ジョルジュ・エネスクは、1881年ルーマニア生まれの作曲家、ヴァイオリニスト、ピアニスト、指揮者、音楽教師。ヴァイオリンとピアノのための作品集第2集で、16歳のときに書かれたヴァイオリン・ソナタ第1番と、小品集、それに1940年に書かれた「幼き頃の印象」が入っている。

ヴァイオリン・ソナタ第1番は、さすがにブラームス張りのロマン派ヴァイオリン・ソナタで起承転結のハッキリした音楽になっているが、どこかフォーレを思わせるところがあって抒情的な香りがする。大きなヴィブラートで演奏されているが、作曲家本人も「程よく効果的に使っていた」というからこのくらいは当然なのだろう。

「幼き頃の印象」がOp.2と違って前衛的で面白い。音楽がぐっと深みを増している。と言っても、バリバリの前衛曲ではなく、程よい程度に抑えられているところが聴きやすくてよかった。5曲目の「安らぎの歌」のメロディがとても美しかった。

演奏しているのは、Axel Strauss (アクセル・シュトラウス)。1974年生まれのドイツの男性ヴァイオリニスト。

17歳の時、ジョルジョ・エネスク国際コンクールで銀賞を受賞。リューベック音楽大学、ロストック音楽大学でペトル・ムンテアヌに師事。1996年からアメリカに渡り、ジュリアード音楽院でドロシー・ディレイに師事し。彼女の助手として働いた。

ドイツ人として初めて、ナウムブルク賞を受賞。2007年にアメリカの作曲家アーロン・ジェイ・カーニスがシュトラウスのために作曲した「Two Awakenings and a Double Lullaby」の世界初演を行った。

録音では、ブラームスのヴァイオリン協奏曲やメンデルスゾーンの無言歌集、クラリネットソナタのヴァイオリンバージョンを収録したアルバムをリリースしている。2009年にはピエール・ローデの24のカプリースをリリース。

室内楽では、ピアニストのメナヘム・プレスラー、ヴィオラ奏者のキム・カシュカシャン、チェリストのジョエル・クロスニック、バーナード・グリーンハウス、ヴァイオリニストのロバート・マンらと共演している。2012年より、カナダのケベック州にあるマギル大学でヴァイオリンの助教授を務め、後進の指導にあたっている。

使用楽器は、1845年、トリノのジョヴァンニ・フランチェスコ・プレッセンダ作のヴァイオリンで演奏。

ここでの演奏も激しく緊張感の高いもので、曲の真価を知らしめる名演。

1-3.ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ニ長調 Op.2(1897)
4.バラード Op.4a(1895-1896)
5.オーバード(朝の歌)(1899/1903)
7.ホラ・ウニレイ(1917)
8.アンダンティーノ・マリンコニーコ(1951)
9-18.幼き頃の印象 Op.28(1940)
《フィドル弾き/年老いた物乞い/庭の小川/かごの鳥と壁のカッコウ時計/安らぎの歌/コオロギ/窓に輝く月/煙突の風/夜、外の嵐/日の出》
アクセル・シュトラウス(ヴァイオリン)
イリヤ・ポルターエフ(ピアノ)
録音 2012年1月2-5日 USA カリフォルニア,サンフランシスコ H.ヒューム・コンサート・ホール

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