教え子とすすった町中華のラーメン 不良少年も包んだ名将のぬくもり

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照屋健
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 昨年7月。東京五輪が開幕する3週間前。

 「これが、最後の取材になるかもしれないな」

 バドミントンの指導者、大高史夫さんが記者の私にぽつりとつぶやいた。返す言葉に困っていると、にっこりと笑った。

 「そうだよな。また取材をしてもらえるように、頑張らないと」

 その穏やかな笑顔を、今も忘れられずにいる。

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 埼玉県で20年以上教員をし、日本代表の奥原希望(27)、パラ日本代表の鈴木亜弥子(35)らを育てた人だ。当時70歳。がんを患っていた。

 さいたま市のご自宅にお邪魔した。2020年1月にお会いした時より、体重は10キロ近く減り、自宅の2階に上がることもできなくなっていた。抗がん剤の影響でのどがかすれ、スマホを持つ手が震えていた。

 それでも「バドミントンをとりあげてもらえるなら」と取材を受けてくれた。

 大高さんは自宅の2階をリフォームし、奥原を育てた。その才能にほれこみ、「最後の道楽だから」と家族に頼み込んだ。奥原は、長野県の中学校を卒業し、大高さんがバドミントン部の顧問を務める埼玉・大宮東高に入学。大高さんは定年間近だった。

 15歳の奥原をJR大宮駅の新幹線ホームまで迎えに行ったこと。格上の実業団選手に負けて異常なほど悔しがり、次には必ず勝つようになったこと……。

 エピソードを聞きつつ、東京五輪・パラリンピックを控えた教え子への思いを、尋ねた時のことだ。

 「私は、奥原や鈴木に頑張れ…

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照屋健
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