親の信仰で自由奪われた「2世」…見えづらい問題、周囲にできること

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 安倍晋三元首相が銃撃されて死亡した事件で、殺人容疑で送検された容疑者は、「母が入信し、献金で生活が苦しくなった」などと宗教団体への恨みを供述しているといいます。社会心理学が専門で、カルト団体やマインドコントロールに詳しい立正大学の西田公昭教授は、親の信仰によって生活上の影響を受けている子どもの問題に改めて目を向けるべきだと訴えています。

 ――宗教法人「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)は記者会見で、容疑者の母親が会員だと認めた上で、「(母親が)どのような家庭事情で破産に至ったのかは掌握し切れていない」などと説明しました。

 旧統一教会は、これまでも多額の献金を強要することが問題視されていました。裁判になっている事例も多くあります。そのために家計が苦しくなり、家族が離散したり、子どもが進学をあきらめなくてはならなくなったりしたケースもありました。

 もちろん、銃撃事件そのものは論外であり、しかも選挙中の凶行だったので、本人は意図しなかったとしても「民主主義への挑戦」をも意味してしまったように思いました。

 当然ですが、宗教も、特に新興宗教であってもいろいろです。すべてをカルトと一緒にして語ることはできません。

 人生にはいろいろと悩みや不安はつきものですから、誰でも何か超越的な存在の力を信じたがる気持ちになりやすいときがあります。

 そんなとき、信じることで安心感やいやしを与える「健全な宗教」がある一方で、「無理してでも従わなければ、幸せにはなれない」と脅迫的にうたって自由を奪い、人心を縛る破壊的なカルト集団も一部にあるのです。

 後者では、いやおうなく求められる通りにしないと、自分や家族など大事な人々が不幸になる、という脅迫的なメッセージが隠されているのが特徴です。

西田公昭教授は、かねて「宗教2世」とされる人たちへの支援の重要性を訴えてきました。「信教の自由」との関係は。具体的に、どんな支援ができるのでしょうか。記事後半で紹介しています。

 ――日本で「自由を奪う」ような宗教に触れる人が増えたのはいつごろでしょうか。

 1980~90年代の経済バブル期と前後して、拝金主義のむなしさや、未来の社会への不安が強くなったことが、一つのきっかけかもしれません。

 当時、若者を中心に精神的な幸せを求める風潮が広がり、自己啓発セミナーなどに答えを求めたがる人も増え、そこに新興宗教が活発に入り込んだからです。多くの事件を起こしたオウム真理教も、この時期に広まりました。

「宗教2世」と区別するべき、別の2世とは

 いまの日本で、宗教に対して…

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    江川紹子
    (ジャーナリスト・神奈川大学特任教授)
    2022年7月29日14時54分 投稿
    【解説】

     現在、社会が直面している問題について、専門家の話をじっくり聞いた良記事。文章の長さを気にせず、これだけ長尺で丁寧な記事を出せるのは、デジタル版ならでは。  これまで「宗教二世」「カルト二世」と呼ばれる人々については、ごく一部のメディアが

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