テント泊用マットレスの比較
テント泊で必要不可欠なのがマットレス。地面の凹凸や、小石などの突起による不快感をやわらげてくれるだけでなく、地面からの冷えを防いで快適な睡眠を提供してくれる大切なツールです。
僕がテント泊用に初めて購入したのは、エアマットでした。すでに10年以上前のことですが、モンベルのコンパクトマットレスという商品名で、息を吹き込んで膨らませるビーチマットのようなタイプです。長さは180cm。
現在のU.L.コンフォートシステム エアパッド180 のルーツにあたる商品だと思います。この写真は現行品です。
なぜこれにしたかというと、一番寝心地がいいからです。当然といえば当然ですが、膨らませれば厚さは8cmぐらいになりますから、少々の石や地面の凹凸はまったく気になりません。北岳山荘のテント場で初使用してから、砂利だらけだった槍平山荘のテント場、大きな石が敷き詰められた状態の槍ヶ岳山荘や涸沢のテント場でも、すこぶる快適に眠ることができました。少なくとも、3シーズン用のマットレスとしては、もっとも快適なタイプだといえます。
しかし、宿命的に空気漏れという弱点を常に心配しなければいけません。そしてその時は突然やってきます。エアの抜けたエアマットほど役に立たないものはありません。リペアキットが付属していても、どこに穴が開いているかなんて、膨らませて水につけてみないと簡単にはわかりませんから、山の上ではあまり役に立ちません。エア漏れが山行最後の日ならいいのですが、山行初日に起こったらその山行は苦行と同じです。そういうわけで、機能しているときと機能しなくなったときのギャップが著しいので、オートキャンプならいざ知らず山で使うのにはあまり適していないと感じます。
エアマットのもうひとつの弱点は、寒さに弱いということ。秋の山行で冷え込んだ日は、マット内の空気も冷えてしまうので、背中からじんわりと冷たさが伝わってきます。そしてそれがなかなか解消しません。最近のものは少し改良されてよくなっているのかもしれませんが、中で対流が発生し得る程度の空間があるエアマットは、断熱性能の点では弱いといわざるを得ません。
弱点とはいえないまでも、息でこのマットを膨らませるのはそれなりに大変です。空気の薄い2500mレベルのテント場だと、途中で休憩を入れながらでないと続きません。小型の手押しポンプでもあればまだましかもしれません。また、エアマットのくせに重量が約500gもあるというのもなんだか納得できません。パンクに対する強度を保持するためにどうしても厚い生地にする必要があるのでしょうが、それにしてもという感じです。
ここで一息。ポチッと押して休憩したら続きをどうぞ。
次に購入したのが、サーマレストのProLiteという自動膨張式のマットレスです。エアマットレスにはこりごりとはいえ、あの寝心地は忘れがたいものがあります。一度、いわゆる銀マットを使ったことがありますが、ほとんどクッションらしいやわらかさがなく、とても寝苦しい思いをしました。厚さは8mmぐらいあって、けっこう厚手のタイプだったのですが、板状のマットは厳しいものがあります。というわけで、エアマットの快適性を備えつつ、パンクしても内部のウレタンフォームである程度のクッション性能と断熱性能を確保できる自動膨張式のマットレスを選んだわけです。
「ProLite」
現行品は、寝るのに不必要な四隅の角がカットされるなどして、より軽量化されています。
結論から言えば、いまのところもっともスリーピングマットとして適しているのが、この自動膨張式マットレスではないかと思います。僕が持っているのは長さ120cmのもので、付属のスタッフサックに収納すれば500ml缶より一回り太い程度の大きさになるので、バックパックの中に難なく収めることができます。重さも300g強なので、なんとか許容範囲です。
寝心地は、エアマットほどではないにしても、快適です。適度な弾力があり、横向きに寝ても肩や腰骨が痛いということはありません。断熱性能もけっこうよくて、3シーズンで使う限りでは地面からの冷えを感じたことはありません。構造的にはエアマットのようなものですが、エアマットほど膨らまないしウレタンの芯材が入っているためか、かれこれ10年近く使っていますが一度もパンクしたことはありません。
ところが、雪山でのテント泊では、さすがに断熱性能が追いつかないという事実が発覚したのです。厚さ2.5cm、暖かさ指数2.2のProLiteは、雪の上での使用には不十分でした。メーカーも3シーズン用とうたっていますし。雪上テント泊で使うのであれば、厚さ3.8cm、暖かさ指数3.8のProLite Plus以上でないとだめみたいです。しかし、ProLite Plusになると収納サイズも大きくなるし重量もかさみます。装備が増える雪山では、重量・容積の増加はできるだけ避けたいところです。
「RidgeRest SOLite」
そこで、雪山専用にサーマレストのリッジレストソーライトを購入しました。クローズドセルと呼ばれる板状のマットレスなので、パンクの心配はありません。長さ122cmのスモールサイズは、重さ260gと非常に軽量です。表面に凹凸があり銀マットよりも遥かにクッション性があります。また、表面にアルミ蒸着されているので、暖かさ指数はProLiteよりも優秀な2.8です。問題は容積が格段に大きくなってしまうことですが、逆にバックパックの外にくくりつけることができるので、バックパック内部はかえって余裕ができました。バックパックの底部につければ、荷物を降ろしたときに自立してくれるので、その意味でも助かります。レインカバーをつけようとすると厳しいことになりますが、雪山なので雨の心配はほとんどしなくてすみます。
使用してみた感じは、寝心地はProLiteに及ばないものの、寒さに関しては問題なしでした。寝心地も、下が雪ということもあってとくにごつごつした感じはなく、初日こそ多少気になったものの、2日目からはほぼ慣れました。それでも、2時間に一度ぐらいのペースで目が覚めたので、やはりあまりいい寝心地ではなかったのかもしれません。しかし、軽量でパンクの心配がなく、断熱性能もいいとなると、雪山で使う場合はリッジレストソーライトのほうが適しているといえるかもしれません。ただし、表面のアルミ蒸着は、わずか1度の使用で凸部がかなりはげてしまいました。凹部は簡単にはがれることはないでしょうから、極端に保温性能が落ちることはないと思いますが、もう少しなんとかならないものかと思います。
「ProLite Plus」
ということで、3シーズン用には自動膨張式ProLite、雪山にはリッジレストソーライトがお勧めですが、雪山でもとにかく快適性重視であれば、厚さ3.8cm、暖かさ指数3.8のProLite Plusという選択肢もあります。ただし、重さは430gと重く、収納サイズもやや大きくなります。なお、長さは120cmで十分です。どうせテント内では荷物を出したバックパックの扱いに困るだけなので、足元に敷くか、足を突っ込んで寝れば邪魔にならず役立ちます。
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僕がテント泊用に初めて購入したのは、エアマットでした。すでに10年以上前のことですが、モンベルのコンパクトマットレスという商品名で、息を吹き込んで膨らませるビーチマットのようなタイプです。長さは180cm。
現在のU.L.コンフォートシステム エアパッド180 のルーツにあたる商品だと思います。この写真は現行品です。
なぜこれにしたかというと、一番寝心地がいいからです。当然といえば当然ですが、膨らませれば厚さは8cmぐらいになりますから、少々の石や地面の凹凸はまったく気になりません。北岳山荘のテント場で初使用してから、砂利だらけだった槍平山荘のテント場、大きな石が敷き詰められた状態の槍ヶ岳山荘や涸沢のテント場でも、すこぶる快適に眠ることができました。少なくとも、3シーズン用のマットレスとしては、もっとも快適なタイプだといえます。
しかし、宿命的に空気漏れという弱点を常に心配しなければいけません。そしてその時は突然やってきます。エアの抜けたエアマットほど役に立たないものはありません。リペアキットが付属していても、どこに穴が開いているかなんて、膨らませて水につけてみないと簡単にはわかりませんから、山の上ではあまり役に立ちません。エア漏れが山行最後の日ならいいのですが、山行初日に起こったらその山行は苦行と同じです。そういうわけで、機能しているときと機能しなくなったときのギャップが著しいので、オートキャンプならいざ知らず山で使うのにはあまり適していないと感じます。
エアマットのもうひとつの弱点は、寒さに弱いということ。秋の山行で冷え込んだ日は、マット内の空気も冷えてしまうので、背中からじんわりと冷たさが伝わってきます。そしてそれがなかなか解消しません。最近のものは少し改良されてよくなっているのかもしれませんが、中で対流が発生し得る程度の空間があるエアマットは、断熱性能の点では弱いといわざるを得ません。
弱点とはいえないまでも、息でこのマットを膨らませるのはそれなりに大変です。空気の薄い2500mレベルのテント場だと、途中で休憩を入れながらでないと続きません。小型の手押しポンプでもあればまだましかもしれません。また、エアマットのくせに重量が約500gもあるというのもなんだか納得できません。パンクに対する強度を保持するためにどうしても厚い生地にする必要があるのでしょうが、それにしてもという感じです。
ここで一息。ポチッと押して休憩したら続きをどうぞ。
次に購入したのが、サーマレストのProLiteという自動膨張式のマットレスです。エアマットレスにはこりごりとはいえ、あの寝心地は忘れがたいものがあります。一度、いわゆる銀マットを使ったことがありますが、ほとんどクッションらしいやわらかさがなく、とても寝苦しい思いをしました。厚さは8mmぐらいあって、けっこう厚手のタイプだったのですが、板状のマットは厳しいものがあります。というわけで、エアマットの快適性を備えつつ、パンクしても内部のウレタンフォームである程度のクッション性能と断熱性能を確保できる自動膨張式のマットレスを選んだわけです。
「ProLite」
現行品は、寝るのに不必要な四隅の角がカットされるなどして、より軽量化されています。
結論から言えば、いまのところもっともスリーピングマットとして適しているのが、この自動膨張式マットレスではないかと思います。僕が持っているのは長さ120cmのもので、付属のスタッフサックに収納すれば500ml缶より一回り太い程度の大きさになるので、バックパックの中に難なく収めることができます。重さも300g強なので、なんとか許容範囲です。
寝心地は、エアマットほどではないにしても、快適です。適度な弾力があり、横向きに寝ても肩や腰骨が痛いということはありません。断熱性能もけっこうよくて、3シーズンで使う限りでは地面からの冷えを感じたことはありません。構造的にはエアマットのようなものですが、エアマットほど膨らまないしウレタンの芯材が入っているためか、かれこれ10年近く使っていますが一度もパンクしたことはありません。
ところが、雪山でのテント泊では、さすがに断熱性能が追いつかないという事実が発覚したのです。厚さ2.5cm、暖かさ指数2.2のProLiteは、雪の上での使用には不十分でした。メーカーも3シーズン用とうたっていますし。雪上テント泊で使うのであれば、厚さ3.8cm、暖かさ指数3.8のProLite Plus以上でないとだめみたいです。しかし、ProLite Plusになると収納サイズも大きくなるし重量もかさみます。装備が増える雪山では、重量・容積の増加はできるだけ避けたいところです。
「RidgeRest SOLite」
そこで、雪山専用にサーマレストのリッジレストソーライトを購入しました。クローズドセルと呼ばれる板状のマットレスなので、パンクの心配はありません。長さ122cmのスモールサイズは、重さ260gと非常に軽量です。表面に凹凸があり銀マットよりも遥かにクッション性があります。また、表面にアルミ蒸着されているので、暖かさ指数はProLiteよりも優秀な2.8です。問題は容積が格段に大きくなってしまうことですが、逆にバックパックの外にくくりつけることができるので、バックパック内部はかえって余裕ができました。バックパックの底部につければ、荷物を降ろしたときに自立してくれるので、その意味でも助かります。レインカバーをつけようとすると厳しいことになりますが、雪山なので雨の心配はほとんどしなくてすみます。
使用してみた感じは、寝心地はProLiteに及ばないものの、寒さに関しては問題なしでした。寝心地も、下が雪ということもあってとくにごつごつした感じはなく、初日こそ多少気になったものの、2日目からはほぼ慣れました。それでも、2時間に一度ぐらいのペースで目が覚めたので、やはりあまりいい寝心地ではなかったのかもしれません。しかし、軽量でパンクの心配がなく、断熱性能もいいとなると、雪山で使う場合はリッジレストソーライトのほうが適しているといえるかもしれません。ただし、表面のアルミ蒸着は、わずか1度の使用で凸部がかなりはげてしまいました。凹部は簡単にはがれることはないでしょうから、極端に保温性能が落ちることはないと思いますが、もう少しなんとかならないものかと思います。
「ProLite Plus」
ということで、3シーズン用には自動膨張式ProLite、雪山にはリッジレストソーライトがお勧めですが、雪山でもとにかく快適性重視であれば、厚さ3.8cm、暖かさ指数3.8のProLite Plusという選択肢もあります。ただし、重さは430gと重く、収納サイズもやや大きくなります。なお、長さは120cmで十分です。どうせテント内では荷物を出したバックパックの扱いに困るだけなので、足元に敷くか、足を突っ込んで寝れば邪魔にならず役立ちます。
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