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みつける話。

うちに来た書類を取りに、ムスコが週末帰ってきた。

大学を出たあと、まだ転出の届をしていないせいか、ときどき郵便物が届くので、大事そうなものが来たときは連絡してやるのだ。

夜遅く来て、1泊してお昼前に起きると、長いお風呂に入って帰る、素泊まりの客である。

じゃ~またね 

玄関で靴を履く背中に言ったら、急に胸やらお尻やら、パタパタ叩いて

スマホ忘れた…

せっかく履いた靴を脱ぎ捨て、部屋に戻る。

フトンを剥いで寝床の中を探したり、デスクの上をかき回したり

無い…

困っているようなので、なんの気なしに

脱衣所じゃないの?お風呂入ったとき…

言ってやったら、ドタドタ駆けていき

あった…

やれやれ、バスの時間を気にしながら出て行った。

ムスコが家の中で見失ったものの在処は、私が気付くことのほうが多い。

キッチンじゃないの?

本棚の前じゃないの?


そう言われて、首をひねりながらムスコが見に行くと、探し物はだいたいそこにある。

何日も探していたジグソーパズルのピースを、ソファの隙間から発見したのも私だ。

べつに後をついて回っているわけではない。あそこでゴソゴソしてたとか、ここに立ってコーヒー飲んでたとか、立ち回り先を考えればわかる。

アイツまだ 何か忘れてる気がするな

洗面所を見に行ったら、アフターシェーブらしき小瓶があったので、棚にしまった。

じぐそーぱずるのぴーす



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2024/09/08 11:30

ものほす話。

朝からバカみたいな晴れ

家で扇風機を回してクタクタしていたいのはやまやまなれども、野暮用で実家に行く。

おはよ~!

声を励まし、せいぜい元気に勝手口を入ると、ちょうど洗濯カゴをかかえた母とぶつかった。

アラ おはよう

あ、センタク?アタシ干そうか

いいよいいよ 自分でやるよ

メチャクチャ暑いよ!汗かきついでにやっちゃうから

そお?でも…

なんとなく不安そうなのは、おばーちゃんには物干しに独特の流儀がある(→しらない話。)からだ。

洗濯物の干し方なんて気にしたこともない私は、母のマイルールを知って仰天したが

ダイジョブだいじょぶ! おかーさんのやり方でやるから!

半ば強引に、洗濯物の入ったカゴを取り上げた。

どうにか8月を乗り越えた老母が、ここにきて熱中症にでもなったらコトである。

はー ヤレヤレ…

コメカミをつたう汗を袖で拭いながら茶の間に入ると

お疲れ様…

朝刊の上で、冷たい麦茶のコップが結露している。

ゴクリと飲んでテレビの前に落ち着いたら、頼まれた書類仕事にかかる。

しばし集中したあと、2口めの麦茶に手を伸ばして、ふと気づくと、テレビを見ていたはずのおばーちゃんがいない。

アレ?おかーさん?

キョロキョロしていたら、ガチャッと勝手口が開いて

ふー…

いつの間に出たのか、外から戻ってきた。

なに?どうしたの?

イヤ ちょっとね…

もごもご言葉を濁していたが、用事を済ませて帰るとき、軒下を覗くと、なんとなーく、ビミョーに景色が違う。

ははーん 直しに来たな…

おかしくてプププと笑いながら、バス停に向かった。

ぴんちはんがー



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ごかぞく | コメント(10) | トラックバック(0) | 2024/09/07 11:30

せっとく話。

朝から大粒の雨。

今日は燃えるゴミの日だけど、以前ちょっと危ないな、と感じたのをきっかけに、カサが必要なほどの雨の日には、ゴミ出しはやめている。

ひとり分のゴミの量なんて知れてるし、収集日は今日で終わりじゃない。

いいトシのババアが両手にカサとゴミ袋を持ち、スッ転んだ場合の損失を考えれば、あえて危険を冒す意味はないと思う。

こういう決め事のコツは、例外を設けないことだ。

雨の日はゴミ出さない

いったん決めたら、今日はゴミが多いなとか、小雨じゃないかとか、よけいな斟酌をしない方が、人生が簡単になる。

雨の日はゴミ出さない

それだけの話である。

…だからさ~ おかーさんもさ~

なにヨ!

娘の私が何か提案すると、警戒してケンカ腰になるのは、おばーちゃんの癖だ。

だからー 雨の日はゴミ捨て休みなよ~ 危ないよ

実家の勝手口からは、通りに出るのに10段ほどの階段を下りねばならず、私は老母の足元が心配でならないのだが

イヤよ!

返答はにべもない。

大した理由ではなくて、要はイヤだからイヤなんだ、ということなので、逆にたちが悪い。

どんどん機嫌が悪くなるおばーちゃんの眉間のシワにめげず、噛んで含めるように説得を重ね

わかった…大雨の時は休む…

いちおう言質はとったものの、今日のような雨の朝には電話を入れて

ゴミ出し休んでよ!危ないから!

念を押すという仕事が増えた。

♪ぷるるる… ぷるるる… ぷるるる…

そんなわけで今朝も電話をしたのだが、出ない。10回鳴らして切ろうとしたとき

ガチャン!…はア…はア…もしもし?

息を切らして電話口に出たと思うと

アンタうるさいから…先に出してきちゃった!

せっかく簡単になった私の人生を、複雑にする存在、それがおばーちゃんである。

ならしのごみじてん
(雨の日は出せませんと書いてほしい)



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ごかぞく | コメント(14) | トラックバック(0) | 2024/08/29 11:30

ちょうちん話。

上の子が生まれたのは、雑誌の名前にちなんだたまひよ族なんて言葉が流行語になった時期。

プライベートな事柄だった妊娠や育児に、社会的な注目が集まり、お金になる分野として、広く各方面が参入し始めた。

便利な子供用品がどんどんできて、ベビーカーの機能は格段に向上し、義務化を前に、チャイルドシートの開発が進んだ。

誕生祝や内祝に、子供の名入りグッズを贈るのが一般的になったのもこのころだったと思う。

ムスメが生まれて、幼児用の食器やスプーン、タオルなど、職場や友人からいただいたお祝いに、きれいに名前が刻まれているので

わ~ カワイイ!

ムスメという人が存在する証に思えて、嬉しかった。

母子手帳、予防接種の予診票、いろんなものにムスメの名前を書き込みながら

あ ちょうちん…

不意に思いついたのが地蔵盆の提灯だ。

じぞうぼんのちょうちん

地蔵盆は関西の習慣で、地蔵菩薩のご縁日。

お地蔵様は子供の守りだから、各家庭で子供が生まれると、名入りで提灯をこしらえ、地蔵盆にはそれを集めてお堂に飾る。

私が育った田舎では、駄菓子がいただける、楽しみなお祭りだった。

しかし、ムスメを産んだ遠い街に、地蔵盆はない。

一瞬でもそんなことを思いついた自分がおかしくて、ひとり笑いながら、だんだん寂しくなったのを覚えている。

思えばあの頃、私は人生でいちばん孤独だったのだ。

今日8月24日は地蔵盆。

以前、偶然通りかかったあの町(→おじぞう話。)では、まだ地蔵盆をやっているかしら。

見に行ってみようか、なんて思ったのは、かすかな秋の気配のせいかもしれない。



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ごかぞく | コメント(10) | トラックバック(0) | 2024/08/24 11:30

ゆかたの話。

老母は、自分では捨てられないものを私に寄越す。

買い過ぎた食品だったり、衝動買いしたものの似合わなかった衣類であったりするが

ドコソコデパートで○○円だったのヨ!

すごく美味しいから取り寄せたの!


さも良いものっぽく押し付けるので、こちらも有難く受け取る。

もらってしまえばどうしたと詮索されることもないから、要らなければ処分するし、使えるものは使う。

生前整理の手伝いと思えば、腹も立たない。

さ~て 今回のもらい物は何かしら?

お盆の法事のあと、渡された紙袋から出てきたのは、女物の浴衣が3枚

ま~た要らんものを…

そんな気持が顔に出たのだろう。突き返されたら困ると思ったのか、おばーちゃんがいそいで

涼しそうでいいガラでしょ?ネマキにでも…

一所懸命しゃべりだすのを、ハイハイと聞き流して、素直にもらってきた。

うちに帰って袋から出し、さあどうするか。

母はセンスがいいので、たしかにいい柄だけど、羽織ってみたらどれも丈が短い。

ネマキにしろったって、寝相の悪い私のこと、朝起きたら右と左に泣き別れ、おヘソの上にはヒモだけ、ということになりそうだ。

いっそゾーキンにするかア…

しかし、なまじ柄がいいので、それもためらわれる。床に広げた浴衣を眺めていたら

ウーン ネマキ… あ…

ふと思いついた。

衿と袖を外して前を縫えば、夏らしい簡単服になる。昔で言うところのアッパッパである。

かぶって着るだけで涼しいし、ネマキにしてもお腹は出ない。

…と思うんだけど…

いちおう元の持ち主に電話で報告したら

あら!いーじゃない!まだあるよ浴衣

ウキウキで不吉なことを言うので、慌てて断った。

そふぃーのせんたく
(メリルストリープがドレッシングガウンの代わりに着物を着てたのはこの映画だったか)



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ごかぞく | コメント(12) | トラックバック(0) | 2024/08/18 11:30
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