やはりこのシリーズ、面白い。
大森署管内でストーカー事件が発生。
事件の進展につれ、所轄、方面本部、刑事、警備など、警察組織内でそれそれの縄張り意識が表に出てくる。
さらにマスコミが外野から、ジャーナリズムなのかセンセーショナリズムなのか、批判精神をもって事件に絡んでくる。
物事の本質はどこにあるのか?
本当の合理性とは何か? 解決に向けた行動として。
予想外の問題が起きた時の対処の仕方は?
毎回、何かしら盲点が見つかり、どう対処するべきか?気づきがある。
銃器を持った立てこもり犯がいるという情報が間違いだと分かった時、
竜崎は、通常の組織を超えて即座に機動隊を撤退させた。
相変らず、彼の機敏な決断力、行動力にしびれますね。
「誰かの都合に合わせるのではなく、いかに本来の目的を効率よく達成できるかを考えるのが本当の合理化だ」
「警察上層部が考える合理化も、企業の合理化も似たり寄ったりだ」
ついに彼が資質を問われる監察を受けることになった時、本領は発揮された。
「一番大切なのは、組織を合理的に運用することだと思います。
その際に障害となるのは、縦割りの役割分担だとか、縄張り意識などです。
そういうものを排除して、柔軟に運用すれば、警察組織はもっと効率よく運用できるはずです」
言葉以上でなく、言葉以下でもなく、言葉通りが竜崎だ。
解説で、川上弘美さんが竜崎を「いっさい忖度しない人」と評している。
彼の言葉をそのままのメッセージとして受け取れるかどうかは、リトマス紙のように読者にも試される。
ストーカー事件を娘の「事案」にも持ち込んだところは、びっくりした。
忖度を美徳の一種と見るか、間違った行動の始まりと見るか、
そういう次元でないところにご本人の竜崎がいるところがこの物語の最大の魅力だ。