昨年の苦い経験を力に 2年ぶりの全国大会へ 磐城高吹奏楽部(My吹部Seasons)
1年前の東北吹奏楽コンクールの表彰式を、福島県立磐城高校吹奏楽部のトランペット担当、薄井菫(すみれ)とコントラバス担当の矢原笑(えみ)は決して忘れることができない。
ふたりは当時、2年生でコンクールメンバーとして大会に参加していた。
「ホールで座っていた位置とか、まわりで他校の部員が大喜びしているのに磐城高校の部員がうつむいている様子とか、いまも目に焼きついています」
菫がそう言うと、笑もうなずきながらこう続けた。
「他校の歓声を聴きながら、『なんで私たちは行けなかったんだろう』という思いと、2001年から先輩方が続けてきた全国大会出場を途切れさせてしまった悔しさが胸に刺さりました」
磐城高は全国大会22回出場を誇る常連だ。しかし、昨年、東北大会の表彰式で代表として発表された3校の中にその名前はなかった。
同部の卒業生で、顧問を務める教諭の橋本葉司はこう振り返った。
「コンディションも悪くなかったですし、向かい合ってきた楽曲に自分たちなりの結論を出せた演奏でした。全国大会の連続出場はいつかは途切れるものですので、仕方ありません」
自分たちが力を出し切れても、最高の演奏ができたと感じていても、結果に結びつくとは限らない。コンクールの厳しさを菫や笑は身をもって味わったのだった。
【連載】My吹部Seasons
吹奏楽作家のオザワ部長が各地の吹奏楽部を訪ねます。
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今年、高3になった菫は部長でトランペットのファースト首席奏者、笑は菫を支える副部長として、ともに吹奏楽部を引っ張っている。
菫が磐城高に入ったのは、かつて同部に所属していた三つ上の姉の影響だった。
「私がトランペットを始めたのも、磐城高校に入ったのも、姉に憧れたからです。姉が全国大会で演奏する姿を中学時代に客席から見ていたのですが、私も高1のときに55人のメンバーに選ばれて全国大会のステージに立つことができ、『こっち側に来られたんだ!』とうれしかったのを覚えています」
昨年のコンクールでは課題曲《レトロ》(天野正道)で重要なソロも担当。東北大会の本番直前には「不安で泣いてしまった」が、本番では落ち着いて練習どおりの音を吹き鳴らすことができた。
審査結果は、無念の代表落ちとなった。
だが、菫と笑には嘆き悲しん…