孤立出産し、罪に問われる女性たち 命を守るために必要なものとは

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大貫聡子
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 誰にも相談できず、自宅の浴槽で男児を出産して沈め、その遺体を遺棄した――。横浜地裁は7月18日、殺人と死体遺棄の罪に問われたタイ国籍の女性(25)に執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。孤立出産の末、母親が産んだ子どもを殺害、遺棄する事件は絶えない。専門家からは、子どもの命を守るためにも、女性たちの抱える問題を理解し、孤立出産を防ぐ取り組みが急務だとの声があがる。

 判決などによると、女性は、交際していた男性と2022年2月に同居を始めた。同時期に胎動を感じ、妊娠を確信した。だが、医療機関の受診はせず、母子手帳も取得しなかった。誰にも妊娠を打ち明けることなく22年4月、自宅の浴槽で出産。生まれた男児をいったん引きあげたが、再び水中に沈めて殺害し、翌日、男児の遺体が入ったポリ袋を自宅マンションのごみ置き場に遺棄した。

 なぜ、だれにも相談できなかったのか。

 今年6月。弁護士同席のもと拘置所を訪ねた記者に対し、女性は「どうしよう、どうしようと思いながら、あまり考えないようにしてしまった」「誰かが気づいて何とかしてくれるのではないかと受け身な考えでいた」と説明した。

 弁護側証人として出廷し、女性の精神鑑定をした「人吉こころのホスピタル」(熊本県人吉市)の興野康也医師は「一般の感覚で言えば、無責任、信じがたい言い訳だと聞こえるかもしれません。でも、孤立出産に至る女性の中には、先のことを見通して行動することや困りごとを言語化し適切な他者に相談することが苦手な人が多いのです」と話す。

「境界知能」の状態、過酷な生い立ち

 興野さんの鑑定によると、女…

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