2022年9月29日(木)
富山県富山市 薬師岳(標高2926m) テント泊単独行 北アルプスの黒部源流域のやや離れたところにある薬師岳に登る最も便利な登山口が、折立登山口です。2003年に初めて雲ノ平を訪れた時以来何度か折立登山口を利用したのですが、すべて黒部源流域の雲ノ平や鷲羽岳、黒部五郎岳などを目的地にしていたので、すでに10回以上訪れたであろう黒部源流域にあっていまだに登頂していなかった薬師岳に、やっと登る機会に恵まれました。
雲ノ平や鷲羽岳などの黒部源流域を訪れるとき、薬師岳もついでに登るかどうかいつも考えていましたが、太郎平から往復で5時間ほど必要になるため、結局1日を費やしてしまうことになり、日程的にどうしても薬師岳は割愛することになっていました。そのため、薬師岳登頂は立山から縦走する時にしようとずっと考えていました。
今回、9月29日から10月2日までは天気が良さそうだったので、この縦走をやってみようと登山計画書を作成していたのですが、帰りのバスの時刻を調べていたらもはや実行不可能であることがわかりました。というのも、折立への登山バスは9月25日ですでに終了していたのです。シルバーウィークを過ぎると、公共交通機関はもう採算が取れないと考えているようですが、せめて紅葉がみられる10月上旬の土日ぐらいは運行してもらいたいものです。
となると、目的地を変えるかアプローチのルートを変えるかですが、天気予報では晴れそうなのは北アルプス北部だけだった(実際は見渡す限り晴れていましたが)ので、それほど広範囲で考えることはできません。表銀座縦走も考えましたが、すでに燕山荘のテント場は29日も30日も予約がいっぱいで確保することができませんでした。平日の木金が予約がとれないということは、9月最後の週末はかなり混雑することが予想されるので、できればメジャーな山域は避けたいところです。
ということで、いろいろと考えた結果、混雑しそうな土日は避けて、確実な晴天予報になっている9月29日と30日の両日で薬師岳に登って、土曜日となる10月1日にさっさと下山することにしました。せっかく北アルプスまで遠征するのに2泊3日というのももったいない気がしますが、テント泊フル装備で2000mを越える山に登るのは、2018年8月の白馬乗鞍岳から白馬鑓ヶ岳への縦走以来4年ぶりとなるので、体力の低下も考慮して短期でさっさと下山したほうが遭難リスクも低くなってよさそうです。
装備リスト
●アッパー
ドライレイヤ: ミレー ドライナミックメッシュ3/4シャツ
ベースレイヤ: マムート アタカソジッププルAF
ミドルレイヤ: マムート エクスカーションジップフリース
ソフトシェル: なし
ハードシェル: マムート コンベイ プロ GTX HS フーデッドジャケット
インサレーション: バーグハウス ラムチェマイクロダウンジャケット
グローブ: おたふく PU合成皮革手袋K-12
キャップ/ハット: マムート アドベンチャーベンチレーションハット
●ボトムス
ドライレイヤ: なし
ベースレイヤ: なし
ミドルレイヤ: マムート ソフテックトレッカーズパンツ
ハードシェル: マムート マサオライトHSパンツ
インサレーション: モンベル ULダウンパンツ
ソックス: ファイントラック メリノスピンソックスEXPレギュラー
シューズ: スポルティバ トランゴアルプGTX
ゲイター: マムート ゴアテックスゲイター
●ギア
バックパック: マムート クレオンクレスト65+L
ストック: レキ マイクロバリオタイタニウム
寝袋: モンベル ダウンハガー800 #1
マットレス: サーマレスト リッジレスト120
テント: アライテント Xライズ2
登山天気によると、朝夕は3度という予報だったので、夜間は氷点下になるだろうと予想して装備を準備しました。日中はそこそこ暖かいはずなのでシャツ1枚で行動できるはずですが、風は少し冷たい可能性もあるので、ポーラテックのワッフル状裏地のついたマムート アタカソジッププルAFをチョイス。少し寒い場合の保温着として、薄手フリースのマムート エクスカーションジップフリースをリストアップしました。ハードシェルは、軽量なマムート コンベイ プロ GTX HS フーデッドジャケットをレインウェア兼用として持参しました。さらに、停滞時の保温着には、バーグハウス ラムチェマイクロダウンジャケットを入れました。これは、今回初めて使うもので、おそらく未使用品もしくはほぼそれと同等の中古品をわずか7590円で手に入れました。中厚手のダウンジャケットですが、スペック的には結構ハイレベルなので、かなりお買い得でした。
ボトムスの方は、インサレーションにモンベル ULダウンパンツが加わったぐらいで、日帰り登山とあまり違いはありません。荷物が重いことと、高山への登山ということで、シューズは久しぶりにスポルティバ トランゴアルプGTXを持ち出しました。
ギア類ですが、氷点下まで下がることを考慮して、寝袋はモンベル ダウンハガー800 #1としましたが、雪山ではないのでマットレスはサーマレスト リッジレスト120にテントマットの組み合わせです。テントは、シングルウォールのアライテント Xライズ2にしましたが、これは失敗でした。外側は結露が凍り付いてしまいバリバリ、内側は結露が垂れて床を濡らしてしまうし、その上凍結までしてしまって撤収時に面倒でした。この時期はダブルウォールテントにしたほうが暖かいし使い勝手もいいので、シングルウォールはやめた方がいいですね。
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9:35 駐車場を出発します。今日は薬師峠キャンプ場までの行動なので、この時間でも十分余裕があります。
久しぶりの薬師岳登山口の道標を通過します。
確か左手にある小屋に登山届提出用ポストがあったはずという記憶をもとに立ち寄ってみたら、なんと登山届は太郎平小屋で提出してくださいとの注意書きがあり、ポストはありませんでした。どこに行くにしてもどうせ太郎平小屋前を通過するので、太郎平小屋で提出するのは何も問題ないのですが、遭難があった場合に登山届を確認する作業を山小屋従業員に任せるのでしょうか? それとも富山県警の救助隊員が常駐するようになったのでしょうか。なにか釈然としないものを感じましたが、まあそういうことならということで、登山届の提出は保留のまま歩き始めました。
このルートは、初めから結構な急登が続きます。昔は結構荒れていたり、段差がめちゃくちゃ大きいところがあったりして大変だった記憶がありますが、だいぶん整備されたようで丸太の階段ができていたりして歩きやすくなっていました。
こういうところも、階段があるのとないのとでは疲労度がだいぶん違います。
途中で赤く色づいた木を見つけ、秋を実感しました。
10:56 出発して1時間近くが経ったので休憩したかったのですが、なかなか休憩適地が見つからず、よさそうな場所を探しながら登っていくうちに1時間半近くになってしまいましたが、ようやく休憩によさそうな大きな木の根がある場所を見つけて、大休止をとりました。標高1680m地点になります。
久しぶりのテント泊フル装備がなかなか身体に堪えます。装備重量は水なしで約16㎏だったので、2リットルの水を含めると約18㎏です。20㎏を越えていないだけましですが、4年ぶりの重装備なので体が慣れるまでしばらくは実際の重さ以上の重荷と感じそうです。
15分の休憩をとり、再び歩き始めてすぐに、巨木の門を通過しました。これも記憶にあります。左は杉だと思いますが、右の樹種はよくわかりません。おそらくツガかトウヒだろうと思います。
11:35 ヒノキの巨樹の下を通過します。標高1800m地点です。この木の下には確かアラレちゃんのイラストが描かれた看板があったような気がしますが、どうやら撤去されたのか、劣化して処分されたようです。ちなみに、このヒノキは幹周が7mぐらいありそうな巨樹ですが、天然記念物のような指定は何もされていないみたいです。登山口にも幹周4m以上ありそうな巨樹がありますが、そちらも無指定みたいで、富山あたりでは特に珍しくもないのかもしれません。
登山道の地面が大きく掘れた場所までくると、前方に空が見え明るくなってきたので、1869.9三角点が近くなったのがわかりました。
11:52 予想通り、大きく掘れた場所を登りきると、ベンチが並ぶ場所に出ました。ここが三角点のある場所です。ヤマケイオンラインで登山計画をたてたとき、標準コースタイムの2割増しで登山口から休憩なしで1時間半かかることになっていましたが、実際には休憩ありとはいえ2時間20分かかってしまいました。15分休憩を含めないでも2時間を超えてしまっているので、なんだか体力が極端に落ちてしまったみたいでがっかりですが、このコースタイムもどういう設定なのかわからないので、あまり気にしないほうがよさそうです。そもそも標高差500mを1時間半って、かなりの健脚でないと難しいレベルです。普通は、1時間300mぐらいだと思います。
とりあえず小腹が空いたので、行動食を食べました。いつもの一本満足バーの、ベイクドナッツという種類です。
三角点のベンチからは、薬師岳が良く見えました。
薬師岳山頂は、中央左側のピークです。
北方遥かな稜線の向こうに少しだけ頭をのぞかせているのは、おそらく奥大日岳だと思われます。
12:08 到着したときは数人が休憩中でしたが、いつの間にか誰もいなくなった三角点で15分の休憩をとった後、出発しました。
三角点からは緩やかな登山道をたどり、1934ピークを過ぎるといったん鞍部に向けて下ります。鞍部の先にある森の奥に広がる草原のようななだらかな尾根に、登山道が伸びているのが見えました。
鞍部からの登り返しを無心で歩きます。この森を抜けてしまえば、あとは展望の広がる草地の尾根道なので、今はただ辛抱するだけです。
12:54 ようやく森を抜けて、展望の広がる場所に出ました。登山道も石畳の道になり、少し歩きやすくなりました。とはいうものの、下に敷いているのが玉石なので、滑りやすく凹凸もあって石畳にしては歩きにくい妙な登山道です。こんな山の上でなぜ玉石が敷かれているのかも謎です。常願寺川の河川敷から空輸でもしたのでしょうか。
13:21 三角点から歩き始めて1時間が過ぎたので、そろそろ休憩したいところです。記憶ではこのあたりで登山道沿いにベンチが設置されていたはずですが、いつまでたってもベンチが見つかりません。なので、あきらめて階段に座って休憩することにしました。標高2320m地点です。一応、上下を確認して、見える限り誰も来ていないのを確認したので、少なくとも5分ぐらいは通る人はいないはずです。
ランチをまだ食べていなかったので、ここで急遽ランチタイムとしました。といっても、高速道路のSAにあったセブンで値引き販売されていたおにぎりです。
そしてもう一つ。
13:59 ランチ休憩をとった場所から20分ほど登ったところが、五光岩ベンチでした。この手前にもベンチがあったので、階段の途中で休憩などしなくても、もう少し歩けばベンチに座ってゆっくり休憩ができたのですが、どこにベンチがあるのかわかっていなかったので仕方ありません。せっかくなので、五光岩ベンチでも小休止をとりました。
谷を挟んだ向かい側に五光岩が見えていましたが、こうしてまざまざと眺めたのは初めてかもしれません。岩壁に白い人影のようなものが見えていますが、あれが薬師如来像に見えるとか、そういう言い伝えでもあるんでしょうか。
登山道の先の方を見ると、なにやら三角形のものが見えました。目を凝らしてみると、太郎平小屋の建物が見えていました。出発してからすでに4時間半が経っていますが、ようやく山小屋が見えるところまで登ってきたというわけです。この距離ならあと40分ぐらいで着けそうです。
五光岩ベンチを出発するときに薬師岳を見ると、山頂に雲がかかっていました。しかし、今日はテント場で行動はおわりなので、雲がかかろうとガスが出ようと関係ありません。雨さえ降らなければOKです。
小屋の手前にある登りがちょっとつらそうですが、距離はあまりないのですぐに登り切れそうです。
太郎平まで0.5㎞の道標を通過します。あと500mで終わると思うと、再び力が湧いてくるようです。
小屋の手前の少し傾斜のきつい区間は、けっこう荒れていて歩きにくい状態でした。このあたりも早くきれいに整備されてほしいものです。
15:04 太郎平小屋に着きました。五光岩から太郎平小屋までは、登山計画の予定通り1時間で着いたので、登山口から三角点まで1時間半というコースタイムが一般的ではないと考えたほうがよさそうです。
ここはフラットで広く、ベンチやテーブルもたくさん設置されているので、5~6人が休憩しているぐらいでは混雑感はありませんでした。
とりあえず、庇と横壁のあるベンチで休憩をとりました。昔はこういう場所はなかったのですが、庇のあるベンチは雨の日に助かります。
15:10 休憩はそこそこにして、テント場に向かいます。
太郎平小屋から緩やかに登る木道を辿ります。
薬師峠キャンプ場が見えました。心配していたような混雑した状況ではなく、だいぶん余裕があるようで安心しました。
15:33 キャンプ場に着きました。よさそうな場所を探してすこしうろついてみましたが、どうやら受付小屋前のあたりが一番平坦に近くてねじれも無さそうです。ということで、登山道のすぐそばで、水場やトイレに行く道の脇になってしまうというデメリットはあるものの、気持ちよく寝られる地面の状況であることを最優先して、テントを張る場所を決めました。幸い混雑していないので、テント横を歩く人の足音で寝られないということはなさそうです。
グランドシートを敷いて寝転がって、傾斜の向きや角度を確認してからテント設営です。
テントを広げ、その上にポールを伸ばします。
ポールをスリーブに通して立ち上げれば完成です。
グランドシートは四隅のループをテントポールに引っ掛けて、ペグ打ちを省略しました。天気予報では風速はかなり弱そうなので、この程度で大丈夫だろうとの判断です。
テント本体も、ペグ打ちではなく、四隅の細引きを石に引っ掛けて固定する方式にしました。
16時20分になってもテントの数はあまり増えることは無く、今日は静かなキャンプ場になりそうです。幕営料金は、1人1000円でした。水場とトイレは徒歩1分もかからない距離で、水場の水量は豊富でした。生水をそのまま飲用可能だそうですが、冷たいので生では飲みませんでした。トイレは簡易水洗できれいでした。北アルプスのテント場は値上げされて2000円かかるようになったところも多いのですが、ここはこの設備で1000円なら良心的といえそうです。
17時前になり、食事の準備にとりかかりました。メニューは、アルファ米にフリーズドライカレー、シジミとワカメのスープです。
アルファ米のパックにそのままカレーを入れて食べれば、クッカーを汚すことなく食事ができるので、もうながらくこのスタイルです。山では極力洗い物をださないほうが手間と時間とゴミを減らすことができます。
19時過ぎには寝袋に潜り込みましたが、21時頃寒さで目が覚めました。寝たときにはまだそれほど寒くなかったのでシャツにフリースを着ただけで寝ていたのですが、さすがに冷え込んできたようです。テントの外にぶら下げていた温度計を見ると、なんと氷点下2度でした。空を見ると、満天の星空が広がっていました。
とりあえずダウンジャケットとダウンパンツを着て寒さ対策をしたあと、カメラと三脚をもって、星景写真の撮影に出かけました。疲れているので止めようかという気持ちも少しあったものの、明日の夜晴れるという保証はないので、チャンスは活かさないと望む写真は撮れません。
太郎平のほうへ登っていくと、うまい具合に天の川が木道の延長線上に伸びていて、それなりに満足のいく星景写真が撮れました。かれこれ2時間ほど撮影に費やしてからテントに戻り、再び寝袋に潜り込むと、いつの間にか眠りに落ちていました。
つづく。
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