2リーグ制維持へ、貫いた覚悟 元阪神球団社長を突き動かしたものは

有料記事令和のプロ野球

聞き手・福角元伸 堀川貴弘
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 20年前、プロ野球界は再編騒動に揺れた。

 6月に近鉄とオリックスの合併構想が明らかになり、その後、一部の球団オーナーの主導で「1リーグ制」へと加速した。

 この縮小化の流れに待ったをかけ、現在も続く「2リーグ制維持」に奔走した一人が、阪神の球団社長だった野崎勝義氏(82)。あの渦中で何を思い、今の球界をどう見ているかを聞いた。

2004年、激動のプロ野球界の渦中で

 20年前の6月13日に近鉄とオリックスの合併が新聞報道で明るみに。

 野崎「近鉄さんは経営に困っているんやろなとは思っていましたが、合併の話は全く耳に入っていなかった。同じ関西いうても、商売敵。これはパ・リーグの問題や、と静観していたんですね。ところが、12球団代表者会議や理事会に出席すると、パ・リーグと巨人を中心に1リーグ制への流れが完全にできている。話がおかしいやないか、と」

 7月のオーナー会議で西武の堤義明オーナー(当時)が「もうひとつの合併が進行中」と発言。1リーグ制への流れは加速する。野崎氏は2リーグ制維持に向けて阪神の全役員に対し、「1リーグ制移行よりも戦力均衡が先。巨人とたもとを分かつ決心が必要」と訴える。野崎氏は交流戦導入、ドラフト改革などの試案(※)をまとめた。

 「球団を減らせばファンの総数は減る。1リーグ制にしたらオールスター戦や日本シリーズもできなくなる。セもパも共存共栄できる構造改革について議論すべきだと思ったんです。スポーツ産業では戦力の均衡が一番必要というのが私の考え。当時、逆指名のあったドラフトの問題点は議論になっていたし、交流戦をやればパも潤う。試案は当時の球界の意見をまとめただけ。阪神のシニアディレクターだった星野(仙一)さんにもしょっちゅう相談しました。星野さんも『野球界の縮小につながることには賛成できない』という意見で、久万(俊二郎)オーナー(当時)にも進言してくれていた」

 野崎氏はセの5球団の代表者と面会し、広島、ヤクルト、横浜(現DeNA)、中日の4球団からは同意を得られたが、巨人は猛反発。当時の球団社長からは「反巨人連合のような動きに強い不快感をもっている。渡辺(恒雄)オーナー(当時)も強い憤りの念をもっている」と強い口調で言われた。

 「巨人側からは『試案は野崎さんの案ですか。それとも阪神球団全体としての案ですか』と何回も聞かれました。巨人とはけんか別れになることは分かっていました」

 同時期に、当初は野崎試案に賛成していた久万オーナーの態度が豹変(ひょうへん)する。野崎氏はオーナーから「巨人が(セを脱退して)別の球団と組むと言い出せばどうするのか」と問われる。

 「はしごを外されました。私…

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この記事を書いた人
福角元伸
スポーツ部
専門・関心分野
プロ野球、高校野球、大リーグ、ゴルフ、大相撲
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    稲崎航一
    (朝日新聞大阪スポーツ部長)
    2024年6月13日12時37分 投稿
    【視点】

    若いプロ野球ファンには、1リーグ制は想像もつかないかもしれません。 パ・リーグは経営難の球団ばかりで、セ・リーグは巨人戦の放映権料に頼っていました。近鉄とオリックスが合併したあと、さらに西武や巨人が旗振り役となって、ダイエーとロッテが合併し

    …続きを読む