【そもそも解説】右翼「国民連合」って? 封印した主張にフランスは

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パリ=寺西和男
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 7日に決選投票が行われたフランス国民議会(下院、定数577)選挙で、第1回投票では2位だった左派連合が逆転し、最大勢力になる見通しが伝えられています。

 ただ、与党連合は解散前の250議席から大幅に議席を減らす見通しで、極右の流れをくむ右翼政党「国民連合(RN)」は過去最高の議席を獲得し、政党単位では下院の第1党になると予測されています。約4週間の選挙戦を通じて注目を集め続けたRNについて解説します。

 Q RNはどういう政党?

 A 右翼政治家のマリーヌ・ルペン前党首(55)が実質的に率いています。マクロン大統領が欧州議会選での大敗を受けて6月9日に電撃的に下院を解散する前は、88議席を持つ野党第1党でした。

 政党としての歴史は比較的長く、マリーヌ氏の父親で元仏軍人だったジャンマリ・ルペン氏(96)が1972年に設立した「国民戦線(FN)」が前身です。FNは当初、反共産主義を掲げていましたが、80年代から反移民に軸足を置き、差別主義的な主張などから「極右」と呼ばれました。

 2011年、三女のマリーヌ氏が党首に就任。ユーロ危機で失業者が増加するなか、自国民を守る保護主義的な主張で支持を拡大しました。15年にシリア内戦の激化などで欧州に移民が増えると、反移民や反イスラムの姿勢も強め、移民増加に不安を持つ一部の国民の受け皿にもなりました。

 一方で極端な主張に反発する有権者も少なくありません。FNでは、第2次大戦中のガス室によるユダヤ人虐殺について「歴史上のささいなこと」という発言をしたジャンマリ氏を15年に党から除名しました。さらに負のイメージを一新するため、18年に党名を「国民連合(RN)」に変更しています。

 Q なぜ今、注目されているの?

 A 総選挙の情勢調査では一貫して議会の最大勢力になると予想され、6月30日の第1回投票までは単独過半数の可能性も伝えられていました。仮に過半数を取れば、フランスでは第2次大戦後初めての右翼内閣が誕生する可能性が高まっていました。

 マリーヌ氏のもとで、極端な移民排斥やEU離脱といった主張を封印し、日々の暮らしの向上を目指す姿勢を訴える政策は「脱悪魔化」路線と呼ばれ、2017年以降の大統領選と総選挙では国民の支持を拡大し、フランス政治のなかで存在感を増し続けています。

 2022年11月にルペン氏に代わって3代目党首に選出されたジョルダン・バルデラ氏(28)は、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」などのSNSを駆使。若者を始め、これまでRNが浸透できなかった層の有権者に支持を広げています。バルデラ氏は移民が集まり、低所得者の多いパリ郊外の出身で、ルペン親子とは異なるリーダー像も注目を集めています。

 Q RNはもう極端なことは…

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この記事を書いた人
寺西和男
ベルリン支局長
専門・関心分野
欧州の政治経済、金融、格差、ポピュリズム