東京工業大学と東京医科歯科大学が統合検討をしていると報道されています。双方国立大学ですがビジネス的観点から見ればこの統合はアリ、だと思います。理由は補完関係です。東工大は理系大学だけれども医学系がないのでここに東京医科歯科が合流すれば総合理系大学が完成します。
大学経営は規模がモノを言います。何故か、といえばキャンパスという巨大な固定資産を持たねばならないからです。いわゆる装置産業と同じで初めに巨額を投じてお膳立てをしたのち、ようやく学生が集まるという仕組みです。ですが、経営者として見ればそのキャンパス内の教室の「稼働率」はどれぐらいなのか、「占有率(教室一つ当たりの学生数)」は適正なのか、などを考えると大学経営の効率化はまだ序の口かもしれません。
言い換えれば、大学経営効率を高めることは少子化時代にあって絶対条件であり、大学の統廃合も今後少しずつ進むとみています。
日本に大学はいくつあると思いますか?案外びっくりするかもしれませんが、2021年で788校です。都道府県一つあたり17の大学です。22年前の2000年の出生者数が119万人ですが、大学進学率をざっくり55%とすると65万人が1年に入学する学生数でこれを単純に788で割るとわずか830人/学年にしかならないのです。大学の規模は概ね年間入学者数が800人以下を小規模大学、3000人までが中規模大学、それ以上が大規模大学とカテゴリーされます。とすればこの計算式からすれば大多数が小規模大学でそこで激しいパイの奪い合いが起きていることが明白にお分かりいただけると思います。
日経の特集、「漂流する入試」の第一弾で「偏差値時代、終幕の足音」とあります。どういうことかといえば一般試験入学者の比率が少しずつ減り、推薦型とAO総合型が格段に増えていることを指摘しています。AOとはAdmission Office の略で面接や小論文、実技などを介して試験するので一回限りのクリアパスにしません。更に総合型は一定の学力試験を兼ねるので人物を総合的に判断するわけです。北米型の大学入学に近くなってきているわけです。
その結果、私立では推薦とAO総合が過半数を超え、一般入試の入学者は確実に減少しているというわけです。これは確かに良い傾向です。日経は「偏差値終焉」と捉えていますが、私はそれよりも有能な高校生の囲い込みだろうと考えています。
大学体育会系運動部は有能な高校生の採用に目を光らせています。相撲から陸上、各種球技まで概ねスカウトに近い状態となっています。これをより踏み込ませたのが推薦やAO総合で一発の試験結果という「腕試し」ではなく、もっと可能性がある若者をしっかり確保することで質の良い学生数を確保することに他ならないわけです。
それは冒頭申し上げたように大学経営が装置産業と同じで広々とした施設と設備が整った環境を提供し、学生が勉学のみならず、人間の奥深さを得られるような総合的な教育の場を提供するためです。このため学生数はビジネス的には売り上げと同じで非常に重要なわけです。
とすれば次に展開されるのは大学による提携校づくりで一般高校を大学と強く連携させることで一定枠の学生がその高校から大学に入れるようにするのです。かつては付属高校が主流でしたが最近は提携校から入れるケースも増えているのです。いわゆる付属校、提携校が全部でいくつあるのか数えていませんが、首都圏だけでも2−300校はあります。こうみると大学入試とか浪人は過去のものになりつつあるのかもしれません。もちろん、上級の大学を目指す方は浪人してでも、ということはあるのでしょうけれど時代はずいぶん変わったといってよいのでしょう。
このトレンドが何を意味するのか、といえば大学全入時代が着実に進んでいるわけです。「大学は出たけれど」というのは小津安二郎の1929年の映画ですが、100年後の1929年にそれが再び起きかねないとも言えます。
私が期待する次の大学経営の展開は何か、といえば卒業させない大学を作れ、ということです。大学は4年間の通過点ではなく、学ぶところだという当たり前の常識を再度徹底させる、そして留年率が各年1−2割ぐらいいても構わないという強気の経営ができる大学を育てることかと思います。
もう一つは留学生を取り込み、大学のクラスが一部でもよいので英語で履修するようになればよいと思います。ただ、日本の先生に英語で授業させるのもアリですが、私は世界から大学の講師や准教授クラスを引っ張ってくるぐらいのレベルアップも必要かと思います。
3つ目が日本の大学と世界の有力大学との提携です。オンライン化が進んだ今、世界の有力大学の講義をオンラインで受講することはたやすくなりました。これは上記2番目のアイディアの代替にもなりますが、日本の大学が世界の大学と繋がるというグローバルな教育環境を作ることが重要です。
日本の多くの大学は今、新設学部がより実務に近いものが増えています。医療保健学、観光学、メディア学、環境やITに特化したものなど短期大学の消滅化を補い、より専門的分野の学部を提供することで学生の将来の就職を助ける形になっています。これは学生を集めやすく、目先の経営としては分かるのですが、経営第一主義と言われても致し方ないのではないか、というのが私の思うところです。
では今日はこのぐらいで。
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北アメリカランキング
また明日お会いしましょう。
大学経営は規模がモノを言います。何故か、といえばキャンパスという巨大な固定資産を持たねばならないからです。いわゆる装置産業と同じで初めに巨額を投じてお膳立てをしたのち、ようやく学生が集まるという仕組みです。ですが、経営者として見ればそのキャンパス内の教室の「稼働率」はどれぐらいなのか、「占有率(教室一つ当たりの学生数)」は適正なのか、などを考えると大学経営の効率化はまだ序の口かもしれません。
言い換えれば、大学経営効率を高めることは少子化時代にあって絶対条件であり、大学の統廃合も今後少しずつ進むとみています。
日本に大学はいくつあると思いますか?案外びっくりするかもしれませんが、2021年で788校です。都道府県一つあたり17の大学です。22年前の2000年の出生者数が119万人ですが、大学進学率をざっくり55%とすると65万人が1年に入学する学生数でこれを単純に788で割るとわずか830人/学年にしかならないのです。大学の規模は概ね年間入学者数が800人以下を小規模大学、3000人までが中規模大学、それ以上が大規模大学とカテゴリーされます。とすればこの計算式からすれば大多数が小規模大学でそこで激しいパイの奪い合いが起きていることが明白にお分かりいただけると思います。
日経の特集、「漂流する入試」の第一弾で「偏差値時代、終幕の足音」とあります。どういうことかといえば一般試験入学者の比率が少しずつ減り、推薦型とAO総合型が格段に増えていることを指摘しています。AOとはAdmission Office の略で面接や小論文、実技などを介して試験するので一回限りのクリアパスにしません。更に総合型は一定の学力試験を兼ねるので人物を総合的に判断するわけです。北米型の大学入学に近くなってきているわけです。
その結果、私立では推薦とAO総合が過半数を超え、一般入試の入学者は確実に減少しているというわけです。これは確かに良い傾向です。日経は「偏差値終焉」と捉えていますが、私はそれよりも有能な高校生の囲い込みだろうと考えています。
大学体育会系運動部は有能な高校生の採用に目を光らせています。相撲から陸上、各種球技まで概ねスカウトに近い状態となっています。これをより踏み込ませたのが推薦やAO総合で一発の試験結果という「腕試し」ではなく、もっと可能性がある若者をしっかり確保することで質の良い学生数を確保することに他ならないわけです。
それは冒頭申し上げたように大学経営が装置産業と同じで広々とした施設と設備が整った環境を提供し、学生が勉学のみならず、人間の奥深さを得られるような総合的な教育の場を提供するためです。このため学生数はビジネス的には売り上げと同じで非常に重要なわけです。
とすれば次に展開されるのは大学による提携校づくりで一般高校を大学と強く連携させることで一定枠の学生がその高校から大学に入れるようにするのです。かつては付属高校が主流でしたが最近は提携校から入れるケースも増えているのです。いわゆる付属校、提携校が全部でいくつあるのか数えていませんが、首都圏だけでも2−300校はあります。こうみると大学入試とか浪人は過去のものになりつつあるのかもしれません。もちろん、上級の大学を目指す方は浪人してでも、ということはあるのでしょうけれど時代はずいぶん変わったといってよいのでしょう。
このトレンドが何を意味するのか、といえば大学全入時代が着実に進んでいるわけです。「大学は出たけれど」というのは小津安二郎の1929年の映画ですが、100年後の1929年にそれが再び起きかねないとも言えます。
私が期待する次の大学経営の展開は何か、といえば卒業させない大学を作れ、ということです。大学は4年間の通過点ではなく、学ぶところだという当たり前の常識を再度徹底させる、そして留年率が各年1−2割ぐらいいても構わないという強気の経営ができる大学を育てることかと思います。
もう一つは留学生を取り込み、大学のクラスが一部でもよいので英語で履修するようになればよいと思います。ただ、日本の先生に英語で授業させるのもアリですが、私は世界から大学の講師や准教授クラスを引っ張ってくるぐらいのレベルアップも必要かと思います。
3つ目が日本の大学と世界の有力大学との提携です。オンライン化が進んだ今、世界の有力大学の講義をオンラインで受講することはたやすくなりました。これは上記2番目のアイディアの代替にもなりますが、日本の大学が世界の大学と繋がるというグローバルな教育環境を作ることが重要です。
日本の多くの大学は今、新設学部がより実務に近いものが増えています。医療保健学、観光学、メディア学、環境やITに特化したものなど短期大学の消滅化を補い、より専門的分野の学部を提供することで学生の将来の就職を助ける形になっています。これは学生を集めやすく、目先の経営としては分かるのですが、経営第一主義と言われても致し方ないのではないか、というのが私の思うところです。
では今日はこのぐらいで。
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