<高校野球三重大会:海星2-1昴学園>◇19日◇2回戦◇県営松阪 

新天地・昴学園での「日本一の下克上」の再現は、来夏に持ち越された。春夏通算13度の甲子園出場を誇る海星に食らいつき、8回に1点差まで追い上げたがあと1歩で敗戦。今春の三重大会は3位まで勝ち上がり、シード校として臨んだが、惜しくも初戦で散った。

東監督は部員1人で廃部寸前だった津市山間部の白山を立て直し、18年に夏の甲子園出場を導くミラクルで話題を集めた。同校の快進撃を元に昨年10月にTBS系のドラマ「下剋上球児」が製作され、東監督が主人公のモデルになった。昨春に同じ県立で山間部の大台町にある昴学園に赴任し、部長として臨んだ昨夏は17年ぶりに夏の県大会初戦突破。昨秋監督に就任し、夏は今回が初采配だった。

赴任当時の部員は今の半数の約30人。18年の三重決勝で対戦した松阪商の監督、冨山悦敬氏(70)が23年からコーチに就任し、タッグで基礎からたたき込んだ。「中学校でバリバリ(レギュラー)がおるわけじゃないので。たたき上げでやってます」。東は東京、西は大阪からも選手を集め、部員は60人にまで増えた。

「実戦ほどの近道はない」。白山の監督時代から「三重県断トツ」と自負する試合の場数を踏んできた。強豪校でも年間90~100試合程度だが、新チームから年間約170試合以上の練習試合を組んできた。「相手の『体がでかい』『打球速い』『球速い』とか、そういうのを見たり、感じてやらないと、強くならん」という持論がある。

「3年生が昴学園のあれ(基礎)をつくってくれたと思う。新チームに引き継いでまたやりたいと思います」。2校目の「下克上」物語は始まったばかりだ。【古財稜明】

◆東拓司(ひがし・たくし)1977年(昭52)9月23日生まれ、三重県津市出身。久居高校では「1番中堅」として活躍。甲子園出場経験はなし。大体大でも野球部に所属し、2学年上には元巨人、メジャーで活躍した上原浩治氏がいた。卒業後は母校のコーチなどを経て、昂学園の寮監時代の07年に教員免許試験に合格。同年から県立上野高校で監督を務め、13年から白山高校の監督に就任。6年目の夏に三重大会初優勝を飾り、甲子園初出場に導いた。23年春から昴学園に赴任し、部長を経て秋から監督に就任した。

◆昴学園 1949年(昭24)に宮川高萩原分校として創立し、1987年(昭62)からは萩原高として独立。1995年(平7)から「全国唯一の県立で全寮制の総合学科高校」として、現校名に改称された。野球部は春夏通じて甲子園の出場経験はない。所在地は三重県多気郡大台町茂原48。若宮一哉校長。

◆下剋上球児 18年夏に三重大会を制して甲子園に初出場した白山高校の硬式野球部をモデルとしたTBS系連続ドラマ、日曜劇場として23年秋に放送された。俳優の鈴木亮平が廃部寸前の越山(えつざん)高校の弱小野球部の監督に就任し、夏の甲子園に導いた主人公・南雲脩司を演じた。黒木華、井川遥、小日向文世らが共演し話題を呼んだ。

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