【詳報】議員はなぜ男ばかり? 首相答弁は日本の現在地

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 菅義偉首相が8日午前9時過ぎから、参院予算委員会の集中審議に出席しました。首都圏4都県で延長した新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言や、首相の長男らによる総務省幹部への接待問題などをめぐり、野党の質問や追及にどう答えたのか。タイムラインで詳報します。

寸評 倉重奈苗記者

「なぜ女の人いない?」中学生の問いに熱情語らぬ首相

 国会は8日も、新型コロナウイルス対応や総務省幹部の接待問題をめぐり論戦が繰り広げられた。

 だが、今日はあえてこれらの問題ではなく、気になった政府答弁をここで指摘しておきたいと思う。「やはりそうなのか」とがっかりしてしまったからだ。

 それは、立憲民主党の宮沢由佳氏が取り上げた中学生の問いかけに対する菅義偉首相の答弁。

 「議員はなぜ男の人ばかりなのですか。もっと若い人もいた方が良いと思います。どうして女の人や若い人がいないのか。それについてどう考えていますか」。山梨県の中学生が「菅首相にぜひ聞いてほしい」と宮沢氏に頼んだという。

 首相はこの問いに対して、「神髄をよくわかっている人なのかなという思いであります」と笑みを浮かべつつ、「自民党も多様な世代を広げていかなければならない」「参考にしてこの国をつくっていきたい」などと通り一遍の話を述べただけ。自民党総裁として、また首相として、女性議員をいかに増やすか具体的な取り組みや問題意識にかける自らの熱情を語ることはなかった。

 政府は「2020年に女性リーダー3割」の目標を掲げたが、この目標を達成できないとみて、来年度からの基本計画に盛り込む目標を「20年代の早期に」と早速ハードルを下げた。

 今国会では、東京五輪パラリンピック大会組織委員会の森喜朗前会長の女性蔑視発言で、国内外に日本の「おじさん目線で成り立ってきた社会構造の実像」を見せつけ、国民からは抗議や失望の声が相次いでいる。

 折しもこの日は国際女性デー。世界経済フォーラムが19年に公表した男女平等の世界ランキングで、日本は121位、政治分野では144位と下位に位置し、日本の政界などでの女性登用の遅れは際立っている。

 政府の「女性活躍社会」がいまも実態が伴っていないというもどかしさを感じていた矢先の中学生の率直な疑問に、我が意を得たりとの思いでいた。そこででた首相の答弁である。

 国のトップリーダーたる首相は、未来を担う子どもたちからの問いに対し、具体の施策を掲げて前向きな社会を示すべきだ。

 この問題に本腰を入れて取り組んでいない「日本政府の現在地」を示す答弁しかできないという失望で、終わらせてはならない。

17:15

首相、中小企業「16、17年前から、足腰を強くと思っていた」

 共産党の大門実紀史氏は、菅義偉首相が意欲を示す中小企業の再編促進策について言及。来年度の中小企業税制の改革として、M&A(合併・買収)に伴う法人税の負担軽減策などがあることを「大が小をのむ話だ」と指摘。政府の成長戦略会議で、首相のブレーンで元金融アナリストのデービッド・アトキンソン氏が、中小企業は生産性が低く、規模拡大をする必要があると主張したことが反映されているとし、首相にも考えを問うた。

 首相は、「16、17年前に経済産業大臣政務官だった当時から中小企業の足腰を強くして、海外に向けて進出する、海外と関連の仕事を持つようにならないと、中小企業そのものが立ちゆかなくなってしまうと実は思っていた」とし、中小企業庁から「産業の空洞化につながる」と反対されていたことを明かした。

 それでも、「国際化の中で、数的にやはり中堅企業になった方がいいというのが私の当時の考え方」とし、「たまたまアトキンソンさんの本の中にも書いてありましたんで、私自身の考え方と非常に近かったもんですから、そういう中で今取り組んでいる」と述べた。また、「小規模事業者の淘汰(とうた)が目的ではなく、経営基盤を強化することで中小企業が成長して海外で競争できるような企業にすべきだというふうに思っている。このことは私自身、十数年前から一貫している」とした。

 8日の参院予算委員会は、大門氏の質疑をもってこの日の審議を終えた。

17:05

持続化給付金「1人の不正のため、99人取り残すな」共産が質問

 最後に質問に立った共産党の大門実紀史氏は、新型コロナの影響で売上高が急減した企業や事業者に対する「持続化給付金」を取り上げた。

 持続化給付金をめぐっては、日本中央競馬会(JRA)に所属する調教師や騎手ら計164人が不適切に受給するなど問題も生じている。

 大門氏はJRAの問題に触れ、「不正受給の防止は重要だと思うが、1人の不正を防ぐために99人取り残されることはあってはならない」と指摘。「支援すべき人には支援するという柔軟な対応を」と政府に促した。

 梶山弘志経産相は「不備対応中の案件は3・4万件ある。こういった方々に対して、提出されている資料だけでは判然としないものもあるので、次善の策も含めお願いしている。可能な限り、申請者に寄り添って対応してまいりたい」と答弁した。

17:00

立憲・枝野代表「感染症対策、泥縄的」 政府を批判

 立憲民主党の枝野幸男代表は、国会内で開かれた党会合で、首都圏で再延長された緊急事態宣言をめぐり「今の感染状況や医療の逼迫(ひっぱく)状況を考えれば、結論自体はやむを得ない」としたうえで、「宣言を出すのも解除するのも明確な基準がないままだ。感染症対策が泥縄的に行われている」と述べ、政府の対応を批判した。

 枝野氏は「営業が事実上できない皆さんに対して、追加の支援も全く出されないまま、ただ2週間延ばす状況は、完全に感染症対策から逃げている。放棄している」と述べ、飲食店などの事業者への支援を充実させるよう訴えた。

16:50

総務省幹部とNTT側「密室協議だ」 共産が批判

 共産の山添拓氏は、8日付で事実上更迭された谷脇康彦・元総務審議官らがNTT側から接待を受けていた問題を取り上げた。

 山添氏はまず、政府がNTT株の3分の1以上を保有するとしたNTT法を挙げ、「国民の財産ということになるNTTが、経費で違法接待を行っていた」と強調。「政府は株主として谷脇氏らに対し、会社に返金するよう求めるべきではないか」と求めた。

 菅義偉首相は直接答えず、「まずは総務省が十分な調査を行う必要がある」と主張した。その上で、「ガバナンスやコンプライアンスなどについて株主総会などの機会を捉え、財務省が必要な対応を求めることになる」と述べた。

 また、山添氏は谷脇氏に対し、NTT側との会食で携帯電話料金の値下げが話題になったかどうかも質問した。谷脇氏は「2018年の2回の会合で、携帯料金の話は話題に出たと思う」と認めた。

 山添氏は「携帯値下げは多くの国民の願い」とした上で、「政策転換するときに十分な議論がなく、あるのは夜の会食による意見交換。行政のあり方としてゆがんでいるのではないか」とただした。これに対し、首相は「私が引き下げを提唱したのは今から3年ぐらい前。一つ一つ手順を踏んで行ってきた」と反論した。

 山添氏は「総理が掲げたことだからと結論ありきで進める。特定の事業者とは密室協議を行う。これでは行政のプロセスが検証できない」と批判した。

16:35

首相「政府公用車の電動車導入、加速したい」

 菅義偉首相は自らが掲げる「2050年までの温室効果ガスの実質排出ゼロ」の実現に向け、政府公用車の電動車導入を積極的に進めていく考えを示した。

 浜口誠氏の質問に対する答弁。

 環境省によると、2019年度末時点で、政府が保有する公用車計2万6655台のうち、電気自動車燃料電池自動車ハイブリッド車は計5275台と全体の19・8%にとどまる。

 首相は「電動車の普及、加速はまさに不可欠。私の公用車もすでに電動車だ」と強調。そのうえで、11月の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に向けて「政府公用車の電動車導入に意欲的な目標を設定して加速していきたい」との考えを示した。

16:15

浜口氏「現役世代の負担軽減を」 首相「私も全く同じ」

 浜口誠氏は、少子高齢化で現役世代の医療保険負担が増している問題を取り上げた。現役世代の負担軽減策について、菅義偉首相の考えを尋ねた。

 首相は「若い世代の負担上昇を抑えるために、一定所得以上の後期高齢者に窓口負担2割をお願いさせていただくことにした。若い世代の負担軽減に向け、対策をしっかり行っていきたい」などと述べた。

 浜口氏が「一歩前進だが、現役世代の負担軽減は年700~800円程度にしかならない。さらなる改革が必要だ」と訴えると、首相は「私も全く同じように考えている」。

 さらに、今回の後期高齢者の一部負担増について「いろんなご批判があることも事実だが、長年言われ続けてきて改正できていなかった問題だ」と指摘。「できることから一つずつ行っていきたい。また皆さんにもご協力もいただきたい」と述べ、さらなる社会保障制度の改革に意欲を示した。

16:10

麻生氏「質問、ほとんど聞いていなかった」 

 「いきなり急にふられてね、質問に答えて下さいって言われても、今の質問ほとんど聞いていなかったので」。参院予算委員会で麻生太郎財務相がそう答弁すると、委員会室では抗議の声と笑いが起きた。

 浜口誠氏の質問で答えた。浜口氏は失業者や休業者への給付に使っている雇用保険特別会計の積立金がコロナ禍で減少していることを指摘。財源は企業などからの保険料なので、税金の投入も菅義偉首相に求めた。首相が「現時点において直ちに財源が枯渇する状況にはない。財政面で支障をきたさないように対応していく」と応じたため、麻生氏にも答弁を求めた流れだった。

 麻生氏は、事前の質問通告が…

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