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2012/05/29

ドライレイヤー の鍵は「ポリプロピレン」

一部の高山を除き、すっかり雪山シーズンは終了です。


ところで、このGWは天候の急変による遭難が相次ぎました。白馬岳での遭難事故は、しっかりした装備を持っていたにもかかわらず、防寒着を着るタイミングを逸したことに原因があったようですが、実際問題、天候の急変時に着替えるという作業はかなり難しいと感じます。特に、晴天から突然雨になり、風が吹いたり気温が急激に下がった場合が問題です。


晴天時の登山は、当然汗をかくので薄着になります。そういうときに突然雨に降られると、行動着の上に直接レインウェアを着ることになります。その後雨が降りながら気温が下がるか、または雨とともに風が強くなった場合、レインウェアを脱いでフリースなどを着るということがなかなかできません。なぜなら、レインウェアを脱いだ瞬間に体はびしょ濡れになり、その上風に吹かれて一気に体温が下がることになってしまうからです。風が強いと、着替えの間にレインウェアなどが飛ばされてしまうかもしれないという恐怖感もあります。もしも山小屋までの距離がそれほどでもない場合は、多少無理してもそのまま山小屋まで行ってしまおうと考える人が多いと思われます。しかし、その結果、低体温症になり命を落としてしまってはどうしようもありません。


であれば、やはり行動着としてある程度保温性のあるミドルウェアを着ておく必要があります。万一、突然雨に降られた場合、レインウェアが雨と風を防ぎ、ミドルウェアで体温を維持できれば、遭難の可能性はぐっと低くなります。しかし、そのためにはベースレイヤー(ドライレイヤー)が汗をためにくく、汗冷えを起こさないドライ性能が不可欠です。



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PARAMOUNT TANK

雪山を始めて以来、何種類かのアンダーウェアを試してみましたが、もっとも優れていると感じたのはポリプロピレン100%のアンダーウェアでした。購入したのは、THE NORTH FACEのアンダーウェア 「NT30153 PARAMOUNT TANK」です。この商品は、すでにWEBの商品ラインナップから消えているので、おそらく昨シーズンのものだと思われます。ポリプロピレン100%の繊維をメッシュ状にした生地で、これ自体は保温性能はほぼないと思います。しかし、汗をかいたという感覚をほとんど感じることがないため、寒いと感じることはありませんでした。

<訂正>ラインナップから落ちていると思ったのは間違いで、アンダーウェアのカテゴリではなく、シャツ・カットソーのカテゴリーに掲載されていました。なので、2013年時点でも販売中の商品です。


Hybrid PP L/S Zip

PARAMOUNT TANKをドライレイヤーとして、ベースレイヤーにマーモットのHYBRID PP L/S ZIPというシャツを合わせました。このシャツもポリプロピレンを35%使用しています。単に混紡しているというのではなく、汗をかく内側にポリプロピレンを使っているという凝った生地です。メーカーの説明によると、疎水性に優れたポリプロピレンを体に接する内側に使い、外側にポリプロピレンよりもやや水分を含みやすいポリエステルを配することで、体がかいた汗を衣服の外側に効果的に排出することができるとのことです。


ポリプロピレンは、化学繊維の中でももっとも水を含みにくい性質があるそうなので、直接肌に触れる部分に使うとドライ感が持続するらしく、ドライ感が重要な登山用のアンダーウェアに適した素材のようです。かつては、染色しにくいなどの欠点があってあまり利用されていなかったようですが、最近そのあたりの欠点が克服されて使われるようになってきたようです。


2012年5月の立山ではこの組み合わせで行動していましたが、すこぶる快適でした。立山を縦走した日でも、テント場を出発した時点で、PARAMOUNT TANK+HYBRID PP L/S ZIP+フリースという服装で大走りを登りましたが、途中でフリースを脱ぐこともなく、しかし決して暑さを我慢しながらというわけでもなく稜線まで登りきりました。気温はそれほど低くはなかったのですが、大汗をかいてべたべたに濡れるということはありませんでした。


その後、富士ノ折立への登り途中でアラレに降られて、フリースの上からハードシェルを着て、そのまま登り続けました。今までだと、そんな格好で登ると大汗をかいて大変だったのですが、このときは不思議なほど汗をかいた感覚がないままでした。その後、一ノ越に下りるまでそのままでしたが、汗や暑さで不快感を感じることはありませんでした。手袋はいつも0度ぐらいまでしか使えない薄手の組み合わせのままだったので、気温も氷点下にはなっていなかったはずです。







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2012/05/25

テント泊用マットレスの比較

テント泊で必要不可欠なのがマットレス。地面の凹凸や、小石などの突起による不快感をやわらげてくれるだけでなく、地面からの冷えを防いで快適な睡眠を提供してくれる大切なツールです。


僕がテント泊用に初めて購入したのは、エアマットでした。すでに10年以上前のことですが、モンベルのコンパクトマットレスという商品名で、息を吹き込んで膨らませるビーチマットのようなタイプです。長さは180cm。


モンベルエアパッド180
現在のU.L.コンフォートシステム エアパッド180 のルーツにあたる商品だと思います。この写真は現行品です。


なぜこれにしたかというと、一番寝心地がいいからです。当然といえば当然ですが、膨らませれば厚さは8cmぐらいになりますから、少々の石や地面の凹凸はまったく気になりません。北岳山荘のテント場で初使用してから、砂利だらけだった槍平山荘のテント場、大きな石が敷き詰められた状態の槍ヶ岳山荘や涸沢のテント場でも、すこぶる快適に眠ることができました。少なくとも、3シーズン用のマットレスとしては、もっとも快適なタイプだといえます。


しかし、宿命的に空気漏れという弱点を常に心配しなければいけません。そしてその時は突然やってきます。エアの抜けたエアマットほど役に立たないものはありません。リペアキットが付属していても、どこに穴が開いているかなんて、膨らませて水につけてみないと簡単にはわかりませんから、山の上ではあまり役に立ちません。エア漏れが山行最後の日ならいいのですが、山行初日に起こったらその山行は苦行と同じです。そういうわけで、機能しているときと機能しなくなったときのギャップが著しいので、オートキャンプならいざ知らず山で使うのにはあまり適していないと感じます。


エアマットのもうひとつの弱点は、寒さに弱いということ。秋の山行で冷え込んだ日は、マット内の空気も冷えてしまうので、背中からじんわりと冷たさが伝わってきます。そしてそれがなかなか解消しません。最近のものは少し改良されてよくなっているのかもしれませんが、中で対流が発生し得る程度の空間があるエアマットは、断熱性能の点では弱いといわざるを得ません。


弱点とはいえないまでも、息でこのマットを膨らませるのはそれなりに大変です。空気の薄い2500mレベルのテント場だと、途中で休憩を入れながらでないと続きません。小型の手押しポンプでもあればまだましかもしれません。また、エアマットのくせに重量が約500gもあるというのもなんだか納得できません。パンクに対する強度を保持するためにどうしても厚い生地にする必要があるのでしょうが、それにしてもという感じです。





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次に購入したのが、サーマレストのProLiteという自動膨張式のマットレスです。エアマットレスにはこりごりとはいえ、あの寝心地は忘れがたいものがあります。一度、いわゆる銀マットを使ったことがありますが、ほとんどクッションらしいやわらかさがなく、とても寝苦しい思いをしました。厚さは8mmぐらいあって、けっこう厚手のタイプだったのですが、板状のマットは厳しいものがあります。というわけで、エアマットの快適性を備えつつ、パンクしても内部のウレタンフォームである程度のクッション性能と断熱性能を確保できる自動膨張式のマットレスを選んだわけです。


「ProLite」
ProLite
現行品は、寝るのに不必要な四隅の角がカットされるなどして、より軽量化されています。


結論から言えば、いまのところもっともスリーピングマットとして適しているのが、この自動膨張式マットレスではないかと思います。僕が持っているのは長さ120cmのもので、付属のスタッフサックに収納すれば500ml缶より一回り太い程度の大きさになるので、バックパックの中に難なく収めることができます。重さも300g強なので、なんとか許容範囲です。


寝心地は、エアマットほどではないにしても、快適です。適度な弾力があり、横向きに寝ても肩や腰骨が痛いということはありません。断熱性能もけっこうよくて、3シーズンで使う限りでは地面からの冷えを感じたことはありません。構造的にはエアマットのようなものですが、エアマットほど膨らまないしウレタンの芯材が入っているためか、かれこれ10年近く使っていますが一度もパンクしたことはありません。






ところが、雪山でのテント泊では、さすがに断熱性能が追いつかないという事実が発覚したのです。厚さ2.5cm、暖かさ指数2.2のProLiteは、雪の上での使用には不十分でした。メーカーも3シーズン用とうたっていますし。雪上テント泊で使うのであれば、厚さ3.8cm、暖かさ指数3.8のProLite Plus以上でないとだめみたいです。しかし、ProLite Plusになると収納サイズも大きくなるし重量もかさみます。装備が増える雪山では、重量・容積の増加はできるだけ避けたいところです。


「RidgeRest SOLite」
リッジレストソーライト
そこで、雪山専用にサーマレストのリッジレストソーライトを購入しました。クローズドセルと呼ばれる板状のマットレスなので、パンクの心配はありません。長さ122cmのスモールサイズは、重さ260gと非常に軽量です。表面に凹凸があり銀マットよりも遥かにクッション性があります。また、表面にアルミ蒸着されているので、暖かさ指数はProLiteよりも優秀な2.8です。問題は容積が格段に大きくなってしまうことですが、逆にバックパックの外にくくりつけることができるので、バックパック内部はかえって余裕ができました。バックパックの底部につければ、荷物を降ろしたときに自立してくれるので、その意味でも助かります。レインカバーをつけようとすると厳しいことになりますが、雪山なので雨の心配はほとんどしなくてすみます。


使用してみた感じは、寝心地はProLiteに及ばないものの、寒さに関しては問題なしでした。寝心地も、下が雪ということもあってとくにごつごつした感じはなく、初日こそ多少気になったものの、2日目からはほぼ慣れました。それでも、2時間に一度ぐらいのペースで目が覚めたので、やはりあまりいい寝心地ではなかったのかもしれません。しかし、軽量でパンクの心配がなく、断熱性能もいいとなると、雪山で使う場合はリッジレストソーライトのほうが適しているといえるかもしれません。ただし、表面のアルミ蒸着は、わずか1度の使用で凸部がかなりはげてしまいました。凹部は簡単にはがれることはないでしょうから、極端に保温性能が落ちることはないと思いますが、もう少しなんとかならないものかと思います。









「ProLite Plus」
ProLite Plus
ということで、3シーズン用には自動膨張式ProLite、雪山にはリッジレストソーライトがお勧めですが、雪山でもとにかく快適性重視であれば、厚さ3.8cm、暖かさ指数3.8のProLite Plusという選択肢もあります。ただし、重さは430gと重く、収納サイズもやや大きくなります。なお、長さは120cmで十分です。どうせテント内では荷物を出したバックパックの扱いに困るだけなので、足元に敷くか、足を突っ込んで寝れば邪魔にならず役立ちます。





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2012/05/22

2012となみチューリップフェア

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5月3日、立山からの帰り道に『となみチューリップフェア』に立ち寄りました。



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駐車場代400円、入場料1000円と、やたら金がかかりますが、会場内のチューリップ畑は見事でした。写真を撮りながらぐるりと一回りすると軽く3時間ぐらい経っていたので、ちょっとした観光にはいいかもしれません。


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最後に小腹が空いたので、富山のB級グルメだというシロエビ丼というのを食べてみました。



シロエビ丼
子供用茶碗に軽く一杯程度の分量で、しかも冷えていて500円。ふざけた商売しやがってと思いましたが、味は悪くなかったです。次回、富山に行ったときは、ちゃんとしたシロエビ丼を食べてみたいと思います。




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2012/05/19

立山室堂東奔西走: 立山その4 『大展望にミトレる』

2012年4月29日~5月2日 立山 3泊4日単独テント泊




4月30日の夜は、オヤジの騒がしさよりも立山から吹き降ろしてくる強風でテントがばたつく音のほうが激しい状態でした。5月3日と4日は曇りの予報が出ていましたが、まさか天気も早めに下り坂なのかと気になっていました。しかし、天気予報は珍しく当たったのでした。


3:00 時計のアラームで目覚めて、通気穴から外を眺めてみると、空にはばら撒いたかのような無数の星々が輝いていました。そういえばあれほど荒れ狂っていた立山おろしも、すっかりやんでいます。これは絶好の星景写真のチャンスです。


まずは熱々のカフェオレを飲んで、体に熱を蓄え、寝ぼけた脳みそを糖分でたたき起こします。風のない穏やかな天候だったので、ダウンウェアの上下を着たままカメラと三脚をもって外に出てみました。まったく寒くありません。


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天の川
上を見ると、なんと天の川がまるで虹のように弧を描いて浄土山から別山に向けて夜空を流れています。肉眼でもはっきりとミルキーウェイを見ることができます。これほど美しい星空を見たのは、これがはじめてです。


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天の川2
今日はこのまま数カットは撮れそうだと思っていたら、なんと午前4時には空が明るく写るようになってしまいました。肉眼ではまだまだ夜の星空なのですが、ISO1600や3200で撮影すると、東の空が明るくなっているのが如実に出てしまうのです。


しょうがないので星景写真撮影は切り上げて、テントに戻って朝食にしました。いつもなら1食分残っているマルタイラーメンにするところですが、実は昨晩は麻婆春雨三人前を一人で食べてしまったので麺類はさすがに食べる気になれず、荷物を軽くするためもあってレトルトカレーの朝食にしました。


奥大日岳の朝
5:20 朝食後のお茶をゆっくり楽しんだ後、外に出てみるとちょうど奥大日岳の山頂に朝日が当たり始めたところでした。こんなにいい天気なら剣岳のピークが朝日で赤く染まるところを見たかったなあと思いましたが、それは次回のお楽しみです。


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GPSマップ浄土山
6:20 さすがに2日分の疲れがたまっているらしく、体が重いし足もつらいという状況で、歯を磨いたりトイレに行ったりしながらのんびりと出発準備をしていたら、いつの間にか1時間もかかってしまいました。今日の予定は、浄土山と龍王岳に登って一ノ越経由で戻ってくるというもの。最終日だし、無理はしないでゆったりと楽しもうと思います。


雷鳥荘下から
テント場から雷鳥荘へは夏道ルートではなく管理小屋の裏の斜面を直登します。踏み跡が付いているので踏み抜くこともなく歩きやすい状態でした。


地獄谷
みくりが池へ行く途中にある地獄谷の展望台によってみると、地熱で雪がまったく積もっていない地獄谷の様子がよく見えました。背後の奥大日岳もくっきり鮮やかでした。


室堂ターミナル
7:47 室堂ターミナルに到着です。まだ始発のバスが着く前だったのか、観光客の姿もなくとても静かです。


室堂
立山上空には、すっかり明るさを増したまばゆい太陽が光り輝いて、静かな室堂の朝を透明な光で包み込んでいます。


室堂山荘
8:03 広い雪原を横切って室堂山荘近くまで来ると、山荘の前にテーブルとベンチが並んでいるのが見えました。ひとまずここで休憩です。


浄土山のスロープ
ベンチから浄土山を眺めていると、右から左へと登山者やスキーヤーが歩いて行きます。みんな一ノ越方面を目指しているようで、だれも浄土山のほうへ行く人はいません。正面に広がる広大なスロープは、ただただ白く遥か先のスカイラインへと続いています。


室堂俯瞰
15分ほど休憩して、浄土山のスロープを登り始めました。しばらくたってから後ろを振り返ると、いつの間にかけっこうな高さになっていました。遥かかなたにアリンコのような登山者たちが雪原をちまちまと歩いているのが見えます。その中の一人がどうやらこちらに登ってきているらしく、仲間ができたようでちょっと安心しました。


浄土山のピークを見上げる
8:50 浄土山のピークが左手に見えるようになってきました。このあたりから直接取り付くというのもありかもしれませんが、浄土山の肩口から薬師岳方面の展望がいいようなので、ひとまず夏道に沿って登っていきます。


果てしない斜面
だらだらとした斜面を登っていると、まるで斜面が延びていくような錯覚にとらわれます。もう少しで登りきるように見えて、行けども行けども斜面は終わりません。やっと地平線に着いたと思ったら、その先にはまた新しい地平線があるのです。そういえば、ミスチルの曲でそんな歌詞があったなあなどと思いながら、できるだけ何も考えないようにして、無心で足を交互に出し続けていました。


振り向けば剣岳
息が切れて立ち止まり、振り返ってみると剣岳が見えていました。


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展望1
9:28 ようやく長い斜面を登りきって浄土山の肩に立ってみると、目の前に北アルプスの大展望が広がっていました。


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展望2
右端に薬師岳、その左奥に黒部五郎岳、そのまた左奥に笠ヶ岳。昨日雄山頂上から見たのとは全然違う鮮明さで、青空の中にくっきりと浮かび上がっています。


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展望3
笠ヶ岳のさらに左手には、おそらく水晶岳と思われるピークも見えています。別名黒岳と言われるのが納得できるその姿。そして、さらに左奥に見えているのが槍ヶ岳と穂高連峰。あまりのすばらしさにしばし呆然と立ち尽くしてしまいました。


浄土山の急斜面
9:50 20分ほど写真を撮ったり眺めたりしながら休憩をとって、浄土山に取り付きました。夏道のある斜面は大きな一枚バーンになっており、そこそこ急傾斜ですがデブリの跡もなく、雪崩の心配はあまりなさそうです。休憩地点から斜面を斜めにトラバースしながら登っていきます。


先行するボーダー
先行するボーダーは斜面を直登しており、そのトレース下まで来たところで、ステップを拝借させてもらうことにしました。


奥大日岳を望む
きつい斜面の向こうに、奥大日岳が顔を覗かせていました。






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10:25 浄土山頂に到着です。地図上の山頂はもう少し龍王岳に進んだあたりにありますが、石積みの記念碑のようなものがあったので、とりあえずここが事実上の山頂という感じです。


浄土山から針ノ木岳
東側、一ノ越の鞍部の向こうに見えるのはおそらく針ノ木岳でしょう。信州側は雲が覆っていますが、後ろ立山連峰とそれに続く山嶺にせき止められて、雲は立山側には流れ込んできていません。


浄土山から立山
北側正面には、まるで衝立のように立山がそびえています。


浄土山から別山と剣岳
立山の左手奥には別山と剣岳の姿も見えます。


雲海
早めの昼食がてら行動食を食べていると、いつの間にか針ノ木岳が雲海に飲み込まれ始めていました。黒部湖を越えて雲がこちらに流れてくるようなら、午後から天候が崩れるかもしれません。


11:19 天候が崩れるといやなので、休憩を切り上げて出発しました。


剣岳上のレンズ雲
本当の浄土山山頂あたりから振り返ると、ちょうど剣岳の上空に巨大なレンズ雲が出現していました。どうやら本当に天候が崩れるようです。


五色が原の雲
浄土山と龍王岳の間の稜線からは薬師岳方面もよく見えましたが、五色ヶ原に雲がまとわりつき始めており、すでに荒天の予兆が見え始めていました。


龍王岳
12:03 龍王岳の手前にある、一ノ越方面への分岐路まで来ました。天気はまだしばらくは問題なさそうですが、龍王岳へ登頂していると往復で軽く1時間は使いそうな雰囲気です。とりたてて登りたい山というわけでもないので、今回はパスしてテント場に戻ることにしました。


一ノ越への下り
一ノ越への下山ルートは、途中にクラックがあったり、ときどき大きく踏み抜いたりしてあまり気持ちのよくない斜面でした。


一ノ越上で見た雷鳥
途中の岩の上に雷鳥を発見し、カメラを持ってじりじりとにじり寄っていくと、ほんの3mぐらいまで近づくことができました。最初知らん顔していた雷鳥ですが、そのうち『こいつ何者だ?』とでもいいたげにこちらを一瞥したあと、岩から下りて飛び去っていきました。


一ノ越を流れるガス
一ノ越近くまで下りてくると、面白い光景に出会いました。黒部側から雲があふれてきて、一ノ越の鞍部を越えて立山側に雲が流れ込んでいました。まるで鍋の注ぎ口から静かに水があふれているような感じです。


ガスの中へわざわざ突っ込むのは嫌なので、一ノ越山荘まで行かないで、途中から室堂方面に直接下り、そのまま昨日通ったルートをたどってテント場まで帰りました。


ガラガラのテント場
13:30 テント場につくと、隣にあったオヤジ達のテントはきれいさっぱりなくなっていました。それだけでなく、かなりの数のテントが撤収されており、すっかりがらがらのテント場になっていました。



日が照っているうちに濡れた靴などを乾かそうとしたのですが、3時近くにはもうすっかり曇り空になってしまい、風も吹き始めたのでした。


その日の夕方から風が強まり、やがて雨も降り始めました。日没後、風はますます強くなり、台風並みの強風と化していました。立山から吹き降ろしてくる風でテントは猛烈にゆがみ、そしてばたばたと大きく揺さぶり続けられました。やっぱり、テント設営時に手抜きをしないで、もっと雪面を掘り下げるか雪壁を作っておくべきでした。と悔やんでも後の祭りです。


真夜中に一度目が覚めましたが、やたらフライシートがばたばたと大きな音を立てていました。雨がやんだタイミングでトイレに行き、戻ってきたときにテントをチェックすると、なんと竹ペグが3箇所引き抜かれた状態になっており、フライシートの一部が風にあおられて大きな音を立てていたのでした。寝る前にきちんと雪を盛って抜けないようにメンテナンスしておくべきでした。真っ暗闇の中、ヘッドランプの明かりを頼りに、ショベルで雪を堀り下げて竹ペグをしっかり埋め込んでから、再びテントの中にもぐりこみました。





5月2日の朝、明るくなってからも風は相変わらずで、雨も降ったりやんだりを繰り返しています。今日は下山するだけなので、とりあえず、雨が止むのを待つことにしました。朝食を食べ、お茶を飲み、ゆっくりとテント内を整理して荷物をつめて、あとはテント本体とフライシートをパッキングすればOKという状態になった頃、風はあいもかわらず台風のような強さでしたが、うまい具合に雨が止みました。


下山準備完了
大急ぎでテントをたたみ、スタッフバッグにも入れずに適当に折りたたんでバックパックに押し込んで撤収完了です。


ガスと強風の立山
立山の稜線は雲の中です。雲の流れが速く、相当強い風が吹いていることでしょう。


テーブル状のテント跡
テントを撤収した跡は、高さ15cmぐらいのテーブル状になっていました。設営時は全部平坦だったわけですから、この3日間でそれだけ周辺が融けたということです。


9:20 雷鳥沢テント場を出発です。室堂ターミナルへは、雷鳥荘経由の来たときのルートは風が強そうなので、一ノ越から戻ってくるときに使った、谷沿いの雪上車用の道をたどり、途中からみくりが池方面に上がるルートで帰りました。しかし、みくりが池手前から猛烈な強風にあい、まっすぐ歩くこともままならないような状態になりました。あまりのことにたまらずみくりが池山荘のテラスに逃げ込みました。山荘の風下側になるので、風がしのげるのです。


室堂ターミナル到着
10:42 ストックでなんとか体を支え、体を斜めに傾けないと歩けないような状態の中、ようやく室堂ターミナルにたどり着きました。今回は、それなりに天候に恵まれ、昨年果たせなかったことができて、かなり満足した山行となりました。そして、ひとつ大きな教訓も得ました。それは、『大型テントの近くで幕営するべからず』です。静かな夜をすごしたいなら、グループの大型テントには近寄ってはいけないという腹立たしくも貴重な教訓でした。


おわり。





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2012/05/14

立山室堂東奔西走: 立山その3 『天候急変にアセる』

2012年4月29日~5月2日 立山 3泊4日単独テント泊


4月30日の朝は、4時30分に起きました。昨夜、オヤジ達に眠りを邪魔された割には案外すっきりと目が覚めたのが不思議です。まだ暗いので天気はいまいちはっきりしませんが、雰囲気的には曇り空のようです。


朝ラーメン
朝からサラミソーセージと乾燥わかめを入れたこってりとしたマルタイとんこつラーメンを食べて、パワーアップです。


30日の朝
テントの外に出てみると、空はどんよりとした曇り空です。昨日と同じようにテント場の近くから雷鳥の鳴き声が聞こえていたので、ひとまずカメラを持って雷鳥の撮影に出かけました。


朝の雷鳥
昨日と同じ個体かどうかわかりませんが、オス鳥が一羽木の枝をついばんでいました。朝の食事なのでしょうか。


小鳥
雷鳥だけでなく、名前はわかりませんが、かわいらしい声でさえずる小鳥もすぐ近くできれいな声を聞かせてくれました。立山の野鳥は、あまり人を警戒しないのかもしれません。


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7:25 出発の準備が整いました。今日の予定は、テント場からすぐ目の前にある大走りの尾根を真砂岳の南隣にある2860mピークにむけて登り、富士ノ折立・大汝山・雄山を縦走して一ノ越に下りるルートを行くことにしました。もともとは、雷鳥沢を登って別山を経由する縦走路を行くつもりでしたが、天気が芳しくないのであまり長いルートだと荒れたときに面倒だと思い、別山ははずすことにしたわけです。


大走りルート
テント場のすぐ前に見える大走りの尾根ですが、近くに見えても案外遠く、尾根下の取り付きまで30分もかかりました。


取り付きの急斜面
夏道はもう少しおくまで登ってから尾根に取り付くようですが、そこはどこでも歩ける雪道です。手前の急斜面にトレースがついていたので、そこを直登することにしました。


のぼりの途中
20分ほどかかって、テラス状のところまで登りました。テント場がいつの間にか遠く小さくなっています。


上を目指して
先行するボーダーの後を追って、きつい急斜面をジグザグに登ります。ボードの滑った跡がちょうどいい感じでジグザグになっていたので、その上をたどって上がっていくと踏み抜くこともなく楽チンでした。


稜線に合流
9:49 ようやく稜線の登山道に着きました。このあたりは雪がなく、風も穏やかだったので、石に腰掛けて休憩をとります。


富士ノ折立への道
右手には、これから進む富士ノ折立とその急斜面が見えています。


雷鳥
富士ノ折立手前の鞍部で、雷鳥に遇いました。こんな3000mに近い高さの稜線にまで登ってこなくても、もっと下のほうが生きるのが楽だろうにと思うのですが、雷鳥にも雷鳥の事情があるのでしょう。


雪岩氷のミックス
富士ノ折立への登りは、岩と雪に加えて氷も混じっており、なかなか厄介です。しかも登れば登るほど氷が増えてきて、ますますやばい状況になってきました。下りでなくてよかったという感じです。


アラレ
そういう状況のときに限って天候は急変するものです。突然ばらばらとアラレが落ちてきました。あわててハードシェルを着込みました。昨年と違って、今年はレインウェアを持ってきていません。上も下もハードシェルでレインウェアをかねてみようということで、荷物を軽減したのでした。コロンビアのジャケットは、どこまでレインウェアの代わりになるのかやや心もとないところですが、少なくともメーカーが防水をうたっているオムニテック素材である以上、簡単に浸水することはないはずです。パンツのほうはゴアテックスなので心配無用です。



富士ノ折立山頂下
アラレの降り続く中、岩と雪と氷の斜面を慎重に這い登り、ようやく富士ノ折立ピーク直下に着きました。


視界不良
振り返るといつの間にか視界がかなり悪くなっています。剣岳の姿はまったく見えません。


富士ノ折立ピーク
富士ノ折立のピークは背後にあるこの岩塔ですが、とりあえずちょっと休憩してから登るかどうか考えることにしました。ところが、荷物を降ろして行動食を食べていると、突然あたりが真っ白になり、なんと吹雪のような状況に! 3000mの稜線で吹雪に襲われて視界がきかなくなった瞬間の、背筋が凍りつくような恐怖!! これから進む予定のルートは、黒部側では雪庇の崩落、富山側では滑落の危険が高いといわれる稜線の道です。こんな状況ではとても先へ進むことはできません。状況が悪化する前にさっさと引き返したほうがよさそうです。


吹雪が収まった稜線
休憩を切り上げて出発の準備していると、幸運にも吹雪はすっとおさまりました。視界も一気に広がります。あの吹雪はなんだったの? という感じです。空の様子を注意深く観察してみましたが、どうやら後立山連峰のほうから流れてきた雪雲の塊がたまたま通過しただけだったようです。後に続くような雲は見られないし、雲の流れの状況もどうやら急変する雰囲気はなさそうです。であれば、さっさと出発して早いとこ雄山までたどり着けば、その先は昨年歩いた道ですし、下るだけなのでたとえ吹雪かれてもなんとかなるはずです。


広い稜線
というわけで、富士ノ折立のピークに立つのは中止して、大急ぎで雄山に向けて出発しました。富士ノ折立から大汝山までは比較的平坦で広い尾根道です。吹雪かれると厄介そうなので、足早に進みます。


クラック
ただ、広い尾根だと思っていたのは、巨大な雪庇のせいだったのです。前方に巨大なクラックが出現しました。このクラックは右方向に大きく回りこみながら、遥か前方のほうまで延びています。しかも、融けてつぶれかけたようなクラックではなくて、けっこう新鮮!?


クラックを越えて
なのに、トレースはこのクラックを越えて雪庇の上をまっすぐに伸びています。どうするか悩みましたが、すでに数人の登山者とすれ違っているので、彼らは雄山方面からこのトレースを歩いてきたはずです。手前から雪庇の様子を観察してみましたが、庇状に張り出した下部が空洞の状態ではないようなので、今日の気温なら簡単に崩落することはないだろうと判断し、恐る恐るクラックを踏み越えて先に進みました。もちろん、クラックを避けてもっと右を歩くという手もありますが、そうすると今度は急斜面のトラバースをすることになり、それはそれで滑落の危険性が高まります。どちらにしても安全とは言い切れないわけで、それならばすでに登山者が通過して問題がない雪庇上のトレースのほうが、まだましだろうというわけです。


雪庇の上を歩く
上の写真で、右手から岩の手前を左前方まで延びている線が、さっきのクラックの続きなのです。つまり、今歩いているこの場所は、夏道で言えば稜線を黒部側に越えた空中だということのようです。右手の岩が見えているあたりが、本来の稜線なのでしょう。なんとも恐ろしいルートです。


剣岳再び
恐ろしいクラックの入った雪庇部分を過ぎて、やっと安心できたところで振り返ると、さっきまで見えなかった剣岳が姿を見せていました。どうやら天候は悪いなりに安定してきたようです。


大汝山休憩所
11:33 大汝山の休憩所が見えました。大汝山の頂上は休憩舎の背後に見える岩のあるところのようです。ところで、小屋の手前、右下のあたりに何か動くものがあると思ってよく見ると、こんなところにも雷鳥がいました。


また雷鳥
ここの雷鳥は動きがやたら素早くて、あっという間に歩き去って行きました。雷鳥もそれぞれ性格の違いがあるんでしょう。


大汝山山頂
11:40 大汝山山頂です。昨年果たせなかった立山の最高峰3015mに、一年越しで立つことができました。


剣岳もくっきり
ゴジラの尻尾のような八つ峰を従えた剣岳もかなりくっきり見えています。




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雄山
記念写真をタイマーで撮り終えると、休憩はなしですぐに雄山に向けて出発です。大汝山と雄山の間がこのルートでは一番厄介だということなので、天候が安定しているうちに一気に通過してしまうためです。


またまた雷鳥
ところが、歩き出してすぐに再び雷鳥に遭遇しました。今度はつがいです。


針の木岳と雷鳥
針ノ木岳を背景にこれは絵になるということで、つい一眼レフを引っ張り出して撮影のために彼らを追ってしまいました。しかし、彼らの歩く速度が思いのほか速い上に、二羽がわりと離れて歩くので、思ったような写真は撮れませんでした。


急斜面のトラバース
深追いするのはやめて、カメラをしまって先を急ぎます。大きな岩の下を回り込んだと思えば、今度は急斜面のトラバースと、いままでと打って変わってスリリングなルートが続きます。


雪庇の尾根
一見、広くてなだらかの尾根に見えますが、左側の多くは雪庇の張り出しのようです。トレースは手前の岩を右に回りこみ、この広い尾根の右の端っこへと続いていました。


さらに雷鳥
進んでいくと、またまた雷鳥とすれ違いです。今度はメスでした。やっぱり天気がよくないときは、雷鳥を目撃するチャンスが多いというのは本当ですね。


もうひとつ雷鳥
その先で、今度はオス。もう、雷鳥だらけです。


雄山直下のルート
さて、ようやく雄山神社までもう一歩のところまで来ました。あとは、あの岩を這い登るだけですが、ここでルート選択を誤ってしまいました。正しいというよりもより登りやすいのは青線のルートだったようですが、僕はトレースにしたがってこの地点を直進してしまったのです。理由は、左へ上がると雪庇に乗ってしまうという意識があったことと、雄山への夏道ルートが頂上の雄山神社ではなく、鳥居の先に出るようになっているので、てっきりそちらのルートが使われているのだろうと思っていたことです。つまり、神社の下の大岩を回りこんで、その先の斜面をトラバースするのだろうと思い込んでいたわけです。ところが、赤線のトレースは、大岩の手前あたりであやふやになり、「おかしいぞ」と思ったのですが、大岩の下を回りこむ部分にはトレースが見えていたので、そのまま進んでいったのです。


しかし、大岩を回り込んだところで、僕は立ち止まらざるを得なくなりました。その先の斜面にはトレースがなかったのです。踏み跡は大岩の付け根の崖の前で消えていました。『これを登れってことか・・・?』 高さは5mぐらいのようですが、ほぼ垂直に見える崖を目の前にして、しばし立ち尽くしたのでした。このとき、いったん戻って別のルートを探せばよかったのでしょうが、まったく手も足も出ないというほど難易度の高い状況には見えなかったため、軽率にもその崖を登ることを選択してしまったのでした。もちろん、トレースがなくてもまっすぐ斜面をトラバースして鳥居の下へ行くという選択肢もありましたが、なぜかそのときはその選択肢は頭に浮かんでこなかったのです。


崖上から
つかんだ岩が外れないかどうか確かめながら、なおかつクランポンの爪を滑らさないように細心の注意を払いながら、なんとか崖を登りきって下を見下ろすと、もしも滑落したら遥か下まで一直線の状況だったことがよくわかります。予想外の展開に完全にてんぱってしまったようです。まだまだ経験不足だと痛感したのでした。


ゴール
最後の最後にとんだ試練を与えてもらって、やっと立山縦走のゴールにたどり着きました。まさか、こんなところに飛び出してくることになるとは思っていませんでしたが。


雄山で記念撮影
神社の前でしばし放心状態になったあと、われに返って記念撮影です。


遠景1
眺めも悪くないです。(右から)黒部五郎、笠、水晶が見えています。


遠景2
さらに左に目を転じると、遥かかなたに槍・穂高の姿もうっすらと見えていました。


雪に埋もれる鳥居
風が出てきたので下の建物脇で休憩をとることにしました。鳥居はやっぱり雪の中に埋没していました。


夏道降り口
ちなみに、夏道がどういう状況なのか確認してみました。降り口はどうということはない緩斜面ですが・・・


夏道
大汝山方面に行くには、けっこうな緊張を強いられるトラバースになるようです。


小鳥
建物の軒下で休憩していると、小鳥が近寄ってきました。野鳥に警戒されないというのは、なんだかちょっとうれしい気持ちになります。


一等三角点
13:01 休憩を終え、下山にかかる前に一等三角点の表示板にタッチ。


下山路
ところどころ砂利の出ている登山道を下ります。


一ノ越山荘
13:35 一ノ越山荘前で、休憩がてらハードシェルを脱ぎました。


テント場への道
身軽になってさくさくと下ります。ところが、テント場まであと少しというところでいきなり雨に降られてしまいました。あわててハードシェルを引っ張り出して着込んだのですが、歩き始めてしばらくすると雨はぱったりとやんでしまいました。まったくわけのわからない天気です。


夕焼け
テント場には15:30ごろ着きました。しばらく休憩してから、温泉に行き、戻ってきてから夕食をとり、その後外に出てみると見事な夕焼けが見られました。


その夜も、隣のオヤジ達は昨晩とかわらない傍若無人ぶりを遺憾なく発揮していたのでした。



つづく。



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2012/05/09

立山室堂東奔西走: 立山その2 『奥大日岳でバテる』

2012年4月29日~5月2日 立山 3泊4日単独テント泊


奥大日岳を目指して出発
11:30 奥大日岳山頂を目指して出発です。テント場からも近くに見える山ですが、春の腐れ雪に足を取られることを考えると、3時間はかかりそうです。遅くとも、15時の段階で登頂できなければ引き返すと決めて、歩き始めました。


雷鳥沢取り付き
取り付きのところまでは雷鳥沢ルートと同じです。


新室堂乗越への道
奥大日岳へは、雷鳥沢の尾根下からすぐに進行方向左手へと斜面をトラバースするように分岐して行き、新室堂乗越へと向かいます。


最初の急登
新室堂乗越直下の急斜面がまず第一の関門です。


新室堂乗越
11:57 ようやく新室堂乗越にたどり着くと、空には高層雲が広がり、ほとんど曇り空の雰囲気になってきました。風も強く、ここでハードシェルジャケットを着用します。ほんの1時間上がってきただけで、風もなくぽかぽか陽気だったテント場とはうってかわってジャケットなしではとてもじっとしていられないほどの寒さです。


目指す奥大日岳
目指すはあの頂です。


アリンコのような登山者
雷鳥沢ルートを見ると、登山者のグループがまるでアリンコのように見えています。


雷鳥出現
尾根上を歩き始めてすぐに、前方から雷鳥が歩いてくるのが見えました。


雷鳥とニアミス
膝を突いてじっとしていると、まるで僕の存在など眼中にないかのように、手を伸ばせば触れられそうな距離をすたすたと歩き去っていきました。


剣岳と雷鳥
写真としてはよくありませんが、剣岳と雷鳥、立山での最強コンビの被写体です。


室堂乗越
12:18 室堂乗越に着きました。ここも風が強いです。途中の稜線ではそれほどでもないのに、鞍部にくると風が強まります。やはり標高の低い窓のようなところが風が吹き抜けやすいということなのかもしれません。


剣岳
室堂乗越から見る剣岳です。そこそこ眺めはいいのですが、手前の尾根がやや気になります。やはりもう一段上までいかないと剣岳の全貌は見えないようです。


地獄谷
地獄谷のほうを見ると、雷鳥荘下の雪面が黄色く染まっています。地獄谷から吹き上げる硫黄成分が雪を染めているのでしょう。


2440mピークへの急登
ここからいよいよ本格的な雪山登山になります。まずは2440mのピークへの斜面を登ります。標高差はおよそ90mです。うかつに足を置くとずるっと滑ってしまう斜面のため、けっこう体力を消耗します。


2440mピーク
それでもトレースのおかげでなんとか15分程度で登りきって見ると、目の前にはさらに高い2511mのピークが控えていました。


巨大な雪庇の稜線
巨大な雪庇をまとったピークが次第に近くなってきました。


2440mピークを振り返る
13:22 2511mピークの取り付きでひとまず休憩することにしました。振り返るとソロ登山者が後ろから登ってきていました。午後から登りに来るなんて自分ぐらいかと思っていたので、ちょっと意外な感じです。


弥陀ヶ原
弥陀ヶ原の雪原の中をくねくねと縫うように走るアルペンルートがよく見えます。


2511mピーク
20分ほど休憩をとってから2511mピークの斜面に取り付きました。ここでも先ほどと同様に滑りやすいながらもトレースをたどって、15分程度で登りきることができました。


さあ、あとは2611mのピークに向けて登るだけです。ところで、奥大日岳は地図では2611mのピークではなく、その西側にある2605.9mのピークに山名が書かれています。三角点がある2605.9mのピークを本峰としたのか、むかしからそうなっているのかわかりません。常識的にはすぐ隣にある高いほうのピークが本峰と考えるほうが妥当だと思われますが、どうなんでしょうか。




ここで一息。ポチッと押して休憩したら続きをどうぞ。






奥大日岳への稜線
2611mピークの斜面が一望できるところからルートを観察してみると、巨大な雪庇の根元に入ったクラックの上を通っている箇所があるようです。


核心部
中間付近ではハイマツにそってできたクラックと崩壊しかけた雪庇の間を通っている箇所もあります。ハイマツの左手方向から回り込んだほうが安全そうですが、斜面下部を迂回することになるので、雪崩た時は逆に飲み込まれる危険性が高いようにも思えます。


思案していても時間がなくなるだけなので、ひとまず現場まで行って雪の状態やクラックの状態など確認した上でどうするか判断することにしました。


クラックをわたる
最初の大きなクラックの下まできました。基本的にハイマツがバンド状に生えているところは雪のつき具合がよくないので、そこがクラック発生場所になるようです。ただ、クラック自体は新しいものではないらしく、融けた雪に半分埋まったようになっていたので、現状ではそれほどやばい雰囲気ではなさそうということで、そのままトレースどおりにクラックを超えて進みました。


2つ目のクラック
次に、何もない雪面にできた巾15mぐらいのクラックです。ここも半分埋もれかけたような状態なので、大丈夫だろうと判断して先に進みます。


核心部をわたる
そして、いちばんやっかいそうだったハイマツ沿いのクラックと崩壊しかけた雪庇の間をたどる部分です。ちょうど巾1m程度のブリッジ状に残った雪の上をたどるわけですが、ここも右側の雪庇のクラックは埋もれかけのような状態だったので、多少の安心感はありました。しかし、さすがに心拍数が上がります。できるだけ素早くかつ静かに通過しました。


クラック帯
クラックはこれでお終いかと思いきや、それ以後もトレースに沿って多数のクラックが入っています。ハイマツよりも下に発生しているところをみると、雪庇の根元のクラックというよりも斜面上部のクラックという雰囲気なので、このクラックの下側を歩くというのがかなりのプレッシャーです。そうかといってクラックの上側を歩こうとすると雪庇に載ることになりかねません。雪庇とともにがけ下に墜落することを考えると斜面側のほうがまだましということで、恐々クラック沿いのトレースをたどりました。


2611mピーク
14:42 恐怖のクラック帯を乗り越えて、やっと2611mピークに立つことができました。広々としたピークに座って、やっと緊張から開放されました。


2605.9mピークを望む
地図上の奥大日岳は右手にあるテーブル状のピークのはずですが、自分としてはより高いこのピークに登頂したことで十分です。時間も、引き返す目安としていた15時が近いこともあって、奥大日岳登頂はこのピークを持って達成と判断することにしました。


下山
いつもなら下山は気が楽になるのですが、今回は再びあのクラック帯をたどらなければいけないと思うと、気が重くなります。


雷鳥の足跡
途中、雷鳥の足跡にわずかながら和まされながらも、張り詰めた気持ちのまま下山を急ぎました。



テント場帰着
16:30 肉体的にも精神的にもすっかり消耗しきって、へろへろの状態でようやくテント場までたどり着きました。緊張感のためか、わずか5時間程度の行動だったのにもかかわらず、思いのほか疲れが出ました。体力の限界を少しばかり超えてしまったという感じです。



(クリックで拡大)
GPSログ_奥大日岳

カフェオレを飲んでひとまず休憩をとり、痛む足を引きずりながら雷鳥ヒュッテまで歩き、浸かった温泉のなんと気持ちよかったことでしょう! 


テントに戻って食事をすませ、寝袋にもぐりこんで寝ようとしたのですが、隣のテントの酒盛りがうるさくてなかなか寝付けません。ラジオを鳴らし、大きな声で話し続ける関西弁のオヤジグループ。まだ20時前だから仕方ないかと思いつつ、完全に酔っ払いの口調になったオヤジたちの声を聞くとはなしに聞いていると、もはやここがテント場であり、声や音は周り中に筒抜けであるという意識はないのだろうと思われます。


さて、21時を回ったころトイレに行って帰ってきたところで、あいかわらず大騒ぎしているオヤジたちのテントに向かって大きく咳払いをしてみたところ、それが聞こえたのかたまたまだったのかわかりませんが、しばらくすると静かになりました。


やれやれと思いながら眠りについたのですが、0時をまわったころにまたもやぼそぼそと話し声がはじまりました。ラジオもつけて、すぐに普通の会話レベルの大きさで話が始まり、深夜のテント場ということはまったく配慮もしていないオヤジ達のくだらない話はそれから1時間以上も続いたのでした。朝起きたときもラジオの音はしていたので、ラジオは結局つけっぱなしだったようです。会話からすると60代から70代のオヤジだったようですが、時と場所をわきまえるということを知らない、無駄に長く生きただけの人間になってしまったようです。



つづく。


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2012/05/05

立山室堂東奔西走: 立山その1 『雷鳥バトる』

2012年4月29日~5月2日 立山 3泊4日単独テント泊



2回目の立山残雪期登山となった今回、昨年と違ってGW前半の天候がいいとの予報を受け、4月29日からの入山となりました。


28日午前中に仕事を一発片付けて、未完成だったパッキングを終えたら、お昼過ぎに出発です。いつもと同じ加古川から三木市を経由して、中国自動車道吉川ICから高速道路にのり、舞鶴若狭道路で終点小浜まで行き、敦賀まで一般道を走ります。敦賀から北陸自動車道にのって富山に着いたのは午後9時ごろだったでしょうか。これまたいつもどおり富山市内の城南温泉で汗を流し、食事をして富山地方鉄道立山駅を目指します。


立山駅に着いたのは午後11時ごろでしたが、駅前の駐車場はほぼ満車状態でした。とりあえずぐるっと回ってみたのですが、空きが見つからなかったので、一段低いところにある奥の一般駐車場に行ってみるとガラガラ。一度はそこに停めようとおもったものの、やっぱり不便すぎると思い、もう一度駅前の駐車場にもどってみると、先ほど見ていなかった一番踏み切りに近い奥まったところに駐車スペース発見! まだ雪の塊が少し残っていたのと、車を転回させにくい一番奥だったので、空いていたようです。そこは最低地上高200mmもある4WDのレガシーランカスター。まったく問題なく駐車できました。駅まで一番近い場所に停められてラッキーでした。


午前4時に起きて準備を整え、昨年の反省を踏まえて4時45分には切符売り場に並ぶつもりが、意外とパッキングにてまどって切符売り場に着いたのは5時前。昨年よりも少し短いながらも1回折り返すぐらいの列がすでにできていました。今年も始発は無理かと思いながら順番を待っていると、やっぱり6:10発の第2便となりました。まあ、10分しか違わないのならよしとします。


改札
改札をすませてケーブルカーに向かいますが、大きな荷物を持っている人はケーブルカーに接続されている貨車に荷物を預けなければならず、いったんホームの階段で並ばされます。なので、せっかく早く改札を終えても絶対に座ることができません。なんだか理不尽です。そのうえ、改札後に駅員が荷物がある人は並んでくださいと案内しているのに、他の観光客にまぎれて乗り込もうとして駅員にとめられると、聞いていないとかいいながら「ここいいですか」と列の最前列にいる僕の前に割り込もうとするので、「後ろに並んでください」と丁寧にお引取り願いました。甘えてんじゃねえっ!


弥陀ヶ原
そんなこんなでケーブルカーとバスを乗り継ぎ、一気に標高2450mの室堂へと向かいます。この日は天気もよく、途中周りの山々もよく見えました。


雪の大谷
雪の大谷の積雪は16mだとか。あいかわらずびっくりするような積雪量です。


室堂ターミナルから一歩外に出るとまぶしい光が降り注いでいました。気温も高く寒さは感じません。昨年は気温1度、ガスで視界不良と真冬のような天候でしたが、天国と地獄ほどの違いです。


雷鳥沢までは基本下りの道なので、スリップを警戒してクランポンを装着して出発です。


ミクリガ池のそばまで来ると人だかりがありました。雷鳥か? と思って近寄ってみると、案の定雷鳥君の撮影会でした。


ミクリガ池の雷鳥
まだ真っ白な冬羽のオスの雷鳥が、雪塊の上に立ち、あたりをたくさんのカメラマンが取り囲んでいます。こんな晴天の日に珍しいなあと思いつつ、今日はこれ以後会えるかどうかわからないので、とりあえず撮影会に参加しました。


雷鳥沢テント場
短い撮影会を終えて、再び雷鳥沢を目指して歩きます。雷鳥荘の前まで来ると、眼下に雷鳥沢テント場が見えました。一年ぶりなので、ちょっと懐かしく感じます。




ここで一息。ポチッと押して休憩したら続きをどうぞ。





テント設営場所
8:15 テント場について、まずは場所探しです。まあまあ管理棟に近い場所に、穴掘りされたテントサイトを発見。ヤドカリ戦法でここをマイホームにすることに決定です。


しかし、テント場の裏、立山方面からなにやらカエルの鳴くような声が聞こえてくるではないですか。あれはもちろんカエルではなく、雷鳥の鳴き声。


二羽のオス雷鳥
カメラをもって様子を見に行くと、二羽の雷鳥が仲良く歩いています。どちらの目の上にも赤い肉冠があるので二羽ともオスです。


喧嘩の始まり
しばらくこの二羽を追いかけながら撮影を続けていると、とつぜん喧嘩が始まってびっくり。みあってみあって!


脳天チョップ
脳天チョップだっ! ビシッ! 


雷鳥キック
やったな、これでも食らえ! らいちょうキーック!!


てな感じでバトルを繰り広げた挙句、首下が黒羽になりかけのほうが負けて逃げ出したのでした。


雷鳥のバトルを撮影し終えてから、テントを張る場所を少し整地してテントを設営しましたが、今回は雪壁つくりはやめました。なんだか撮影だけで疲れてしまったような気がするし、すでに雪面から50cmぐらい掘り下げてあるので、50cmの雪壁があるのと同じことだからです。雪壁だと融けて補修が必要になりますが、掘り下げるだけなら補修は不要です。もっと掘り下げるという手もありますが、昨年はとくに強風に悩まされたことはなかったので、問題ないだろうと思ったのでした。しかし、これは甘かった! その話はまた後日することにしましょう。


テント設営
10:30 完成したマイホームです。寝不足のせいか体がだるい感じです。ひとまず、休憩と食事にすることにしました。40分ほどゆっくりした後、やっぱりこの天気を無駄にするのはもったいないということで、予定通り奥大日岳に向かうことにしました。


余談ですが、右側背後にある青い大型テントですが、とんでもないバカヤローおやじどものテントでした。そのバカヤローぶりは次回!



つづく。



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