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2017年8月28日月曜日

【163冊目】Ouida, A dog of Flanders (Ladder Series Level 2)

やさしい英語の本、通算163冊目は、
IBCパブリッシング・ラダーシリーズの
レベル2(1300語レベル)の3冊目として、

イギリス生まれの小説家
ウィーダ(Ouida, 1839年1月-1908年1月)の
小説『フランダースの犬 A dog of Flandersを読みました。

ウィーダ32歳の時(1871年12月)に
アメリカの月刊誌
『Lippincott's Magazine
  of Popular Literature and Science 』
第9巻(1872年1月号 79-98頁)に掲載された作品です。


Quida
A Dog of Flanders

Retold by Roger Ahlberg
〔Ladder Series Level2〕
IBC Publishing,Inc. 2005年8月
12,470語

『フランダースの犬』は
アニメで有名な作品ですが、
子供の頃にまとめて観た記憶がありません。

調べてみると、フジテレビ系列のアニメ
『カルピスまんが劇場 フランダースの犬』
が放映されたのは1975年(1-12月 全52回)
私が生まれて数年後のことなので、

観ていた可能性もあるのですが、
物心つく前のことなので記憶に残っていません。

その後ちゃんと翻訳を読むこともないまま
大人になっていたのですが、

5年程前にふと思い立ち、
本当はどんな話なのだろうと、
全訳を読んでみることにしました(2012年11月)。

いくつか手に取ってみた上で、
雨沢泰(あめざわやすし)氏の偕成社文庫を気に入り、
読んでみたところ、

動物へのやさしい愛情だけでなく、
芸術(絵画)に対する筆者の深い理解が反映された作品で、
深く感動し、

いずれ原文のままでも
すらすら読めるようになりたい小説になりました。


  ***

やさしい英語では、
もともとそれほど長い小説ではないので、
あらすじの省略はほとんどなく、
それなりの充実感をもって読み通すことができました。

悲しいことばかりの続くはずなのですが、
不思議と暗さは少なく、
人は何のために生きるのか、
前向きに生きていくことの意味を考えさせられる作品でした。


翻訳は、
前に読んだ雨沢泰(あめざわやすし)訳をひっぱりだして来ましたが、
やはり滞りのない読みやすい訳文で、
英文の意味を取りにくいところを理解するのに役立ちました。


雨沢泰(あめざわやすし)訳
佐竹美保(さたけみほ)絵
『フランダースの犬』
(偕成社文庫、2011年4月)

翻訳はもう一点、
つぎに熟読する機会があれば、
野坂悦子氏の翻訳で読もうと思っています。


野坂悦子(のざかえつこ)訳
『フランダースの犬』
(岩波少年文庫、2003年11月)

雨沢訳は読みやすい分、野坂訳と比べると、
あっさりし過ぎているようにも感じます。

野坂訳はていねいですが、
日本語の流れも悪くないように感じています。


※第163冊目。総計1,566,783語。

2017年7月10日月曜日

【160冊目】H.G.Wells, The Island of Doctor Moreau (PR Level 3)

やさしい英語の本、通算160冊目は、
ペンギン・リーダーズのレベル3(1200語レベルの)の24冊目として、

イギリスの作家
ハーバート・ジョージ・ウェルズ
(Herbert George Wells, 1866年9月-1946年8月)の
小説『モロー博士の島』を読みました。

ウェルズ29歳の時(1896年4月:英国、同年8月:米国)に刊行されたSF小説です。


H.G.Wells
The Island of Doctor Moreau

Retold by Fiona Beddall
〔Penguin Readers Level 3〕
This edition first published by Penguin Books Ltd 2007
13,226語

まったく知らなかった作品ですが、
ウェルズの名が気になって調べてみると、

『タイムマシン』や『透明人間』などのSF小説で知られる
H・G・ウェルズの代表作の一つであることを知り、
読んでみることにしました。

『タイムマシン』も『透明人間』も、
書名を知るのみで読んだことがなかったので、
今回が初ウェルズということになりました。


  ***

翻訳を調べてみると、
意外にたくさん出ていました。

 ※藤本直樹編「H・G・ウェルズSF作品邦訳書誌」(中村融訳『モロー博士の島』創元SF文庫、1996年9月所収)をもとに適宜修訂を加えた。一色訳と西原訳を今回付け加えてある。


木村信次(きむらしんじ)訳
『モロオ博士の島』
(アルス〔アルス・ポピュラアー・ライブラリー 第10〕1924年10月◇243頁)


土屋光司(つちやこうじ)訳
『モロー博士の島』
(三邦出版社、1941年7月◇247頁)


宇野利泰(うのとしやす)訳
「モロー博士の島」
『世界大ロマン全集 第7巻 透明人間』
(東京創元社〔世界大ロマン全集7〕1956年12月◇384頁)
 ※「透明人間」「タイムマシン」「モロー博士の島」の計3編を収録。

 ⇒『H・G・ウェルズ短篇集 第3 モロー博士の島』
  (早川書房〔ハヤカワSFシリーズ〕1962年6月◇219頁)に再録。
   ※「ダイヤモンドをつくる男」 「ダイナモの神」
    「盗まれた肉体」 「蜘蛛の谷」
    「妖精の国のスケルマーズデイル君」
    「モロー博士の島」 の計6編を収録。

 ⇒『H・G・ウェルズ傑作集1 モロー博士の島』
  (ハヤカワ文庫、1977年11月◇297頁)に再録。
   ※同上の6編を収録。


一色次郎(いっしきじろう)訳
西村保史郎(にしむらやすしろう)絵
『モロー博士の島』
(偕成社〔名作冒険全集19〕1958年1月◇206頁)


西原康(にしはらこう)訳
小野田俊(おのだとし)絵
「モロー博士の島」
『少年少女宇宙科学冒険全集11 タイム・マシン』
(岩崎書店、1961年月◇214頁)
 ※「タイム・マシン」「モロー博士の島」の計2編を収録。


能島武文(のじまたけふみ)訳
『モロー博士の島 ―他二篇』
(角川文庫、1967年8月◇302頁)
 ※「モロー博士の島」「妖星」「イーピヨルニスの島」の3編を収録。


橋本槙矩(はしもとまきのり)訳
『改造人間の島』
(旺文社〔旺文社文庫〕1977年8月◇193頁)
 ※「改造人間の島」 「魔法の園」 「王様になりそこねた男」
  「怪鳥エピオルニス」の計4編を収録。

 ⇒橋本槙矩・鈴木万里(すずきまり)訳
  『モロー博士の島 ―他九篇』(岩波文庫、1993年11月◇339頁)に再録。
   ※「エピオルニス島」 「蛾」 「紫色のキノコ」
    「パイクラフトの真実」「ブラウンローの新聞」
    「故エルヴィシャム氏の物語」 「マハラジャの財宝」
    「デイヴィドソンの不思議な目」 「アリの帝国」
    「モロー博士の島」の10編を収録。


中村融(なかむらとおる)訳
『モロー博士の島』
(東京創元社〔創元SF文庫〕1996年9月◇238頁)


雨沢泰(あめざわやすし)訳
『モロー博士の島』
(偕成社文庫、1996年8月◇287頁)


中村融訳と雨沢泰訳を手に入れました。

中村訳は大人向けの手堅い訳、
雨沢訳は小学校高学年くらいからでも大丈夫な、
読みやすさ重視の訳文でした。

とりあえず内容を知りたい場合は、
雨沢訳で十分だと思いますが、

じっくり味わいたい場合は、
中村訳のほうを好まれるかもしれません。


  ***

やさしい英語で読んでみて、
あまり好きな分野ではなかったのですが、

英文自体はわかりやすく
あらすじを追っていくことができ、
それなりに面白く、
最後まで読み終えることができました。

最新の科学をテーマにした作品は、
時代の推移とともに、かえって古臭さを感じやすくなるようで、
もっと他の作品も読んでみたいと思わせる深い魅力は残念ながら感じませんでした。

ただまだ1度読んだだけですので、
今後読み返すうちに、
大人の寓話としての価値を見出だせるようになるかもしれません。

かの『フランケンシュタイン』と似た作品ともいえますが、
『フランケンシュタイン』ほど主人公の心の内面へ深く切り込んでいくことがないので、
その分読みやすい作品ではありました。

初ウェルズの感想はこんな感じです。


※第160冊目。総計1,512,173語。

2012年11月15日木曜日

【読了】ウィーダ著 『フランダースの犬』(雨沢泰 訳)


ウィーダ作/雨沢泰 訳
『フランダースの犬』(偕成社文庫、平成23年4月)
 ※表題作のほか「ウルビーノの子ども」「黒い絵の具」を収録。

イギリス出身の作家
ウィーダ(1839-1908)の名作
『フランダースの犬』を読みました。

ウィーダ33歳のとき(1872年)に出版された作品です。


同名のアニメが有名ですが、
通してみた記憶がなく、原作も読んだことがなかったので、
よい翻訳があれば読んでみたいと思っておりました。

最近手にとった
雨沢泰さんの翻訳がとても読みやすく、
この作品の魅力を存分に味わうことができました。


子どものころは、
悲しいお涙ちょうだいの物語は苦手で、
遠ざけていたように思いますが、

実際読んでみると、
芸術に対する瑞々しい感性が息づいていて、
芸術(絵画)に対する深い共感をもとに書かれた傑作であることがわかり、
これまでの見方を大きく改めました。


フランダース地方のアントワープ
(現在のベルギー西部の都市)で活躍した
画家ピーテル・パウル・ルーベンス(1577-1640)をめぐる
ネロとパトラッシュの悲しいお話は、

人間にとって芸術(絵画)とは何なのか、
深く考えさせられる作品でした。


子ども向けで、
こうした趣向の作品ってほかに思いつかないのですが、
いかがでしょうか。


2つの併録作品
「ウルビーノの子ども」「黒い絵の具」も、
絵画への深い共感無くして書ける作品ではなく、

たいへん興味深く読み終えることができました。


翻訳は、以下のものが目に入りました。

 村岡花子 訳(新潮文庫、昭和29年4月。〔改版〕平成元年10月)
  ※表題作のほか「ニュールンベルクのストーブ」を収録。

 畠中尚志 訳(岩波少年文庫、昭和32年8月)
  ※表題作のほか「ニュールンベルクのストーブ」を収録。

 矢崎源九郎 訳(角川文庫、昭和36年)

 松村竜雄 訳(講談社青い鳥文庫、平成4年5月。〔新装版〕平成21年10月)

 野坂悦子 訳(岩波少年文庫、平成15年11月)
  ※表題作のほか「ニュールンベルクのストーブ」を収録。

 高橋由美子 訳(ポプラポケット文庫、平成23年11月)

村岡訳・畠中訳・松村訳・野坂訳は手に入れました。

村岡訳・畠中訳は、訳文がやや古めかしく、
野坂訳は、逐語的で若干、流れが悪いように感じがしました。

邦訳で、ウィーダのまとまった著作集は出ていないようです。
いずれぜひ英語でまとめて読んでみたいと思いました。

  翻译: