字の如く「採暖」は暖かさを採るための「点」ポイントであるのに対して、暖房は、空間の寒さを取り除く設えです。寒いという刺激を柔らかく取ることができれば、すなわち無刺激になります。そのためには室温で示される空気の温度はもとより、その空気が抱えている湿度、それから壁・床・天井の面自体の温度など、あらゆる要因がその環境に影響します。暖房はそういうものをコントロールする手立てなのです。そういう意味では、これまでのこの国の暖房はほとんどの場合、囲炉裏手あぶりの類からストーブまで、ほとんどが暖房とくくられながら「採暖」だったということです。また、暖房をするためには暖房が「効く」器の性能が必須となりますから、採暖を取らざるを得なかったという部分も多々あると思います。本来の快適である無刺激な暖房を実現しようとすれば、まずは温度が無秩序に乱れ漏れる器ではなく、然るべき性能の器にしなければならないということです。
この国は、今、ようやく住まいの高性能化に気がついたくらいの段階だと思います。その上で、より少ないエネルギーで快適に、つまり無刺激に暮らすためには、まだまだ進化が必要です。床暖は、ある意味「面」ではありますが、そこに暖かいという温度を感じているならやはり採暖の域を超えていない。もっと低音で、しばらく触っても感じくらいなら暖房として成立していますが、そうなるためにはまだまだこの国の住まいは性能不足なのです。展示場の床暖房然り、まだ面での採暖の域を超えません。
よく不思議なことを言うなという顔をされますが、私はやはり、冬、寒くない、夏、暑くない住まいを目標にしたいと思います。(おわり)
JUGEMテーマ:建築
◆↓読まれたらココをポチッとお願いします!