妊娠前の健康管理 専門外来を開設 笠間市立病院副院長の稲葉崇さん

原田悠自
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 茨城県笠間市立病院(同市南友部)の副院長・稲葉崇さん(36)は、病院内外で、妊娠前の健康管理を意味する「プレコンセプションケア」の周知に取り組んでいる。2019年には全国に先駆けて専門外来を設置。総合診療医としてのスキルを生かし、「地域のあらゆる人の健康を増進し、安心して妊娠・出産を迎えてほしい」と願う。

 東京都葛飾区出身。開業医をしている父の影響で医師を志し、東邦大学医学部(東京都大田区)に入った。専門的な知識を学ぶにつれて、自分が思い描く医師の姿とのギャップを感じた。「将来的には、風邪や不眠といった、ささいな困りごとに何でも対応できるドクターになりたかった」

 大学を卒業し、都内の病院で2年間勤めた後、住まいをつくば市に移し、筑波大学で総合診療のトレーニングを積んだ。その後は大学の教員として教壇に立ちながら、帯状疱疹(ほうしん)のワクチン研究などに励んできた。

 笠間市立病院に着任したのは約6年前。病院や保健センター、地域包括支援(高齢者支援)センターなどを併設した医療施設「地域医療センターかさま」がオープンした18年4月と同時期で、「連携して多機能に患者を診療できるうってつけの場所だ」と感じた。

 何でも相談してもらえる「町医者」として、総合診療だけでなく予防医学にも関心が強かった。その一環で、プレコンセプションケアの専門外来を開設することをいち早く提案し、19年に病院内に専門外来を新設。妊娠を望む女性やカップルに対し、血液検査の結果に基づいた適正体重や適度な運動、栄養指導などのカウンセリングを行う。

 こうした熱意や病院としての取り組みが評価され、市は同年10月から、市内に住む女性向けに、病院で受診した際の費用の8割を補助する独自制度を設けた。昨年10月には、補助対象となる医療機関を県内の産婦人科に拡大し、男性も助成を受けられるようになった。

 課題は認知度の向上だ。市役所のほか、市内で催される「二十歳の集い」の会場などでプレコンセプションケアについて解説するパンフレットを配ったり、市内の高校で出前授業をしたりして周知を進めている。「アルコールやたばこの摂取が妊娠・出産にどう影響するか。生活習慣の改善がなぜ必要か。そうしたことを、関心の薄い若い世代に対して積極的に届けていきたい」と意気込んでいる。(原田悠自)

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この記事を書いた人
原田悠自
水戸総局|キャップ
専門・関心分野
調査報道、社会問題、事件・事故・裁判