第3回宗教法人法に期待しすぎる危うさ 市民による「ソフトな規制」の道も

有料記事解散命令請求 私の見方

聞き手・田島知樹
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田近肇・近畿大教授に聞く

 政府は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令を東京地裁に請求した。高額献金などの違法行為を受けての請求は一見妥当に思えるが、信教の自由を保障する憲法との関係で問題はないのか。そもそも社会で「カルト宗教」が問題となった場合、信教の自由を守りながら、いかに対処するべきなのか。解散命令の請求の根拠となる宗教法人法や憲法に詳しい近畿大の田近肇教授に話を聞いた。

     ◇

 ――政府の解散命令の請求について憲法との関係で懸念はありますか。

 特にありません。

 まず解散命令自体が信教の自由に反するものではないことは、宗教法人オウム真理教への解散命令に対して最高裁が判断している通りです。

 解散命令によって宗教法人が解散しても宗教団体として残ります。法人格が失われて税制での優遇措置がなくなりますが、信者の宗教行為を制限するわけではありません。組織的な詐欺行為を理由に解散命令が出た明覚寺の時も合憲性は問題になりませんでしたから、霊感商法等を理由に解散命令を出すのも違憲とはいえないと思います。

 旧統一教会への解散命令の請求にいたる過程についてもかなり慎重だった印象です。

審議会の意見を聞いて請求「慎重だった」

 ――どう慎重だったのでしょうか。

 丁寧に議論を深め、手続きにならって進めていたと思います。さらに、宗教法人法には質問権の行使の前は宗教法人審議会の意見を聞かなければいけないとされているのですが、解散命令の請求前は求めていません。今回は審議会の意見を聞いたうえで請求したので、その意味でも慎重だったと感じます。

 ――質問権の行使についてはどうでしょうか。旧統一教会は文部科学省による質問権の行使について違法と主張しています。宗教行為に触れる質問は信教の自由に抵触するのでは、という懸念があります。

 そこは難しいところです。質問権は宗教法人を一般的に調査するものではなく、法人制度を利用して得た財産が違法な活動に使われないようにするために認められたものです。したがって、宗教活動については、質問権の行使の対象にはならない。あくまで財産的な事項に限られます。

旧統一教会への解散命令の請求には、憲法上の問題はないとする田近教授。一方で、宗教法人法の改正については、戦前回帰につながる可能性があると警鐘を鳴らします。

 ただ、法令違反があったとし…

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この記事を書いた人
田島知樹
文化部|文化庁担当
専門・関心分野
文化政策、国際政治、特に欧米の外交史
旧統一教会問題

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