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はいはい話。

年に数回、講義みたいなことをする機会がある。

技術でも能力でもなく、ズーズーしさだけで白羽の矢が立った講師役(→せんせい話。)なので、人前に立つのもいささか面映ゆい。

そんなインチキ先生でも、受講者には、先生、先生と呼ばれる。

中には私より年上の方もいらっしゃって、うかがってみるとビックリするようなご経歴であるが

僕ら大学紛争の世代でしょ 卒業したけど講義はろくに… 

社会に出てからも、ずっとそれがコンプレックスで、リタイア後、興味を持った分野を、積極的に勉強しているのだそうだ。

そんな志の高い方に、軽量級の講師で申し訳ないが、やると決まった講義はやらねばならぬ。

おおよその流れを座講で示したら、実習の時間。通路を回って作業ぶりを拝見し、声をかける。

…そこ、もう少しよく見て…

そうです うまくできてますよ大丈夫…


われながら先生っぽいじゃないかと思ったりしつつ、さきほどの、リタイア氏の手元を見ると

あ、違う違う そこ逆です!

たとえ年上でも、間違いは正さねばならぬ。

彼の表情が、えっ、と逡巡したあと、軽くムッとしたのを、しかし私は見逃さなかった。

あーハイハイ…

返事がハイ、ではなく、ハイハイ、とうるさそうに2回言ったのが、何よりの証拠である。

ハイは1回!

相手が子供なら叱るとこだな、と思ったら、フフフとマスクの中に笑い声がもれた。

あーはいはいのすたんぷ



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ごきんじょ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2022/03/31 11:30

しもとり話。

いつもお邪魔するブログの、みのじさんのお宅では、冷蔵庫が不調らしい(→空を見る余裕)。

のついた冷蔵庫の写真を見て、 20年以上前の、英国の家を思い出した。

家主が彼女と同棲するというので、使わない家財を家ごと貸すことにした、という物件だ。

テーブルやソファなど、大型の家具のみならず、電化製品や、ナイフフォークまで備付である。

どれも中古で、アリテーに言ってボロかったが、学生結婚に毛が生えた程度のビンボー所帯には、とてもありがたかった。

とはいえ中古だから、故障も発生する。

洗濯機が回らないので電話したら、工具を持った家主ご本人が登場し、立派に直していった。

修理を頼んでも、なかなか業者が来ないというから、DIYが盛んなのもうなずける。

古い家での新しい生活にも少し慣れた頃、今度は冷蔵庫の具合が悪くなった。

霜がびっしりついて、開け閉めができないのだ。

白魔と呼ぶにふさわしい、それは、やがて氷山みたいな立派なカタマリに成長した。

その当時でも、日本では、冷蔵庫に霜が付くということはなかった。

50代の私の子供のころ、母が実家の冷蔵庫の霜取りをしていた覚えはあるけれど、その後早い時点で、自動霜取りの機能が普及したはずだ。

あまりにもあんまりな状況に驚くとともに、なんだか悲しくなった。

ニコニコしてフレンドリーな家主だが、外国人とみて不良品を置いていると思ったのである。

ちょうど、続けて人種差別的な経験をしていた。

ベビーカーを押して歩いていたら、すれ違いざまに中国人!中国人!と言われたり、カウンターで応対してもらえず、長時間放置されたり。

在外生活は楽しいことばかりではなかった。

それでも、ママ友ができ、なじみのお店ができ、ご近所の人とも話すようになって、冷蔵庫の悩みを打ち明けると、

うちも霜だらけだよ!

うちもうちも!普通そうじゃない?


ホッとするとともに改めてビックリした。統計を取ったわけではないが、現代の日本で、霜のつく冷蔵庫を、そのまま使う人は少ないに違いない。

家電製品にもお国柄がある、と知ったことであった。

What-does-frost-free-mean.jpg



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むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2022/03/30 11:30

すみれの話。

コンクリートの継ぎ目にスミレの花が咲きだした。

ここは毎年見かけるところで、5メートルほどの間に点々といくつものスミレの株がある。

こんくりすみれ

誰が植えたのでもなく、雑草の類だろうが、ついしゃがんでみたくなるくらいかわいらしい。

実は私は数年前から地味な努力をしている。

花が枯れてタネのできる頃を見計らって出かけ、はじけそうになった小さな小さなタネを収穫。

こぼさないよう注意して持ち帰り、うちの周りに撒くのだ。

こんな可愛い花が、何の世話をすることもなく、毎年見られるようになったらステキだなと考えてのことである。

しかし、今のところ、努力は実る気配はない。

数年間で数百つぶの種をまき散らしたにもかかわらず、可憐なスミレは影もないのだ。

いくら私が園芸音痴だといっても、歩留まりが悪すぎるのではないか。

もう止そうかな、と思いながら、今日も歩いていたら、小さな紫のかたまりが目にとまった。

スミレだ。

この場所は、例のスミレの群落からはかなり離れたところで、我が家との中間地点にあたる。

以前はここら辺りにはなかったはずだ。

もしかしたら、せっせとタネを運んでいた私が、途中でこぼしたタネから生えたのかもしれない。

撒いたところには一向に生えずに、こんなところに勝手に生えちゃって、と、一瞬ムッとしたが、ここが新しい群落になるんなら、それはそれでいいかな、と思いなおした。

なにしろ、うちからの距離は半分になるわけだし。



本日早朝より他出のため、2015年3月29日の記事を再掲載します。7年経ちますが、あいかわらず、近所にスミレの気配はありません。



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ごきんじょ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2022/03/29 11:30

きんちゃん話。

昨日の雨は上がったけれど、朝から曇り空。

3度目のワクチン接種以来、体調はイマイチだし、フトコロは寂しく、仕事は忙しい。

しかしながら、今朝の私の気分は上々である。

なぜならキンちゃんに会えたからだ。

その人は、40代くらいの、ごく普通の男性。

背広に黒いリュックをしょったサラリーマン風の彼を、キンちゃんと呼ぶゆえんは、その走る姿が、往年のコメディアンを思わせるためだ。

むろんご本家のような横っ飛びではない。問題はである。

リュックの揺れを気にしてか、脇を締めぎみに、軽く握った両手がヒジから左右に揺れている。

丁字路の突き当りのバス停までは、緩い下り坂。走り下りると加速がつくので、スピードを抑えるため、手を振ってしまうらしい。

走るのはバスに遅れそうなときだけなのだろう。いつでも会えるとは限らない。

いや、会っているかもしれないが、なにしろ走り方以外には目立つ特徴がないから、歩いていても気がつかないのだと思う。

そして、キンちゃんに会えた日には、不思議といいことがある。

プレゼントをもらえたり、吉報が舞い込んだり、気がかりが不意に解消したり、小さな嬉しいことが、必ず起こるのだ。

占いの類は信じない私も、キンちゃんは信じている。

きんちゃんばしり



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ごきんじょ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2022/03/28 11:30

ゆびなし話。

春だけど、薄着になるにはうすら寒いのは、花冷えというのだろうか。

仕事してるとしんしんと冷えて、かといって暖房を点けると、暑くてのぼせてしまう。

若いときはこの、冷えるというのがイマイチわからなかった。

気温が低いから寒いのはもちろんわかるけれど、冷え性の人が、冬でもなく、戸外でもないのに、腰が冷える、足が冷えるとこぼすのを聞くと

ナンノコッチャ?

と思っていた。

悲しいかな、歳月は人を変える。

ハダシで平気だった足にクツシタを履き、それがモコモコの厚手になり、それでも足りずに分厚い室内履きを履くようになるのだ。

おそろしいことに、このごろ手も冷えだした。

スース―するのでテブクロをはめたら、指が不自由で、家事も仕事もはかどらない。

アレいいよね 昔のああいうやつ…

浮かんだのは、昭和のオバアサンがしていた

ゆうきちほ2

けっしてオシャレではなく、軍手の指先を切ったような、指無しテブクロだ。

樹木希林になる前の悠木千帆演ずる老婆が、屋内外、季節を問わずはめているのを見て、どうしてあんなものを、と、不思議でならなかった。

しかしこのトシになると、アレは必要にして快適な装備であるとわかる。

あまつさえ、自分も使おうかなと思ったりするのだから、まったく人生は分からない。



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もろもろ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2022/03/27 11:30

きよみや話。

オリンピックが終わってヤレヤレと思ったら、高校野球やら大相撲やら、またはじまったようだ。

プロ野球も開幕して、スポーツ観戦に興味のない私でも、ニュース番組でも選手や監督を目にする機会が増える。

そういえば、ハデな監督が来て注目されているあのチームの、この選手。

きよみやこうたろう

私は彼を見るたびに、なぜかこの人を思い出してしまう。

きよむらこうざぶろう

コバヤシ ネンジ氏。

わがこよなく愛好するところの2時間サスペンスドラマには欠くことのできない俳優である。

ふたりの容貌に似たところは全くない。

年齢も離れているし、共演を見た記憶もない。

それなのに、画面で躍動する若い野球選手を見ると、老優の顔がふと頭に浮かぶのである。

なぜだろうと思いつつ、深く考えてはいなかったが、先日再放送のドラマを見ていて、その理由が判明した。

てつどうけいさつかん

税務調査官・窓際太郎、駅弁刑事・神保徳之助と並ぶ、コバヤシ氏の人気シリーズ。

その役名がキヨムラコウザブロウ

そして野球選手はキヨミヤコウタロウ

これは連想するのも当然じゃないか。

理由が分かって、安心してコバヤシさんを思い浮かべられるようになったことだし、キヨミヤさんには、せいぜい活躍してほしいと思う。



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てれびじょん | コメント(4) | トラックバック(0) | 2022/03/26 11:30

とくべつ話。

ワクチン接種の予約が取れた。

2回目までは県の集団接種だったが、3回目は個別に病院で受ける。

日程優先で探したら、行ったことのない病院になった。

受付を終え、名前を呼ばれて、広い部屋の入口近くで問診。奥には接種ブースと、待機場所らしく丸椅子が並んでいる。

飲んでいる薬やアルコールアレルギーの有無を聞かれたあと

注射で気分が悪くなったことはありますか?

あるんですよ、これが。

子供のころから怖がりで、注射や採血では目を回したり、失神したり、たびたび大騒ぎになった。(→てんてき話。

血管迷走神経反射というものらしい。

大人になって頻度は下がったものの、有るか無いかと問われれば、有ると答えるしかない。

集団接種の時は、接種後の待機時間15分のところ、20分待つように言われた。今日もそういうことだろうと思ったら

じゃああっちに座って

先生が指さす先には

りくらいにんぐちぇあ

堂々たるリクライニングチェア

えっ?アタシ ここ?

何かの間違いじゃないかと思いつつ、腰かけて待っていると、注射用具一式を載せたワゴンをガラガラと鳴らして、看護師さんがやってきた。

ハイ腕まくって ダラーンとしてくださーい

ええっ?ここで このまま注射?

あっという間に針が刺されたと思えば

気分が悪くなったら言ってくださーい

やけにかけ心地のいい椅子の上に、ひとり取り残された。他の人はみんな

まるいす

背もたれもない丸椅子に、文句も言わずに座っているので、なんだか気が咎める。

うっかりあんなことを言ったものだから、必要以上に特別扱いされてしまった。視線が気になって目を閉じたら

…さん… …さん 

名前を呼ばれてハッと飛び起きた。どうやら15分の間に、ウトウトしてしまったらしい。

特別席のリラックス効果は、やはりたいしたものであった。



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ごきんじょ | コメント(16) | トラックバック(0) | 2022/03/25 11:30

まっぷの話。

行ったことない場所に行くので、パソコンの前に座り、行先の住所を検索する。

ぐーぐるまっぷ

このマークでおなじみの地図アプリである。

なるほど ココかあ…

最寄駅からの道順を確認し、画面を閉じるかと思いきや、さにあらず。

方向音痴の人間は、そんなおぼろげな記憶では、ゼッタイに目的地にたどり着けないのだ。

手には赤鉛筆と、1冊の小冊子。

でっかじまっぷなら

画面を見い見い、該当のページに目的地と経路を書き込む。

おそろしくアナログなのは自覚している。

以前は検索した地図をプリンタで出力していたが、1枚では持ち歩きに不便だし、折ると失くしやすい。結局これがいちばん簡単なのである。

駅に着いてからスマホで検索すりゃいいじゃん、とムスメは言う。

しかし、旧世代にとって、スマホを手にすること自体が緊張を強いられる。ましてや若者のように、見ながら歩くというのは至難の業なのだ。

おまけに頼みもせぬのに方向を指すし、傾けたら向きが変わるし、地図をグルグル回さないと使えない者には、不便この上ない。

それならば、はじめから地図に書いていく方が、なんぼかラクである。

引越してきてすぐに求めた地図も、古くなった。内容も古びて、新しい施設は載っていない。

書店で探しても、棚に無かったので

あの…これの新版を…

カウンターで申し出たところ、レジのお姉さんは店の端末をパパパと叩き

あー、これ、もう出てないですね~

ええっ、と驚いた私に彼女は

東京とか大阪とか 都会のはあるんですけど… 

気の毒そうに言った。



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ごきんじょ | コメント(14) | トラックバック(0) | 2022/03/24 11:30

つみたて話。

ポストの中に、チラシに混じって封書が1通。

差出人は銀行?何だろう 残高不足になったりはしてない、はず、だけど…

ドキドキしながら封を切ると、ペラ1枚の中身は

定額貯金満期のご案内

なーんだ、ヤレヤレ。

月々スズメの涙ほどの積立を続けてきた通帳は、もともと給与振込の口座だった。

離婚して間もないころ、雇ってくれた有難い職場だが、給料は安かった。

振り込まれるわずかの額は、角砂糖が溶けるように、なしくずしに無くなってしまう。

これじゃダメだ 少しずつでも貯めなくちゃ

そう思って申し込んだ積立貯金

毎月毎月積み立てても、たいして増えないし、急な入用で引出してしまったこともある。

お金持なら一夜で使ってしまうくらいの、わずかな合計金額に、タメイキをつくこともあった。

それでも日々は過ぎ、子供も順に独立して、ちょっと余裕が出てきたこのごろ。

いつまでも若くはない。時間は限られている。

掛け持ちしてきた仕事の整理を考え、この仕事は辞めようと決めた。(→ちこくの話。

給料が入らなくなった口座からも、積立は続いて半年、やっと満期が来たのである。

…長きにわたりご利用いただきましたことを、重ねて御礼申し上げます。

いつもならすぐ捨てるダイレクトメールだけれど、なんとなく抽斗にしまった。

つみたてちょきん



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2022/03/23 11:30

みずのひ話。

家事も一段落してテレビを点けたら

…今日は世界水の日ということで…

まーたあんなツマンネーこと言ってるヨ。

…皆さんのおすすめの水をご紹介…

朝からよっぽど話題が無いんだナ。

フンと鼻を鳴らしてチャンネルを変えたら、マフマフ太った猫が大写しになったので、断然こっちを見ることにした。

マタタビを与えられて喜ぶ猫を楽しく見てるのに

…今日は世界水の日…

さっきのナレーションをなぜか思い出す。

…世界水の日…

何だろう、引っかかるものが。

水の日

はッ!

慌てて台所に行くと、冷蔵庫の扉にマグネットで止めてあったのは

だんすいのおしらせ

でやっ!あと30分しかない!

広からぬ家の中を駆け回り、あらゆる蛇口を開いて、ヤカンにバケツ、ナベに洗面器、容器という容器に水を溜める。

夕方までの水をなんとか確保して、テレビの前に戻ると、フモフモの猫の映像は終わっていた。

まぬるねこ
(この猫をもうちょっと見たかったのに)



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てれびじょん | コメント(10) | トラックバック(0) | 2022/03/22 11:30
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