再生巨流 (新潮文庫)
周平, 楡
新潮社
2007-11-28



運送会社からマーケティングカンパニーへ

お客にモノを届ける、というシンプルなゴールから他の市場プレイヤーを巻き込み
新たなビジネスモデルが生まれ、企業が拡大していく過程が、段階を踏んで描かれている。

ビジネスアイデアの宝庫のような物語だった。

ドライバーとセールスドライバー(配送と集荷)
ロジスティックからサプライチェーンマネジメントへ
会社でコピー用紙やトナーといった日常切らすことができない消耗品の調達
カウンターと通信機能といったツール開発の着想
即日配送と翌日配送の必要度の見極め(思い込みと実態)
街の電器屋を文具通販の代理店へ業務拡大できないか
土地勘や顧客情報(与信)を持つ電器屋の再生
量販との真の差別化(在庫、販売品など固定費)
幾つかのキーワード『家電店』『ネットワーク化』『老人家庭』
コンビニが宅配までやるようなもの
広報宣伝として、アイテムの絞り込みとセグメンテーションを活用した訴求力

主人公の次から次へと前へ推し進める発想力と情熱と行動力に舌を巻いた。

「行きがけの駄賃」のような話がビジネスの世界でこんなにもころがっているものだろうか?
まるでマジックのような展開だ。

「頭に汗をかけ。脳みそに錐を刺して、血が噴き出るまで考えろ」
答えはこんなところから出てくるのかもしれない。

「大きなプロジェクトを行う時にはな、まず最初に理想的な最終像を具体的な形でメンバーの全員が共有するのが大事なんだ。
積み上げ算でやろうとしたら、いつまで経っても前へなんか進みやしない。
ゴールから線を引き、どうしたらそこへ行き着くかを考えるんだ。
この時点で予算なんか考えなくていい。
絵に描いた餅でもいいんだ。
当然、プロジェクトが進むに従って、非現実的だと思われる点は多々出てくるだろうが、修正を施す度に完成度が増し、最終的に落ち着くところへ落ち着く。」

勉強になりました。
もう15年以上も前の作品だから、既に取り入れられた事例もあるのではないか。