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2022年9月18日日曜日

【読了】江戸川乱歩著『少年探偵 大金塊』(ポプラ社)

 江戸川乱歩(1894年10月21日-1965年7月28日)の少年探偵シリーズ『怪人二十面相』『少年探偵団』『妖怪博士』につづく第4作『大金塊』を読みました。春先、久しぶりに読んだ『青銅の魔人』はシリーズ5作目でしたので一つさかのぼったことになりますが、これで最初の5作を読み終えることができました。

5作目までの単行本の初出をまとめておきます。

 1『怪人二十面相』(大日本雄弁会講談社、昭和11年12月)1936年

 2『少年探偵団』(大日本雄弁会講談社、昭和13年3月)1938年

 3『妖怪博士』(大日本雄弁会講談社、昭和14年2月)1939年

 4『大金塊』(大日本雄弁会講談社、昭和15年2月)1940年

 5『青銅の魔人』(光文社 痛快文庫、昭和24年11月)1949年

第4・5作は終戦をはさんで今から80年ほど前の作品で、そのことを思えば驚くほど読みやすく、新鮮な面白さにあふれていました。ただそうはいっても、さすがに古さを感じさせるところもあって、2冊で多少飽きが来て、まあ次はいいかなと思えて来ました。また少し時間をおいてから続編に挑戦します。

手に入れたテキストは次の三種類です。

江戸川乱歩著『少年探偵 大金塊』

(ポプラ文庫、2008年11月。カバー絵・挿画、柳瀬茂)

※巻末に「この作品は、昭和三十九年にポプラ社から刊行されました」とありました。ほぼ同じ装丁のハードカバー版が1964年8月に刊行されています。個人的には乱歩といえばこの表紙で一番馴染みがありますが、ハードカバー版は今では古本でしか手に入りません。

『文庫版 少年探偵・江戸川乱歩 第4巻 大金塊』

(ポプラ社、2005年2月。装丁、藤田新策。挿絵、佐竹美保)

※巻末に「本書は1998年10月ポプラ社から刊行された作品を文庫版にしたもの」とありました。ほぼ同じ装丁のハードカバー版が1998年に刊行されています。「文庫版」とありますが、現在ふつうに売られている文庫本(新潮文庫、中公文庫、……)よりかなり大きく、ハードカバー版を一回り小さくしてソフトカバーに変えただけの仕様になっています。

『江戸川乱歩全集 第13巻 地獄の道化師』

(光文社文庫、2005年8月)

※「暗黒星」「地獄の道化師」「幽鬼の塔」「大金塊」の4作品を収めています。「大金塊」の【解題】をみると、全集所収の本文は、月刊誌「少年倶楽部」(大日本雄弁会講談社)に昭和14年(1939)1月から翌15年2月まで連載された後、昭和15年2月に大日本雄弁会講談社から刊行されたもの(第2版)を底本とし、適宜、光文社版『少年探偵江戸川乱歩全集4』(昭和26年2月、5版)、光文社版『少年探偵全集4』(昭和36年12月)と対抗したことがわかります。また光文社版(S26)への収録時に、「新仮名とし(…)、漢字を大幅にひらき、送り仮名を送り、読点を増やしたほか、結末で終戦による社会状況の変化に対応した訂正がなされた」とありました(以上、解題721頁参照)。校異表をみる限り、光文社版(S26)がポプラ社版の直接の祖本となっているようですが、未見です。


全集版なら初出時に近いものが読めますが、ポプラ社のと見比べると、漢字の送りをのぞけば文章自体を変えている箇所は少なく、『青銅の魔人』のときほどの大きな違いは感じませんでした。今回は主にソフトカバーのポプラ社版(2005)で読み進めました。

今でいう漫画「名探偵コナン」に匹敵するような存在だったのだろうと思いつつ、また時間があるときに戻って来ようと思います。

2022年7月17日日曜日

【読了】江戸川乱歩著『青銅の魔人 私立探偵明智小五郎 』(新潮文庫 2022年刊行)

新潮文庫から、江戸川乱歩(えどがわらんぽ、1894年-1965年)の少年探偵団シリーズが出ていることに気がつきました。六七質(むなしち)氏の新しい格好良いカバー装画に惹き寄せられました。調べてみると、現在5冊刊行されていました。

『怪人二十面相 ―私立探偵 明智小五郎―』
(新潮文庫、2016年9月刊行)

『少年探偵団  ―私立探偵 明智小五郎―』
(新潮文庫、2016年12月刊行)

『妖怪博士   ―私立探偵 明智小五郎―』(2017年3月刊行)
『青銅の魔人  ―私立探偵 明智小五郎―』(2022年2月刊行)
『地底の魔術王 ―私立探偵 明智小五郎―』(2022年4月刊行)

10年近く前に、乱歩の文章のわかりやすさに感心し、少年探偵団のシリーズを一通り読もうと志したものの、3冊目迄(『妖怪博士』)で中断していました(ブログ2013年3月)。今回また初めから読むと、同じくらいで飽きが来そうだったので、未読の作品『青銅の魔人』を読んでみることにしました。

江戸川乱歩著
『青銅の魔人 私立探偵 明智小五郎』
(新潮文庫、2022年2月◇173頁)

新潮文庫の巻末に、『江戸川乱歩全集』第15巻(光文社文庫、2004年2月)を底本に用いたと明記していたので、同全集の解題(644頁)を参照したところ、全集の本文は、月刊誌『少年』(光文社)に1949年1月から12月まで連載されたのち、同11月に光文社「痛快文庫」の1冊として刊行されたものを底本とし、『少年探偵団全集⑤』(光文社、1955年2月、13版)と、『少年探偵団全集5』(光文社、1961年12月、初版)を対校に用いたと記してありました。

『江戸川乱歩全集 第15巻 三角館の恐怖』
(光文社文庫、2004年2月◇704頁)

また、光文社の1961年版について「内容的に重要な加筆・削除・訂正はない」が、「漢字をひらき、読点を減らしている」と述べ、これが昔から馴染みのあるポプラ社版(1964年)の底本になったと記してありました。新潮文庫版を開くと、慣れ親しんだポプラ社版とは明らかに字の送り方に違いがあって、大人向けに装いを改めた感がありました。なぜなのか疑問でしたが、これで解決しました。

新潮文庫版が乱歩の初稿に近いすがたを伝えているのに対して、ポプラ社版は乱歩の最終稿を伝えていると言えるでしょう。実際、ポプラ社版のほうが読みやすく、乱歩の推敲の跡が明らかなので、乱歩本人による最終稿として、ポプラ社版の価値は今なお高いと思いました。現在、手に入りやすいのは次の2種です。

文庫版 少年探偵・江戸川乱歩 第5巻 青銅の魔人』
(ポプラ社、2002年5月。画家 佐藤道明)

『少年探偵 青銅の魔人』
(ポプラ文庫、2008年11月。挿画 柳瀬茂)

柳瀬茂(やなせしげる)氏の挿画が一番馴染み深く、もともと1964年7月にポプラ社から「少年探偵江戸川乱歩全集4」として刊行されました。(このときは第5巻が『大金塊』でした。)

話はそこまで大層なこともなく、むしろ微笑ましさを感じさせるようなトリックで、軽めの娯楽として読み進めることができました。一気に全冊読もうとは思いませんが、とりあえずあと1冊『大金塊』まで読めば、初期の5冊を読んだことになるので、夏の間に読もうと思います。

2013年3月21日木曜日

【読了】江戸川乱歩 著 『少年探偵 妖怪博士』(昭和13年)

日本の推理作家
江戸川乱歩(明治27年〔1894〕10月-昭和40年〔1965〕7月)の

少年探偵シリーズ・第3作目
『妖怪博士』を読みました。

乱歩が44歳のとき、
『少年倶楽部』(昭和13年〔1938〕1~12月)に発表された作品です。



江戸川乱歩 著
『少年探偵 妖怪博士』
(ポプラ文庫〈江戸川乱歩・少年探偵シリーズ3〉平成20年11月)

 ※ポプラ社における単行本の初出は、
  ポプラ社〈少年探偵 江戸川乱歩全集2〉昭和39年7月。

  再録、ポプラ社文庫、昭和51年11月。
  再録、ポプラ社〈新少年探偵・江戸川乱歩3〉平成10年10月。
  再録、ポプラ社〈文庫版 少年探偵・江戸川乱歩3〉平成17年2月。

  (ポプラ社のホームページを参照しました。)


さて第3作目です。

やはり話の展開が、
多少強引かなと思わせるところはありましたが、
私の中ではぎりぎりOKなレベルで、
ふつうに楽しむことができました。


一番感心するのは、
少年向きの作品とはいえ、

75年前に書かれたとは思えないほど、
わかりやすく丁寧な、美しい日本語で書かれていることです。

推理小説も、
あんまり難しいと読むのに骨が折れますが、

子ども向けに書かれただけあって、
仕事の忙しい時期でも、なんなく読み終えることができました。


昭和10年代というと、
かなり昔のことのように感じられますが、

乱歩の文章を読むと、
それほど違いがあるようには感じられません。

確かに今とはいろいろ違う面もありますが、
古き良き昭和の面影を楽しむことができました。


2013年1月16日水曜日

【読了】江戸川乱歩 『少年探偵 少年探偵団』


江戸川乱歩 著 『少年探偵 少年探偵団』
(ポプラ文庫、平成20年11月
 初出、『少年倶楽部』昭和12年1~12月。
 単行本の初出、
 ポプラ社〔少年倶楽部 江戸川乱歩全集〕昭和39年8月。
 再録、ポプラ社文庫、昭和51年11月。
 再録、ポプラ社〔新 少年探偵〕平成10年10月。
 再録、ポプラ社〔文庫版 少年探偵〕平成17年2月)

 ※書誌は Wikipedia の「江戸川乱歩」の項目と、
  ポプラ社のホームページを参照しました。

江戸川乱歩(1894.10-1965.7)さんの
少年探偵シリーズ第2作目『少年探偵』を読みました。

乱歩43歳のときの作品です。


思いのほか楽しめた前作と比べると、
多少展開に苦慮しているような感もあり、

インド人への蔑視も不愉快で、
お世辞にも傑作だとは思えませんでした。


続編を求められるとは思わなかったところが、
予想外にヒットしたため、

色々と試行錯誤して書き上げた作品のように感じました。


でもそんな細かいことを気にせずに、
少年時代にもどった懐かしい気持ちで、

わくわくどきどき楽しむのが、
恐らく正解なのでしょう。


ところどころ、
なんか変だなと思いつつも、
あっという間に最後まで読み終えていたことも確かです、

一昔前の
日本語の美しさを味わえるのも、
乱歩ならではでしょう。


次回作はきっと、
嬉しい驚きを味わえるはずと思って、
次へと進みます。

2012年10月16日火曜日

【読了】江戸川乱歩 『少年探偵 怪人二十面相』

江戸川乱歩(1894 - 1965)が
41歳のとき(1936)に発表された
少年向けの探偵小説『怪人二十面相』を読みました。


江戸川乱歩 著
『少年探偵 怪人二十面相』
(ポプラ文庫、平成20年11月)
 ※巻末に「この作品は、昭和三十九年にポプラ社より刊行されました」とある。
  もともとの初出は『少年倶楽部』昭和11年1月から12月。


ポプラ社の「少年探偵」シリーズの表紙は、
小中学生のころ、学校の図書室でみた記憶が残っています。

しかし表紙のおどろおどろしい雰囲気が嫌で、
実際に読んでみることはありませんでした。


江戸川乱歩については、
高校のときにこれまた学校の図書室で、

渡部昇一氏の『発想法』(講談社現代新書)を読んでいたときに、
江戸川乱歩の興味深い話が出て来て、
強く印象に残ったのを覚えています。

しかしこのときも、
独特なオカルトのほの暗い雰囲気が苦手で、
読んでみようとは思いませんでした。


結局今まで、
乱歩を読む機会はなく、このまま
縁はないのかなとも思っていたのですが、

最近になって復刊されたようで、
懐かしい表紙はそのままに、
本屋の棚に見かけるようになったのに惹かれ、
1冊手にとってみたのですが、

「です・ます」調の美しく丁寧な日本語で、
大変わかりやすく書かれていることに感心し、

こんな文章が書けたらな、と思って読んでいるうちに、
どんどん惹き込まれ、楽しんで読み終えることができました。


トリック自体は、
今読むと若干稚拙かな、
と感じさせるところもありますが、

昭和11年に書かれたことを思えば、
驚くほど若々しい感性で、

今でも十分に読者を魅了する力のある
娯楽小説に仕上がっていると思いました。


今から86年前の子ども向けの作品が、

思いのほか美しく上品で、
なおかつわかりやすい日本語で書かれていたことを知り得たのは、
一番の収穫でした。


一気にシリーズ全部を読み通す必要もないので、
時折暇をみて、読み進めていこうと思います。


※wikipedia「江戸川乱歩」の項目を参照。

  翻译: