

リンク : 『おれたちの頂 塀内夏子』立ち読み(コミックパーク)



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2010年11月24日

おれたちの富士 ~六合目~

第二話 ~六合目~

みんな、
たぬきに化かされた事は ないかい?
もしくは、
「あれ?おれ、化かされてね?」と思った事は ないかい?

ぼく達が今、まさにそれだ。

富士山頂上を目指し、登り始めたのはいいが、
六合目に辿り着く気配がいっこうに感じられない。
あの大学生は「往復4時間ッス」と言ってたな。
すでに2時間たってるんですけど。

あれ、富士山ってあれなの?
五合目以降、いっさい看板や道しるべもないまま頂上着いちゃうの?
そんな訳ないよね。
でも、いっこも看板や道しるべもない。
人もいない。
もっとみんなでワイワイ登るんじゃないの、富士山?


「・・・・・化かされてるかもしれない」
1時間半も経つと、そんな疑惑の念が急浮上してきた。

そういえば五合目駐車場も人気(ひとけ)がなかったな。
というか、居たのはあの大学生ふたりだけだった。
何が往復4時間だ?あいつら。って、もしかして
あいつらが TA ・ NU ・ KI ・ ・ ・?
(((( ;゚д゚)))

これはもう尋常じゃあない。
ぼくはいてもたってもいられず周りが見渡せるような場所を探した。
登山道から外れて、
草木生い茂る小高い斜面に登ってまわりを見下ろしてみた。

・・・何もない。他に登山してる人などいない。
ひとっこひとりいない。
あたしゃ よわったよ。

すると「ガサガサ...ガサゴソ」と
上から、人が降りてくる音!
ぼくはすぐには登山道まで戻れない場所にいるので
草の隙間から、彼女 (結婚前なので。てへへ。) に叫んだ。

ぼく:「おーーい。上から人が来るぞー!道きいてくれーー!」

彼女:「ムーーリーーーー!!!」

ぼく:「(# ゚Д゚) ハァーーーイ?」

ぼくは急な斜面を猛ダッシュした。
するとそこにいたのは、
身長2メートルくらいの黒人さんだった。
∑(゚台゚lll

ボビー(仮):「What's up?」

ぼく:「six-goume-wa-madakaina?」

ボビー:「I'm tired. go home」

まったくかみ合わない。

ジェスチャーを交え、なんとか理解したのは
ボビー:「おれたち、疲れたから帰るぜ。
上はまだまだハードだぜ!グッドラックな!」
みたいな感じだった。
ボビーは家族連れだった。

後で判明したのだけど、
登りと下りは違う道なので、ここを下ってくる人はみんなリタイアした人だそうな。


程なく六合目に着いた。

大学生の話が本当なら、
彼らが往復した時間の
実に半分をかけて、ぼくたちはやっと
六合目に到着した訳だ。


つづく

第三話へ 







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2010年11月25日

おれたちの富士 ~八合目~

第三話 ~八合目~


六合目を通過してからは
わりとスムーズだった。

もう八合目。もう少しだ。・・・もう少しか?
でも随分登ってきたものだ。

そして、ここまで登ると際立ってくるのが、
寒さと、山小屋の主人の愛想の悪さだ。

まず寒さ。
真夏だと言うのに半端なく寒い。
なのにクーラーボックスにビールをいっぱい入れて、
担いでいるアフロ・・・
相当シュールな絵だ。
そのエネルギー消費は登山のみに集中させたい所だね。
無知は罪。
食事をしようと入った山小屋は完全にアウェイ状態で
「買わないなら出てってくれ」とか
「寒いからドアしめろ」とか言われ
「こんなとこで飯なんか食うか!」と思ったが、
あ、温かいものを・・・
たべ、食べないと、死・死んでしまうま。

カレーを注文する。
出てきたそれは、どう見てもレトルトの
“あ、あれ食べよ”だ。間違いない。
ともさかりえがCMしていたカレーだ。
1500円なり。
足元見やがって・・・

でもあれか、
ここまで物資を運ぶだけでも相当な労力だ。
運賃込みと思えば妥当な値段かもしれない。

ふと、頭をよぎる。
「そうか、ここまで苦労して担いできたビールも
ここなら高値で取引されるかも・・・」って寒いわ!誰が飲むかい。

レトルトカレーとサッポロ一番(1000円なり)
を完食した 場違イーズは、
また極寒の夕闇の中へ旅立った。

もうすっかり日は落ちている。
でも、御来光を見る為には、少しでも登らなければ。
あと何時間で頂上に着くのかまったく分からないのだ。

・・・ふと彼女が、体調不良をうったえた。
ぼくは、あの名作“おれたちの頂”の恭介を思い出す。

その後、思いがけない出来事がぼくたちを襲うのであった....

つづく

第四話へ




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