この春、京都が文化首都に?移転控える文化庁は「あくまで事務的」
「今までにない、霞が関から京都への先行移転の第一歩。文化、観光、経済が一体となり、日本全国のために発展させていきたい」
2017年4月、八坂神社や清水坂に近く観光客らが行き交う東大路通に、文化庁移転に先駆けて「地域文化創生本部」が開設された。開設式で、当時の宮田亮平文化庁長官は知事らの前でそう宣言した。
同本部は当初、文化財を活用した観光拠点づくり事業を進めたり、京都市内で日本食文化のフォーラムを開催したりと、伝統文化を生かした「文化観光」や「食文化」の振興を担っていた。だが20年、文化庁の組織再編で、文化観光と食文化を担当する部署は、新たな組織として東京へ移される。「政策を飛躍させるため、京都から東京へ羽ばたいていった」(同本部)
文化観光や食文化は、国宝や重要文化財も多く、祇園祭など四季折々の文化が色濃く残る京都が得意とする分野。府は国に対し、こうした分野を所管する組織の「着実な移転」を求めてきたが、23年5月の「本格移転」でも、二つの部署は東京に残ったまま。
2023年3月27日、文化庁が京都に移転して業務を開始する。「文化首都」をうたう府や京都市にとって、中央省庁の招致は悲願だが、文化庁との間にはすでに思惑のずれが生じている。市民の機運も高まっていない。省庁移転がもたらす効果と課題とは何か。
どちらも、東京・霞が関に集中する他省庁との連携が不可欠で、他省庁からの出向職員が大部分を占めると言うのが理由だ。府文化スポーツ部の担当者は「東京に部署が残るからといって一緒に仕事をしなくなるわけではない。でも……、観光も食文化もいつかは京都に来てほしい」と、諦め切れない様子でいる。
「歴史的に大きな転換点」か
政府は15年、首都機能の移転を目指し都道府県に対し、「政府関係機関の地方移転」の提案を募集した。京都府を含めて、42道府県から69機関の誘致提案があった。だが、政府が16年に示した基本方針では、外交や国会対応業務などについて「現在と同等以上の機能が発揮できること」と明記された。同年3月、全面移転が決まったのは、文化庁の京都移転だけだった。
文化庁は文部科学省の外局で、中央省庁のなかでも規模が小さい。職員の定員は22年度で297人で、文科省全体で約2150人いる職員の1割強ほどだ。年間予算は1千億円程度で、約5兆3千億円ある同省予算の一部に過ぎない。
「全面移転」と言うが、京都…
- 原田達矢
- ネットワーク報道本部|大阪市政担当
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- 国内政治、地方創生、合唱
- 西田健作
- 文化部|大阪駐在・美術担当
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- 美術、宗教、歴史