京都の若き華道家・池坊専宗さん 文化庁は人を育て、つなげる土壌を

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岡田匠
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 京都の華道家元池坊は、室町時代に「いけばな」の理念を確立した。45世家元の孫として生まれた池坊専宗(せんしゅう)さん(31)は、若者ならではの視点で、いけばなの魅力を伝えている。京都の伝統文化を担う若き華道家・写真家に、文化庁の移転について聞いた。

 文化にはトップダウンがそぐわないと思います。京都だけでなく、その地域、地域で様々な個性が生まれ、受け継がれ、少しずつ変化していきます。

 一方、行政はトップダウンで、結果を求めます。文化にしても、これだけの経済的な果実が見込めるから、これだけの予算を割り当てようと考えます。ただ、文化は数字に表れず、間接的に社会に影響を与えます。単にコンテンツを切り売りして、果実を見込むだけの観光商売では、日本の潜在的な文化力を失います。

 日本の文化が富裕層向けのビジネスに傾斜している流れも感じます。高級なホテルが建ち、食も日本酒も高価な値付けをされています。文化庁のみなさんには、特別な商品、特定のブランドだけに光を当てるのではなく、地域の魅力を掘り起こし、世界にアピールする作業にもアプローチして頂きたいです。

 京都を神聖視するつもりはありませんが、歴史が保存され、世界と戦えるだけのポテンシャルを持っていることは間違いありません。その京都ですら、東京で見かけるような店ばかりが並び、平準化しています。伝統の上ずみをつまんで観光資源にし、平面的に文化を切り取るビジネスが増えました。京都のポテンシャルが深まっていません。

後継者の減少は喫緊の課題

 京都には器や刃物、染料、和紙など日本の文化の基礎となっている職人や文化の蓄積がありますが、その後継者がかなりのスピードで減っています。このままでは、私たちの世代のうちに必ず逼迫(ひっぱく)します。保存して活用するサイクルを築くことが喫緊の課題で、文化庁の支援は欠かせません。

 職人の多くはSNSもスマホもない時代を生きてきたので、職人気質と言いますか、仕事の過程や、地域の人とどうつながっているか、裏側を見せることに遠慮があります。興味のある若者が情報を得ようとしても、その手段が不足しています。

発展する時代を知らない若い世代は文化に何を求めているでしょうか。記事の後半で池坊さんが語ります。

 一方、若者はスマホが身近に…

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