新型コロナウイルスの感染収束が見通せないなか、東京オリンピック・パラリンピック開催の意義に疑問を覚える人は少なくない。昭和史の研究者で学習院大前学長の井上寿一同大教授は、現在の政府の迷走ぶりは、太平洋戦争で日本が敗戦した要因とされる大局的な戦略の欠如や楽観論など数々の共通点があると指摘する。【聞き手・鈴木英生・オピニオングループ】
楽観と慢心で長期化
――現状と80年前の政府の動きに共通性を感じられているとか?
◆新型コロナウイルス対策と東京オリンピック・パラリンピックを巡る意思決定は、太平洋戦争時と類似している。国家戦略がなく、大義名分も施策の優先順位も不明瞭。ずるずると続けた戦争の結果は言うまでもない。では、今回はどのような「終戦」があり得るだろうか……。
戦時中に陸軍省整備局戦備課長などを務めた岡田菊三郎は、戦後、「真珠湾攻撃の際になぜそのまま真珠湾を占領しなかったのか」と振り返った。奇襲成功だけに満足せず、米国の領土を占領しておけば、和平交渉の取引材料になったからだ。
ところが、緒戦の連勝で楽観と慢心が…
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