「悪の力」というよりは、「悪の正体」を暴いていく過程のような本だった。
聖書や古典文学における「悪」の描かれ方、また姜さんご自身が体験してきた苦悩がベースになっている。
そういう意味で歴史的に人間が考えてきた、あるいは見てきた「悪」のさまざまな標本がみられる。
悪にも原因となる根源や 結果となる実態などもろもろの様相があるが、
一言でいえば、
「世界と自分への嫌悪が外側に転嫁したときに生まれる暴力や破壊行為です。
それは他者のみならず、自らも破壊していくのです。」
と理解。
「自分しか信じられない」という現代社会に顕著な導火線、
”個人主義”を増長していく資本主義の宿命に、それでも生き延びていくための知恵は何か?
(だから「悩む力」なのかな?そのうち読んでみたい)
古典文学に警鐘を鳴らし続けてきた作家たちを見ることができる。
夏目漱石が描いた「世間」に、姜さんは希望を見出している。
いつもながらの思索の深さに、知見の信頼感があった。