「赤坂から書店が無くなる」 閉店する文教堂、貼り紙に込めた思い

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中村瞬
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 <赤坂駅周辺の書店が1年ちょっとの間に全て無くなってしまいます>

 <本屋が無くなってしまいます>

 今年4月。ある本屋の店頭に、こんな紙が貼り出された。

 赤坂駅に隣接するビルの1階。全国に書店を展開する「文教堂」(本部・川崎市)の赤坂店は、6月17日に27年間の営業に幕を閉じる。

 「書店の減少が止まらない中、赤坂からもなくなってしまうことの寂しさとショックは大きかったですね」

 赤坂店を担当する文教堂運営本部のエリアマネジャー、富田利之さん(52)は、言葉に込めた思いを明かす。

 2021年3月に老舗の金松堂書店が、22年1月にはTSUTAYA赤坂店がそれぞれ閉店。周辺の書店は選書専門店「双子のライオン堂」を残すのみとなり、赤坂駅周辺から一般書店が姿を消す。

 「老舗だけでなく、書店業界最大手の撤退は衝撃を受けました」

 赤坂店は1995年9月に開店。オフィス街という立地条件から、特に昼休みの時間帯は多くの人でにぎわい、3台のレジ前に行列ができた。距離的に国会が近く、首相就任前の岸田文雄首相や、首相在任中の菅義偉前首相が来店したこともあるという。徒歩数分の距離にTBSホールディングスがあり、利用客にはテレビ関係者も多い。

 文教堂の撤退は、再開発に伴うビルの建て替えが理由だ。赤坂店が入る「国際新赤坂ビル東館」(港区赤坂2丁目)を含む周辺一帯は、まもなく再開発の工事が始まる。

 だが、それだけではない。インターネット通販の拡大や電子書籍の普及で、文教堂の店舗の中には、売り上げがピーク時の半分になったところも。さらに、コロナ禍が追い打ちをかけた。

 赤坂店の周辺では、飲食店が軒並み営業休止に。在宅勤務が広がり、人出も減った。海外からの観光客が激減したことも響いたという。

 富田さんは赤坂店の状況について「非常に厳しいというのが正直な気持ちでした」と明かす。

有名人からも続々と反響

 富田さんはもともと、閉店に際して、利用客からメッセージを寄せてもらう企画を考えていた。

 今年1月、本社での会議でこ…

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    伊藤大地
    (朝日新聞デジタル編集長)
    2022年6月16日14時19分 投稿
    【視点】

    この赤坂の文教堂はオンライン書店にはない魅力がありました。それは「業界っぽさ」。すぐ近くにテレビ局のTBSと、大手広告代理店の博報堂があるため、メディアや広告関連の新刊がズラリと平積みされ、独特の雰囲気を放っていました。専門書にふと出会うの

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