全身まひで舞台活動 「態変」率いる金満里さんの地べたからの視点

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中野晃
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 首から下が全身まひという障がいがありながら、障がい者の表現芸術集団「態変」を率いて舞台活動を続ける金滿里(キムマンリ)さん=大阪市=が、半生記「生きることのはじまり」をまとめた。「地べたからの視点」による回想は、同じ社会を生きる健常者にそのありようを問いかけている。

 〈だだっ広い病室に八台のベッドが置かれ、排便も着替えもベッドの上でする重度障碍(しょうがい)児ばかりなのに、カーテンも何も仕切りはなく、みんな丸見えのごった煮の状態だ。〉

 1961年5月、金さんは7歳で大阪市内の肢体不自由児施設に入所し、衝撃を受けた。

 朝鮮古典芸能の伝承者で僧舞(スンム)の名手、金紅珠(キムホンジュ)さんの末っ子として大阪で生まれた。3歳でポリオにかかり、全身まひになって4年間入院した。当時の設備環境はよくなく、重度でなかった子どもがみるみる寝たきりになったり、風邪をこじらせて気管支炎で死んだりするのを目の当たりにしたという。

 日曜日に母姉が面会に来るのと、月に1度認められる外泊の日が待ち遠しかった。自由に動けない自分自身の身代わりに、すらっとした足の女の子に着たい服を着せ、行きたいところに行く空想に浸って時を過ごした。

 施設では通名(日本名)を名…

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