外から見る日本、見られる日本人

バンクーバーの日本人社長ヒロが仕事、生活を通じて感じた経済、経営、社会、日本人観などを綴っています。

飲食

変化を感じる飲食消費4

9月第一週のレーバーホリディは北米では夏の終わりを告げる最後の3連休。当然、街中のイベントも多いのですが、恒例の日系秋祭りがあったので覗いてみました。私もイベントには数多く出店しているのですが、このイベントだけは出店を考えたことがないのは7月から8月にかけてイベントの嵐で出店が続き、来客も多い中、カラダが持たないのでこれだけは勘弁させてもらっているのです。

覗いてびっくりしたのは出店者の大半が飲食店だったことです。もちろん来場者も多いのですが、なぜこれほどまでに飲食店が集まるのか、ふと考えさせられました。道路にはフードトラックがずらり、敷地内の前庭にはテント設営の飲食店、建物内には出来合いの飲食を売る店…。みなさんそれなりに購入されているようですが、私は申し訳ないですが素通りしました。

日本で縁日やお祭りに行くと焼きそばやフランクフルトソーセージがおいしいと感じたのは屋外で食べるからで、別に縁日のフードの味が特別旨いわけではありません。私は携帯型BBQがあるので車のトランクに積んでおけばいつでもどこでもさっとBBQができるのですが、確かにBBQがうまいのは調理する際、BBQの蓋をすることで独特の風味が出ることもありますが、やはり外で食べる快感なのでしょう。

「外で食べる」とか「立って食べる」というのは一種の「非日常的行為」であり、それゆえに日本人にも外国人にも受けるのだと考えればなるほど、浅草浅草寺の屋台にしても福岡の中州の屋台にしても、丸の内のオフィス街のフードトラックも基本は買って外で食べることでうまさを感じているのでしょう。

通常の店舗店が味にこだわり、サービスにこだわる戦いであるのに対して外で販売する飲食店は短時間集中型でサービスよりもいかに手早く捌くかにかかっています。決して定期的に食べたいわけではなく、雰囲気に押されながら時々食べるからよいのでしょう。飲食の一断面ともいえますが、あまりこんなことを述べる人もいないかもしれません。

では店舗店ではどんな変化があるのかといえばアルコール摂取量が明らかに減っている点です。つまり飲まない客ばかりということです。先日も人気の韓国居酒屋に行きましたが、フルハウス(満席)状態の中、席を見渡すとアルコールを頼んでいる席はぽつぽつ程度。あとはコーラとか水だけの人も多く見受けられました。これは日系の居酒屋でも同様だし、寿司屋でもビールや日本酒を飲む人は限られています。つまり飲む文化が若い人を中心に明らかに減退している、そう見えます。

日本では2001年から2021年までの20年間で成人一人当たりのアルコール摂取量が22%も減っています。我々中高年者が一定量の消費を支えているわけです。ある調査によると20代の若者で定常的に飲酒するのは20年間で半減したとあります。また20代女性で飲酒が習慣化しているのは3%という調査もあります。つまり友達とでかければ飲むこともあるけど、それ以外は飲まないというわけです。

何故飲まないのか、これは私なりに解明しているのですが、時間が惜しいのです。飲むとその後、自分のことができないというわけです。私が麻雀をやらなかったのもゴルフを止めたのも時間が惜しいからでした。同様に今の人は酒でその日を潰したくない、ということなのでしょう。

飲食系ユーチューバーでうまそうに酒を飲む方を何人かフォローしていますが、よくよく考えれば時代の逆行なのかもしれません。

もしも飲食店から酒が無くなったら私は外食をしなくなる、これはほぼ断言できます。なぜなら酒も家飲みと外飲みの違いは屋台飯と同様に雰囲気を楽しんでいるからです。事実、家でベロベロに酔うことなどまずありません。私は「飲みに行く」けど「飯を食いに行く」というケースは案外少ないのでアルコールが禁止されているイスラム系の国に住んだら健康的になるだろうなとつくづく思うのであります。

最後、余談ですが、あまり外で飯を食わない私ですが、最近美味いと思うのは韓国のフライドチキンと台湾小皿。あとは時々食べるマレーシアカレーとかタイ料理などエスニック系もうまいと思います。日本の居酒屋はほとんど行かなくなりました。あと決して甘党ではないのですが、1年に一度、この時期になると月餅が店先に並びます。これは毎年一つは頂きますね。アヒルの卵の黄身が2つぐらい入っているのが良いのですが、最近は高くて饅頭一つ2000円近くするので今年は黄身なしでした。中秋の名月も物価に勝てず、ということでしょうか。

では今日はこのぐらいで

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また明日お会いしましょう。

インフルエンサーのマーケティング4

家で食事をするときによく見るのが食事系YouTube番組。自分も飯を食べているので画面の向こうでうまそうなものをうまそうに食べている動画は相性としては悪くないのです。それも自分が好きなジャンルの食事や縁がありそうなエリアの店紹介を選んでしまいます。札幌や福岡がグルメ天国だとはわかっていてもそこに行くことがすぐには現実的ではないのでやはり東京の店を見てしまいます。

その時点ですでに自分がマーケティングの罠に引っかかっているともいえるのです。「あぁ、うまそうだ」「ここに行ってみたい」「へぇ、この店は食べログとかでは出てこないわけね」と思うとまるで自分で見つけ出した店のような感じになるわけです。東京に行けば星の数ほどの飲食店があり、正直どこに行ったらよいかわからないことはよくあります。その際、チェーン系に行くのか、個人経営店に行くのか選択肢があるのですが、個人経営の店は知らないと入りにくいものです。では食べログでチェックして3.5点だから行くのか、というとそうならないのです。

皆さんも食べログはチェックされるのだろうと思いますが、私が日本に行く際の店舗探しとしてはほとんど使うことが無くなりました。理由は情報の精度が不明瞭な上に食べログ情報そのものにメリハリがなく店舗の羅列なので探すのが面倒なのです。ジャンルで検索して出てくる店舗候補は似たような店ばかりです。どう違うのかはいちいち見ていくしかないのです。私は点数はチラ見はしますが、結局、雰囲気やレビュー、価格、目的に応じているか、などそれぞれのファクターをかけていかねばならず、正直、見ていて途中で嫌になるのです。

とするとユーチューバーの店紹介のほうがよりピンポイントですが、実感がよくわかるし、その気にさせやすいともいえるのです。

インフルエンサーのマーケティングとはそういうことだと思うのです。同じユーチューバーでも機械的に紹介しているだけだなとか、ナレーションが下手だな、と思うのもあれば地上波の食レポ番組をはるかに上回る上手な内容もあるし、店側も宣伝になるからか、うまく結託して思わず行きたくなるようなところもあります。よって必然的に人気の飲食系動画を見てしまうという悪魔の手法にまんまと引っかかっているわけです。

世にいうインフルエンサーはインフルエンサー同士でつながるのでべき乗的影響力を発揮します。日本最大級のインフルエンサーならフォロワーは3000万人級ですから人口で4人に1人、コア年齢で見れば半分以上を占めるようなレベルになるのです。

私の友人であるインフルエンサー氏は更に著名なインフルエンサーと相当つながっているので「これ見てよ!」と私のLINEに時として一気に3つも4つも連荘で動画を送ってきます。その情報量たるやすごいものがあり、私にはとてもじゃないけれどそれらの情報を全部見る余裕もエネルギーもないですが、世の中のマーケティングはかつての手法から大きく変わってきたことは実感できます。

マーケティングとは非常に広い範囲のビジネス戦略と拡販手段です。その中で広告宣伝はマーケティング上、一つの分野に過ぎなかったのが、今では広範なマーケティングに変わってきているともいえるのです。例えば飲食ついでの話だと何をどう仕入れているのか、どう調理しているのか、仕込みはどうなのかをチラ見せするわけです。かつての飲食系マーケティングは完成された皿に盛られた食べ物をおいしそうな写真にしていかに客目線を引くかでした。今は店の経営そのものを相当ディスクローズしないと客が満足しない時代になったのです。それこそ、シェフ〇〇の横顔が必要になるのです。

ジャパネット タカタの販売方法は取り扱い商品をいかによく見せるか、そして見せ手である高田さん父子のインフルエンサーとしての力がその販売数だともいえるのです。その点で1990年から始めた高田明さんの先見の明ともいえるでしょう。私からすれば高田さんは商品を売っているというよりジャパネットタカタの信用力を売っているのだろうと考えています。その信用力の上に商品が乗っかっている、そんな感じです。

日本の方はご存じないかもしれないですが、吉田 潤喜氏がアメリカでBBQソースとして「ヨシダソース」を売り出したのは80年代だったかと思います。氏がバンクーバーに来た時に講演に行き、話を聞いてなるほどと思ったのは彼のソースが売れたきっかけの一つはコストコで試供品の紹介を自らやって開花したという点でした。それも侍だか奇抜な恰好でお客さんに面白いことを言いながら気を引いて一生懸命売った、それがヨシダソースの原点だと聞いた時、マーケティングの一環として「誰が作っているのかディスクローズしオーナーが直接訴えて売れた成功例」と位置付けています。

これらを考えるとモノを売るというスタンスはかつてのオーソドックスな手法からかなり戦略的変化が生じているといってもよいでしょう。SNS一つにしても様々なツールがある中でどれを選ぶのか、一つなのか、全部なのかということもあります。ですが、私はそれ以上に「来て下さったお客様に失望させないクオリティを提供できるのか」が最大のチャレンジだと思います。

1時間並んで入ったけどサービス最悪、見た目もイマイチ、味も普通というイメージを持たれたら一巻の終わりです。その客は二度と来ないし、SNSで低評価のコメントを書くのです。つまりプラスと思ってやった努力がマイナスになって跳ね返ってくるのです。

そういう意味ではインフルエンサーを使ってマーケティングをするだけでもダメなのだと思います。ビジネスの奥深さとはこの辺りにあるのでしょう。

では今日はこのぐらいで

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日本がリードできるソサイエティ5.04

内閣府の総合科学技術 イノベーション会議というのが1995年に発足して5年ごとに内容を更新しているのですが、2016年−2020年の期のプランとして出てきたのがソサイエティ5.0という発想です。純粋に日本発の発想でこのネーミングも2016年に紹介されています。

ソサイエティ1.0が狩猟、2.0が農耕、3.0が工業、4.0が情報社会で5.0がサイバーの社会です。内閣府の説明は「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」とあります。わかるようでわからない微妙な定義です。

しかし、その提言から6年たった今、メタバースという発想がアメリカを中心に展開しそうな勢いです。フェイスブックが社名を「メタ」にしたのも昨年のことでしたが、今一つ、現実のイメージが湧いてこないのかと思います。

考え方はいろいろあるのだと思いますが、私なりに簡素化した発想は現実社会と別に仮想社会のレイヤーが同時に存在する世界ではないかと思うのです。レイヤー、つまり、我々が日々生活するのと同じ時間軸の中に誰もがアクセスできるもう一つの別次元の社会がそこにあり、我々はいつでも仮想と現実の社会を行き来します。どこからでもアクセスでき、そこで仮想生活もできるし、買い物やサービス、仕事すらできる社会です。多分時間を戻すことも可能になるはずです。

自分が参加するためにはアバターという自分の分身がそこに加わることで社会への参加が可能になります。仮想通貨を使い、ショッピングモールを歩くこともできます。ではその店で買い物をするとどうなるか、と言えば現実社会でそれを受け取ることができます。理由は仮想店舗に出店している会社はそもそも現実社会でそれを販売しているからです。それを仮想社会でより上手にプレゼンをし、詳細が分かり、顧客は店員の説明を聞くことができます。この初期段階の実験は既に行われています。

このところ、「売らない店」があちらこちらに生まれています。百貨店から一般小売店まで実験店が増えています。ただ、この方式は私が描く社会と真逆を行っています。つまり、現実社会において「売らない店」に出向き商品をチェックし、ウェブで注文するという仕組みです。もっとわかりやすく言うと例えばニトリに行ってベッドや食卓テーブル、ソファを買うとします。実際には展示されている場所に行って触って座って相談して決めます。実物はまさか、お持ち帰りできないので後で配達されてきます。これをもっと一般的な商品にまで広げるのです。

しかし、私はこれでは意味がないと思っています。いま求められていることは人が遠くまで行くこと、時間を割くこと、リアルの店員とやり取りをすることを避けたいのです。ですが、このビジネスモデルはそれをさせるのです。事実、このスタイルの老舗だったb8taはアメリカでは今年春、店をたたんでいます。理由はパンデミックで人が来なかったわけです。つまり、人を来させるビジネスモデルはソサイエティ5.0では作ってはいけないのです。(日本のb8taは独力で頑張っていることは知っています。)

百貨店が嫌がられる理由の一つに店員が寄ってくることがあります。一方、カナダのハイブランド店は店員が寄ってこない問題があります。これは店員が客を選び、金を使ってくれそうな客に集中接客するのです。理由は店員のコミッションにあります。感覚としては売り子の給与が年間500万円程度に対してコミッション額は7-800万円、稼ぐ人なら数千万円レベルにもなります。つまり、客は必要な時に接客を受けられず、いらない時に周りをうろつかれるのです。この話、どこかで聞いたような、そうそう晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げる銀行と同じなのです。

これを解消するには仮想社会で自分のアバターがアバターの店員とデジタルなやり取りをすることで解消されやすくなるでしょう。例えば今、多くの役所や企業などで問い合わせを電話ではなく、ウェブ上でお問い合わせ係が画面の隅に出てきて、そこでテキストでやり取りすることが増えています。これ、私も時々使うのですが、電話を20分も待たされることもなく、さっさと用件が済むのでとても便利ですね。これを仮想社会のレイヤーで行えばよいわけです。

また、ひどいクレーマー対応もアバター上でAIがこれらの対応をアシストすれば職員のフラストレーションも緩和されるかもしれません。

会社の会議でも発言する人としない人がいます。仮想会議場ならもっとフラットになるでしょう。なぜなら威圧感がないからです。社長も部長も自分と同じようなアバターなのです。これなら発言しやすい気がします。

病院診察でもコンサルでも高齢者の介護でもこれで代行できる部分はあります。そしてこの仮想社会のレイヤーを通じた経済効果は想像を絶するほど巨額になるポテンシャルがあります。唯一の弊害は各関連省庁の保守的で踏み込めない姿勢がこの展開を遅くするでしょう。

今、旅行会社や航空会社が仮想旅行を提供し始めています。仮想空間で旅行に行った気分になるのです。そうするとリアルでも行ってみたいと思うようになります。(もちろん、「やっぱ、やめておこう」もありですが。)しかし、お試しで例えばリアル旅行が50万円かかるのに仮想旅行なら1万円で楽しめれば少なくとも経験値としては上がるでしょう。自分のアバターがレストランに入って注文してうまそうなものが出てきたらリアルのあなたは「たべたーい」と思うでしょう。これを体験しに行くなり、デリバリーを頼めばよいのです。これが仮想とリアルの融合でしょう。

これは人々が行ったことがない社会や世界、店や劇場に躊躇なく入れるわけで「気の小さい人のバリア」を取り去ります。また、何にでも興味を持つ人が更に広範囲にどこにでも行けるようになるのです。これが世界規模で育てば、例えば今日はパリのあの店でフランス料理を試すことも可能です。ベテランの店員が恭しくあなたを迎え入れ、フランス語で注文を取りに来るでしょう。ソムリエがワインを伺いに来ます。その時、同時通訳で日本語をしゃべればサーバーもソムリエも「Oui」と言ってくれます。

このソサイエティ5.0は360度全方向での同時展開が可能です。その場合、日本人の特性である皆で一気に走る場合には強力に開発を進めることができると考えます。IT企業から一般小売飲食店、サービス業や病院まで展開できます。

これが私の期待する日本の新しいビジネスシーンです。なぜ、アメリカやカナダでこれが展開しにくいか、といえば人材がいないこと、その人件費が高すぎること、人種が多すぎて異論が噴出しやすいため開発の水平展開がしにくいのです。このソサイエティ5.0は日本こそが国家規模で進められる大きなポテンシャルがあるビジネスだと思います。

そして私が描くのはリアル社会の激変です。この変化で日本そのものを大きく動かすことが可能になります。夢物語のようですが、我々は確実にその世界に踏み込もうとしています。

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どうやって売り上げを伸ばすか?4

売り上げを伸ばしたい、これは経営者にとって誰もが思う共通のテーマです。この数年、私の周りではSNSなどを使ったマーケティング手法がまるで「神の手」のように言われていることもあります。事実、コロナ禍では飲食店がDine InからTake Outに変わったこともあり、SNSを駆使し、弁当や持ち帰りメニューを発信し、生き残りを模索しました。一部の店は確かに成功でしたが個人的感覚としてはそれは2割ぐらいで残り8割はどうやっても伸びなかったという気がします。

弁当やテイクアウトが伸びなかったところは単に店のメニューを持ち帰りに切り替えただけのところや日本料理店なら一般的な弁当屋とほぼ同じなのに価格が円建てで1000円以上したところが残念だったと思います。これじゃ、競争力がないので売れないとわかってしまうのです。

一方、店内飲食は極端な話、キッチン一人、ホール一人といった具合に最小限の人件費でやろうとするのでサービスが行き届かなくなり、突如満席になるとフードは出ない、サービスは来ないという総崩れが起こります。(こちらの注文や会計は日本の定食屋のように瞬時では終わらないのです。)飲食の場合、顧客が一度でも嫌な思いをすると1年は返ってこない世界ですからマーケティングのつもりでいろいろ手を出したのが後で失敗につながることがあるのです。

日経に興味深い記事があります。ユニクロのマーケティングを支えてきたジョン ジェイ氏のインタビュー記事です。ジェイ氏はユニクロがまだ山口の田舎の店だったころからのお付き合いである意味、ファーストリテイリングという会社を知り尽くしている人です。彼の発言で着目しているのは以下の部分です。

「柳井さんはTシャツ姿でカフェテリアで昼食をとった後、社員と食器を洗っていました。この光景を見て民主的な企業文化を感じました。ここから着想を得たのがカジュアル衣料の民主化。現在も続く理念である『メード・フォー・オール』です」。

柳井さんが皿を洗っていたとは驚きですが、このフラットさにジェイ氏はまず目を付け、誰にでも着られるモノを提供するというアイディアから1900円という値付けのフリースが登場します。これにはフリースという素材と1900円という驚愕の価格付けで誰にでも着られるモノにするという強力なメッセージが内包されていたということです。

また、2015年にジェイ氏がマーケティングのトップに就いた際、思ったこととして「世界中に店舗がありましたが、真のグローバルブランドとは言えませんでした。現在もそうです。世界展開だけでは、グローバルブランドとは言えないのです。グローバルブランドには、中核となるものが必要です」と。

中核になるもの、これがキーワードです。自分たちの店に於いて何を売っているのか、何が最大の特徴なのか、ここが肝なのです。私はユニクロ=ベーシック=クリーン=誰でも同じというジェイ氏が初めに思い描いた民主化がそこにあり、これを世界展開しようとしているように見えるのです。

冒頭の飲食の例でもその店の「売り」「おすすめ」があるはずです。それを持ち帰りのような場面になった場合、どう生かすか、その深堀ができたところとそうではないところに明白な差が生まれたと思います。

私のように不動産を生業にしている場合はどうするのか、と言えばテナントさんとのできる限りのコミュニケーションと困っていることに対する大家としての最大限の対応に尽きます。多くの不動産事業者は日々の管理を運営会社に委託しているケースが多く、オーナーとテナントの直接的なやり取りがなされることはまずありません。私はそれを逆手にとって顧客にどんどん飛び込んでいったことは今でも正解だと思っています。

売り上げを伸ばす方法はいくらでもあるはずです。ただ、最近はSNSやインターネットでお仕着せのハウツーものが多くなり、それが本質をついておらず、表面的な繕いだけになっていることに多くの経営者が気が付いていないのです。どうやって売り上げを伸ばすか、それは経営者自身しかわからない差別化やこだわりを形を変えて顧客に伝えることが最重要なステップではないかと信じています。

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飲食業の苦悩4

コロナで一番影響を受ける業種は何処か、と言われれば案外、飲食業かもしれません。旅行業界や航空業界ももちろん厳しいのですが、会社の規模が違うので銀行からの融資を受ける等、対策を施すことが可能です。一方の飲食業界はチェーン店から個人営業まで様々で資本も必ずしも厚いわけではなく、銀行からの借り入れもおいそれとできるものではありません。

コロナで店舗営業ができないときはコストは極限に絞り込めるのですが、緩和策が出て店が開けられるとなれば仕入れをし、仕込みをし、スタッフを呼び戻し…という営業コストが出る状態になります。一方、見合いの客が入るのか、ここに落とし穴があります。つまり、飲食業の倒産や本格的な自主廃業はこれからではないか、という気がするのです。

ここバンクーバーの場合、コロナ対策のため、保健所の指導により店舗の座席数に対して概ね50%程度の収容しか許されません。いわゆる隣席との距離や対策などを施すためです。店員はおそろいのマスクをして接客してくれるわけですが、何か違和感があるのです。病院の入院患者が食事の配膳をしてもらうようなイメージでしょうか?笑顔がみえないので余計そういう気にさせるのでしょう。

飲食店に何をしに行くのでしょうか?二通りあります。腹を満たす、もう一つはコミュニケーションをするための媒介としての食事であります。接待を含む媒介の飲食は日本の歴史でもあったわけです。法事や見合いといった慶弔ごとから〇〇会の集まりと称した団体や同好会などの定期的な会合であったり、はたまた会社の同僚との飲みや主婦のランチなど枚挙にいとまがないのです。これらは基本的には人と人の関係の「つなぎ」であり、「うゎー、おいしそう」と共感することで人が結び付きやすい状況を作っていたのです。

仮にこれがZoom飲み会に取って代わったらどうなるのでしょうか?これはコロナが変える人々の行動規範でももっとも大きな影響が出るところでしょう。私は今週の金曜日に高校のクラスメートたちとZoom飲み会があります。かつては毎年きちんと集まりがあったのですが、参加者は5-6人に限られていました。今回はZoomなので出入り自由ですし、どこか集合場所に行く必要もないし、抜けにくい雰囲気もありません。顔を出すという人も多そうでかなり盛況になるかもしれません。

外食という音の響きはちょっと背伸びするという感じだったかもしれません。日本では奥様が料理をするという慣行が長く続きました。そしてその唯一のお休みが正月であり、お節料理が保存食であり、1週間それを食べ続けるのは奥様が料理をしなくてもよい「お暇を頂く」という発想が原点です。

現代も同様です。月に一度、あるいは週に一度は外食をしたいというのは80年代頃から始まった「ニューファミリー」のささやかな夢でありました。もちろん、主導するのは奥様でその心にはたまにはおいしいものを食べたい、私も楽をしたい、という背景がありました。ファミレスのはしりと言ってもよいでしょう。

しかし、今や、男がキッチンに立つ時代。週末はパパの料理なんていう変貌ぶりですし、食品メーカーの開発で家でも十分なクオリティの料理がカンタンにできる、更にはクックパッドに行けば無数のレシピが提示されているのです。

その間、日本人の口も肥えてきました。家族でどこかに食べに行こうとなるとファミレスでは誰も喜ばないのです。居酒屋はサラリーマンのオヤジたちの集まりで若い人が積極的に行きたくなる雰囲気はありません。つまり、飲食も時代の変化の真っ只中にいるのかもしれません。

中間的な店、つまり、安くもなく、高くもなく、味も中くらいというところが一番苦しくなるかもしれません。私は繁華街の飲食系店舗で厳しい淘汰が起きるような気がします。

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成功するビジネスと苦労するビジネス4

ごく最近、知的財産権についての書き物に触れる機会がありました。それを読んでいてふと思ったことは「知的独創性は財産になる」であります。

「人間の知的活動によって生み出されたアイデアや創作物などには、 財産的な価値を持つものがあります。 そうしたものを総称して『知的財産』と呼びます」(日本弁理士会ウェブより)とあります。その中でも法律に基づいて保護されるものが弁理士の業務になるわけですが、ビジネス一般に法律で守られるかどうかは別として知的財産となるような仕事をしなくては生きていけないともいえます。

中華料理の世界に料理のマニュアルはありません。料理人が「知的財産」だと考えているからです。かつて、ある中華の料理人と話したとき、「なんで俺が苦労して見つけ出したこのレシピを店のために紙に書いて残さねばならないのだ。これをずっと持ち続ければ俺はどの店でも仕事ができる」と言い放ったのが非常に印象的でした。

どんな世界にもまねできない深い技術やノウハウ、経験などが詰まっている商品やサービスは存在します。ところがコンピューターの時代になった時、我々はマニュアル文化をより強力に推進してしまいました。いわゆる「コピー&ペースト」文化であります。コンピューターでコピペするあれです。どこかのウェブからひょいとコピーすればどんなものでも一瞬のうちに自分のものにすることができます。どこかのビジネスをひょいと真似ればいいともいえます。パンケーキブームなどはその典型でした。

今、多くのチェーン店で展開しているのはこのコピー&ペースト方式であります。元祖の一つが日本のマクドナルドだったと記憶しています。完全なマニュアル化でどこの店に行っても金太郎飴状態でした。ところがマクドナルドはある意味、社内で知的財産を独自に生み出し圧倒的シェアを確保した点が現在の強みだと思います。ところが多くのその他のチェーン(飲食に限りません。アパレルでもファッションでも日用品でも同じです)は同様の展開を図っているものの非常に限られた知的財産をてこに無理に拡大戦略を図ったように見えるのです。

例えば「いきなり!ステーキ」のペッパーフードサービスの有価証報告書に「継続企業の前提に関する注記」がついてしまいました。何を意味するかといえば「相当頑張らないと事業継続できないかもしれませんよ」という投資家や取引先に対する警告であります。なぜ、あの事業が苦境に陥っているか、皆さんの方がよくご存じだと思いますが、私から見れば一瞬のうちにレッドオーシャン化する非常に脇の甘いビジネス形態であったのに無理な多店舗展開を図ったということかと思います。

私は最近のIT/テクノロジーブームもレッドオーシャン化して相当の淘汰が進むと思っています。例えばAIは1年前まではもてはやされました。今、この業界は詰まっています。理由は数あるAI専門会社の中で技術的差別化ができなくなっているのです。日本で唯一といわれるユニコーンでAIの専門会社、プリファードネットワークスも差別化のため、ソフトからハードにシフトしているとされます。

便利なアプリを作るというビジネスを目指す起業家も多いのですが、アプリそのものが収益を生まず、かつ、次々とその上を行くアプリが出てくるとすればアプリの事業者は常に全速力で走り続けなくてはいけません。これは継続性という意味で極めてリスクが高いのです。

成功するビジネスは私の頭では2つしかありません。一つは地道に自分のコントロールできる範囲で着実に歩を進めるやり方、もう一つは圧倒的マーケットシェアを確保し、追随を許さない方法であります。街の偏屈寿司屋のオヤジになるか、覇権するのか、であります。

私は一時圧倒的マーケットシェア確保への挑戦をしたことがあります。当地のある巨大マリーナの買収を目論みたのです。それが成功すれば私はBC州で有数のマリーナ所有者になれるところでした。が、買収交渉は最後の最後でどんでん返しで流れてしまいました。それ以外にもいくつかのマリーナ買収を試みましたがこの業界は鉄壁で大きくするのは困難と結論付けました。それからは自社のマリーナの経営に磨きをかけることに注力し、今に至ります。多分、今後も安定的に推移するでしょう。

経営指南書にはテクノロジーをとりこむことを重視していますが、経営の本質からはテクノロジーは補助にしかならないのです。経営とは知的財産をどれだけ生み出せるかにかかります。そういう意味でダイソンやアイリスオーヤマのような創造力が高い会社はとても参考になります。かれらは決してテクノロジーオリエンテットではなく、自社の発明能力とテクノロジーがうまく共存しているのだということでしょう。

知的財産、深く考えさせられます。

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なぜ倒産する会社が増えるのか?4

中小企業の倒産が増えています。2月の倒産件数は651件で6カ月連続増となっていますが、3月以降この件数は更に伸び続けるものと予想しています。倒産の理由も人手不足が招いた倒産から売り上げの激減に伴うキャッシュクランチ型に変っていくものと思われ、特に地方の宿泊施設は自転車操業の足が止まることによる閉鎖が相次ぐ可能性があります。

急激な景気悪化に対して企業は赤字対策ではなく、キャッシュフロー対策を取ります。先日もご紹介しましたが、リーマンショックの時、車を1台買うと2台目は無料となった話がありました。これなども在庫の価値を半分にしてでもキャッシュをねん出しないと給与や賃料、仕入れコストなどを払えないという企業活動の根本が停止してしまうのを防ぐ方策なのです。

旅館業の場合、投資過多というケースよりも、もともとが日々の運転資金のやりくり上の問題であることが多いとみています。つまり、客が来るときは大量に食材などを仕入れ、人手も確保するけれど、今回のようにぱたっと止まった際、食材は注文しないにしても人手の調整がすぐにできなかったり、固定費がかかり過ぎていていたりするのだろうと思います。また、自動車の在庫販売のように資産の切り売りができない弱点もあります。

それ故、このところの倒産は負債総額が非常に小さくなっていて1億円未満が全体の4分の3を占める状態になっています。

日本の場合、大半が中小企業でありますが、中小企業の弱点は経営者の能力が必ずしも十分ではなく、今回のように社会が激変した場合にそれに太刀打ちできなくなりやすいのです。つまり、普段はどうにか資金は回っているけれど何かあった際の対応や資金的体力が大幅に欠如しているのです。また、経営者がある程度の年齢になり、後継ぎ問題も抱えているような場合、引き継ぐ前にダメになるということもあるでしょう。

私は今回の新型肺炎問題で今後、倒産が激増するとみています。特に旅館業、飲食業、部品製造業など経営体力が劣る会社に厳しい試練が待ち構えているとみています。

倒産しないようにするにはどう体力増強を図るかですが、当たり前かもしれませんが、ある程度のキャッシュは手元に置いておくべきでしょう。私は3カ月分の運転資金を一つの目安に考えています。つまり、今日から3か月間、売り上げがゼロでも耐えられる程度のキャッシュは確保するのです。こんなこと言うと反発があるかもしれません。ただでさえ薄利多売なのにそんな夢みたいなこと、それだけあれば俺の給与を払ってもらう…などなど言い分はあるでしょう。しかし、それが健全経営なのです。

先日、日経に「がっかりだよ……キャッシュレス決済」という記事があり、その中身は少額決済では使えない、ランチタイムは使えないという不満でした。一方、店側の言い分は3-4%にもなるサービス手数料がばかばかしくて対応できないというものであります。つまり、最近の便利なサービスは導入せざるを得ないけれどコストが非常にかかる体質であり、いつの間にずいぶん経費を払っていたということなのです。

3-4%だろう、というのか、1000円で3-40円もかかるというコスト意識を持つのかで全く違ってきます。私は当地でクレジットカード会社と0.1%単位の値引き交渉をして少しでも経費を下げようとしています。

ある意味、日本にはゾンビ的な中小企業は多いと思います。時折、日本の地方に泊まりに行くのですが、よくこんな宿泊施設、経営できるな」というところはびっくりするぐらい多いのです。が、訪日外国人で支えらえて延命したといえるのでしょう。今年の訪日外国人は4000万人の目標に対して半分に届かないかもしれないという弱気の見通しも出てきています。

中小企業には大いなる試練が続きそうです。

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