今春東北王者の花巻東が7回コールドで勝利し、8強入りを決めた。

初めての光景に、心が追いつかなかった。花巻東の簗田(やなた)蒼汰内野手(3年)は4回先頭、内角高めの直球を捉えた。打球は左中間スタンドへと吸い込まれた。「歓声が聞こえた瞬間に入ったことがわかった」。高校最後の夏に飛びだした、待望の公式戦初本塁打。「実感が湧かなかった」と表情を変えずにダイヤモンドを一周したが、大盛り上がりのチームメートに迎えられると、ようやく笑みをこぼした。

一撃で打線を呼び覚ました。前2打席は凡退で、チームも3回まで2安打。昨夏は史上最多高校通算140本塁打をマークしたスタンフォード大・佐々木麟太郎内野手(19)を擁し、甲子園で8強入りした。「今年は去年に比べて得点力は劣る」。だが、この一発で誘発すると、チームはその後8安打を放ち、終わって見れば11安打11得点で釜石商工に7回コールドで完勝。無失策、無失点で自慢の守備力をみせたのはもちろん、打力も光った。

昨夏甲子園では背番号20をつけてベンチ入りし、準々決勝の仙台育英戦(宮城)では代打出場。中前適時打で華々しいデビューを飾った。先輩たちに見させてもらった景色。今年も見られるかは、自分たちの手に懸かっている。「正直プレッシャーはあります。流れが悪い時など自分たちが(流れを)変えなくてはいけないので…」。それでも、この重圧に打ち勝たなくてはいけない。「このチームで甲子園にいくためにも、3年生が引っ張って最高の景色をみたい」。頼れる1番打者がけん引し、頂点をつかみとる。【木村有優】

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