今回はJoseph Cottonのアルバム

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「Zoom Zoom Shacka Tacka」です。

Joseph Cotton(本名:Silbert Walton)
は70年代半ば頃から活躍するディー
ジェイです。

70年代半ばにデビューした彼は当時は
Jah Waltonの名前で活躍していました。
その後80年代半ば頃からは今のJoseph
Cottonという名前に改名し、さらに活躍の
場を求めてジャマイカからヨーロッパに
渡り、困難な時期も過ごしましたが、
フランスを拠点に独特のユーモラスな
トーストで人気を得て、Biga Ranxや
Manudigitalなどのアーティストとも共演
し、今が全盛期ともいえる活躍をしていま
す。

Biga Ranx & Joseph Cotton - Air France Anthem (LOOTAYARD HQ)


ネットのDiscogsによると、Jah Walton
名義で1枚のアルバムと、59枚ぐらいの
シングル盤、Joseph Cotton名義で共演盤
を含めて24枚ぐらいのアルバムと、
142枚ぐらいのシングル盤を残していま
す。

Joseph Cotton - Wikipedia

今回のアルバムは2021年にUKの
Room In The Skyというレーベルから
リリースされたJoseph Cottonのソロ・
アルバムです。

プロデュースはRoom In The Skyレーベル
のLewis M(Lewis Murtagh)で、バックに
Vin GordonやAnsel Collinsなどの
ジャマイカのベテラン・ミュージシャンも
参加し、共演者としてAJ Franklinや
Winston Reedy、Ace Of Diamondなどが
参加したアルバムで、スカやロック
ステディ、初期レゲエなどのオールド・
リディムをSide 1が7曲にSide 2が7曲と
楽曲を短めに繋いで行く構成で、
Joseph Cottonのトーストがとても楽しい
充実した内容となっています。

手に入れたのはRoom In The Skyから
リリースされたLP(新盤)でした。

Side 1が7曲、Side 2が7曲の全14曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Produced by Lewis M
Recorded @: The Room In The Sky, The Arch, Roots Attack, Reality Shock, Afrospot
Mixed @: The Room In The Sky
Engineers: Lewis M, Ben Bell, Jeremie Clergue, KrisKemist, Kodjovi Kush
Laquer mastered by Chris Hansen Music House
Cover design: Daniel Tuffs

Singer & Players: Joseph Cotton, AJ Franklin, Winston Reedy, Ace Of Diamond,
Vin Gordon, Ansel Collins, Michel Flecher, Lewis M, Ben Bell, Preacher,
James Heydeman, Ann Marie Windross, Leroy Nembhard, Fish Keys, Errol Pitterson,
Kodjovi Kush, Alex White, Daniel Guitsy

となっています。

プロデュースはRoom In The Skyレーベル
のLewis M(Lewis Murtagh)です。
レコーディングはThe Room In The Skyや
The Arch、Roots Attack、Reality Shock、
Afrospotなどのスタジオで行われていま
す。
ミックスはThe Room In The Skyスタジオ
で行われています。
エンジニアはLewis MとBen Bell、Jeremie
Clergue、KrisKemist, Kodjovi Kushと
いう人が担当しています。
編集はChris Hansen Music Houseとなって
います。

「Singer & Players」としてJoseph Cotton
とAJ Franklin、Winston Reedy、Ace Of
Diamond、Vin Gordon、Ansel Collins、
Michel Flecher、Lewis M、Ben Bell、
Preacher、James Heydeman、Ann Marie
Windross、Leroy Nembhard、Fish Keys、
Errol Pitterson、Kodjovi Kush、Alex
White、Daniel Guitsyという名前があり
ます。
そのうちトロンボーン奏者のVin Gordon
とキーボード奏者のAnsel Collinsは、
70年代のルーツ・レゲエの時代から活躍
するレジェンド・ミュージシャンです。

カヴァー・デザインはDaniel Tuffsという
人が担当しています。
表ジャケはマイクを握るJoseph Cottonと
思われる人物のイラストです。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、今のJoseph
Cottonの活躍ぶりが解るような、オールド
なリディムに乗せた彼のトーストがとても
楽しいアルバムで、内容はとても良いと
思います。

このJoseph CottonですがJah Waltonの
名前で70年代から活躍したディージェイ
で、Phil Prattがプロデュースした
「Touch Her Where She Want It Most」と
いうアルバムを1枚残しています。

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Jah Walton – Touch Her Where She Want It Most (1978?)

Jah Walton * Teacher White


Jah Walton - Gourmandizer ('76)


その後80年代初め頃にはJoseph Cotton
に改名し、さらに活躍の場を求めて
ヨーロッパに渡り、フランスのパリを拠点
に活躍しますが、一時期は苦しい時期も
あったようです。
ネットのレゲエレコード・コムで彼を検索
するとCD-Rのアルバムが4枚ぐらい
ありますが、そのうち2枚はこのRoom In
The Skyレーベルで、おそらく苦しい時期
を支えてくれたレーベルのひとつがこの
Room In The Skyだったようです。
(ちなみにネットのDiscogsにはこうした
CD-Rは載っていなかったので、
アルバムとしてカウントされていないよう
です。)

実はこのJoseph Cottonの人気が上がって
来たのはまだ近年で、2010年代ぐらい
から台頭して来たBiga RanxやManudigital
などのアーティストと共演し始めた頃から
なんですね。
レゲエの中心地は2000年代頃から
ジャマイカからフランスを中心とした
ヨーロッパに移ったなどと言われますが、
そうしたヨーロッパの若いレゲエ・
アーティストには、レゲエの奥義を知る
ジャマイカのベテラン・アーティストの
存在が必要だったのかもしれません。
そうした若いアーティストと老練な彼の間
に一種の化学反応が起き、それによって
フランスをはじめとするヨーロッパの
レゲエがより面白くなったように思い
ます。
それによりBiga RanxやManudigitalなどの
アーティストもJoseph Cotton自身も、
より強力で面白い音楽を量産するように
なるんですね。

Manudigital - Only Just Begun Ft. Joseph Cotton (Official Video)


Bazil & Joseph Cotton - Now You Learn (Official Video)


Joseph Cotton, Manudigital – Joseph Cotton Meets Manudigital & Friends (2017)

このJoseph Cotton自身も今が全盛期とも
いえる活躍を見せています。

そうした彼の活躍ぶりが解るアルバムの
ひとつが、今回のアルバムです。
今回は表題曲の「Zoom Zoom Shacka
Tacka」というタイトルからも解るよう
に、「Bangarang」や「Boom Shacka
Lacka」、「Riding West」など、スカ
からロックステディ、初期レゲエの時代
のオールド・リディムを取り入れた
Joseph Cottonの肩の力の抜けた楽しい
トーストが魅力的な内容となっています。
こうしたオールド・リディムにオールド・
スタイルのトースティングでも、その磨き
上げたトースティングはけっして時代の
ズレを感じさせません。
むしろレゲエという音楽の濃度を濃く
して、魅力的な音楽に仕上げています。

またAJ Franklinが3曲、Winston Reedy
が2曲と同じアーティストと多く共演して
いますが、あえて曲の長さを短くして
次から次へと曲を変えて行き、共演曲を
多く盛り込む事で、まるでミックス・
アルバムのように時間の濃度を濃くして
います。
そのあたりの聴き流すも良し、ジックリ
聴くも良しの柔軟性のある作りも、今風で
ちょっと面白いところ。

彼の馴染みのレーベルRoom In The Sky
で、旧知のVin GordonやAnsel Collinsと
の共演というのも大きなポイントで、彼の
ノビノビと楽しそうなトースティングは
とても魅力的。
特にSide 1の7曲目Vin Gordonとの共演曲
「Riding West medley」などでも見られる
ように、トロンボーン奏者のVin Gordonと
多くの曲で共演しており、その茫洋とした
トロンボーンの響きがこのアルバムの
大きな魅力の一つとなっています。

ちなみに彼の(執筆時での)最新アルバム
2024年の「New Fashion Way」は、
同じRoom In The Skyレーベルからの
リリースで、このVin Gordonが2曲
(あるいはそれ以上)に参加しており、
再度の共演が見られます。
もしかしたらこのアルバムでの共演の評判
が良かったのでしょうか?

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Joseph Cotton – New Fashion Way (2024)

そうした仲間の後押しもあり、ようやく
活躍の場を得た彼のいかにもダンスホール
といった、楽しいトースティングはとても
魅力的です。

Side 1の1曲目はAJ Franklinとの共演曲
「Bangarang Medley」です。
リディムはLester Sterling & Stranger
Coleのロックステディのヒット曲
「Bangarang」です。
刻むようなギターとトロンボーンの
メロディに、コーラス、語るような
Joseph Cottonの明るいトーストがイイ
感じ。

2曲目は表題曲のAJ Franklinとの共演曲
「Zoom Zoom Shacka Tacka」です。
リディムはHopeton Lewisの「Boom Shacka
Lacka」か?
軽快なドラミングに、ピアノと刻むような
ギター、キーボードのメロディ、ソフトな
ヴォーカルに乗せた、Joseph Cottonの自由
なトーストがイイ感じ。

Zoom Zoom Shacka Tacka


3曲目は「Catch That One」です。
ホーンの心地良いメロディのオープニング
から、刻むようなギターとトロンボーン、
サックスのメロディ、歌うように語るよう
に自由なJoseph Cottonのシング・ジェイ
が見事な曲です。

joseph cotton catch that one


4曲目は「Wedding Dance medley
(Fatty Fatty)」です。
(Fatty Fatty)とあったので、リディムは
The Heptonesの「Fattie Fattie」か?と
思ったのですがちょっとよく解りません。
華やかなホーンと刻むようなギターのノリ
の良いメロディに、流れるようなJoseph
Cottonのトーストがイイ感じ。

Wedding Dance Fatty Fatty


5曲目はWinston Reedyとの共演曲
「Feel The Rhythm」です。
リズミカルなドラミングに、楽しいピアノ
と刻むようなギター、ホーンのメロディ、
ノリの良いWinston Reedyのヴォーカル
と、Joseph Cottonの味のあるトーストが
イイ感じ。

Feel the Rhythm


6曲目は「Hard Man Fi Fead」です。
歯切れの良いドラミングと、ギターと
トロンボーン、サックスの楽し気な
メロディ、コーラスに乗せた、Joseph
Cottonの明るいトーストがイイ感じ。

joseph cottobn hard man fi dead


7曲目はVin Gordonとの共演曲
「Riding West medley」です。
リディムはBilly HopeとThe Bad Manの
「Riding West」のようです。
トロンボーンの楽しいオープニングから、
ユッタリとしたドラミングに、Vin Gordon
のトロンボーンの味わいのあるメロディ、
Joseph Cottonの味のあるトースティング。

Side 2の1曲目は「Covid Skank」です。
タイトルからみて新型コロナの流行を
歌った曲のようです。
歯切れの良いドラミングに、リリカルな
ピアノと刻むようなギターのメロディ、
ちょっと歌っているJoseph Cottonの
味わいあるトーストがイイ感じ

joseph cotton covid skank


2曲目はWinston Reedyとの共演曲
「Dreamland medley」です。
どうもリディムはBunny Wailerの名曲
「Dreamland」のようです。
心地良いドラミングに、刻むようなギター
のメロディ、心地良いWinston Reedyの
ファルセットなヴォーカル、流れる
ように滑らかなJoseph Cottonのシング・
ジェイがイイ感じ。

3曲目はAJ Franklinとの共演曲
「Book Of Rules」です。
パーカッションも交えた心地良い
ドラミングに、刻むようなギターの
メロディ、AJ Franklinのヴォーカルと、
Joseph Cottonのトーストとのコンビ
ネーションがイイ感じ。

Joseph Cotton - book of rules


4曲目は「Gold Digger」です。
ハッキリとは確認出来ませんが、リディム
はBob Marleyの「Soul Rebel」か?
刻むようなギターを中心としたメロディ
に、立て板に水のJoseph Cottonの言葉が
溢れ出すようなトーストがイイ感じ。

Joseph Cotton - Gold Digger


5曲目はAce Of Diamondとの共演曲
「I'm In Love With You」です。
歯切れの良いドラミングに、ピアノと
キーボードのリリカルなメロディ、
Ace Of Diamondとのソフトなヴォーカル、
Joseph Cottonの味わいのあるトースト
とのマッチングがイイ感じ。

joseph cotton & ace of diamond I'm in love with you


6曲目は「A Whasso」です。
リズミカルなドラミングに、サックスと
刻むようなギターのメロディ、流れるよう
に滑らかなJoseph Cottonのトーストが
イイ感じ。

7曲目は「Old Sweet Africa」です。
歯切れの良いドラミングに、ムーディーな
サックスと刻むようなギターのメロディ、
表情豊かなJoseph Cottonのトーストが
とても楽しい曲です。

ざっと追いかけて来ましたが、レコードの
両面に楽しさがぎっしりと詰め込まれた
ようなアルバムで、Joseph Cottonの今の
好調さが感じられる、好内容のアルバムと
なっています。

今や彼は多くのヨーロッパのレゲエ・
アーティストに慕われる「レゲエの先生」
の地位を獲得したのではないでしょうか?
そこに至るまでに彼の多大な努力があった
事は、想像に難くありません。
「レゲエの先生」Joseph Cottonにはこれ
からも注目です。

機会があればぜひ聴いてみてください。


Joseph Cotton and b-soul - nah worry bout a thing


MANUDIGITAL - "Parisian Girl" - Back Inna Days #14 (Official Video)


JOSEPH COTTON LIVE PART01


○アーティスト: Joseph Cotton
○アルバム: Zoom Zoom Shacka Tacka
○レーベル: Room In The Sky
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 2021

○Joseph Cotton「Zoom Zoom Shacka Tacka」曲目
Side 1
1. Bangarang Medley - feat. AJ Franklin
2. Zoom Zoom Shacka Tacka - feat. AJ Franklin
3. Catch That One
4. Wedding Dance medley (Fatty Fatty)
5. Feel The Rhythm - feat. Winston Reedy
6. Hard Man Fi Fead
7. Riding West medley - feat. Vin Gordon
Side 2
1. Covid Skank
2. Dreamland medley - feat. Winston Reedy
3. Book Of Rules - feat. AJ Franklin
4. Gold Digger
5. I'm In Love With You - feat. Ace Of Diamond
6. A Whasso
7. Old Sweet Africa

●今までアップしたJoseph Cotton (Jah Walton)関連の記事
〇Joseph Cotton (Jah Walton)「Showcase」
〇Joseph Cotton「No Touch The Style」
〇Joseph Cotton「Dancehall Days 1976-1984」
〇Joseph Cotton Meet DJ Air Afrique「Eternal Light」
〇Joseph Cotton, Manudigital「Joseph Cotton Meets Manudigital & Friends」
〇Manudigital「Step Up」