NadegataPapaのクラシック音楽試聴記

クラシック音楽の試聴記です。オーケストラ、オペラ、室内楽、音楽史から現代音楽まで何でも聴きます。 カテゴリーに作曲家を年代順に並べていますが、外国の現代作曲家は五十音順にして、日本人作曲家は一番下に年代順に並べています。

イベール(1890~1962)仏

イベール「寄港地」「フルート協奏曲」他 デュトワ指揮モントリオール響

Ibert: Escales/Flute Concerto
Osm
Polygram Records
1999-05-24

フランス音楽の録音に情熱を燃やしていたシャルル・デュトワとモントリオール交響楽団による、イベールの管弦楽曲集。ジャック・フランソワ・アントワーヌ・イベール(Jacques Francois Antoine Ibert,1890~1962)は、パリ生まれのフランスの作曲家。年代的にプーランクよりはちょっと年上。ミヨーやオネゲルと同年代といった関係だろう。

大体この年代のフランスの作曲家は、日本ではあまり知られていない。近代フランスの作曲家で一般的に知られているのは、せいぜいラヴェルやドビュッシ一辺りまで。フランス6人組の一人一人の名前を知っている人は、ちょっとしたマニアじゃないかな。

その中でイベールは管弦楽曲が多い。もっとも有名なのはCDの最初に入っている「寄港地」だろう。イベールが第1次世界大戦に海軍士官として従軍し、地中海の各港に寄港した時の印象を曲にしたものだ。余談だがイベールは軍人としても立派な功績をあげ、いくつも勲章を授与される程だったらしい。何となく音楽家ってひ弱でとても軍人としてやっていけるような人種ではないような気がするが、みんなそうとは限らないようだ。

寄港地は3つの曲に分かれていて、第1楽章は「ローマ~パレルモ」。いかにも地中海の船旅という印象で、明るい陽の下での楽しい航海の様子が表現されている。それにしても冒頭から凄い迫力だ。イベールの眩いばかりの管弦楽法が如何なく発揮されていて、とてもカラフル&ゴージャス。

第2楽章は「チュニス~ネフタ」で、いかにもアフリカかアラブ世界って感じの音楽が聴ける。ちょっとステレオ・タイフな気がするが、雰囲気はたっぷりだ。第3楽章は「バレンシア」。賑々しく明るい音楽で、一聴すると映画音楽っぽい雰囲気だが、オーケストレーションは鮮やかで構成は緊密。そこらの本物映画音楽とは一線を画している。

イベールのもうーつの有名曲はフルート協奏曲だろう。マルセル・モイーズに献呈されている。20世紀に書かれた曲にしては、フルートの旋律線が分かりやすく、聴きやすい部類に入ると思う。第2楽章の爽やかなメロディが美しく、第3楽章では難度の高い技巧が披露される。イベールは管楽器の扱いが抜群に上手く、その手腕がここでも如何なく発揮されている。

モントリオール響の首席奏者、ティモシー・ハッチンズがフルートを吹いており、明るく屈託のない音でのびのび吹いて気持ちがいい。「これでもか!」と技巧をひけらかすことはなく、プレーンな魅力で、あくまで端正に音楽の素晴らしさを伝えようとする演奏だ。

交響組曲「パリ」はパリの下町で育ったイベールが、パリの印象を綴ったもの。「地下鉄」では列車ランプの明滅や遮断機の音?が聴こえ、列車の音が段々と大きくなっていく音が不気味に綴られる。最後に電車が通過して行ったような音がするのには感心してしまった。

その他曲の題名にちなんだ音楽が並んでいる。「Faubourgs(周辺?)」はアニメの伴奏曲みたいなファンファーレが鳴り響き、「パリの回教寺院」は異国情緒たっぷりだ。「ブロ一ニュの森のレストラン」ではサックスが活躍し、メリーゴーラウンドみたいな音楽。さぞかし賑やかなレストランなのだろう。「フランス島」丸はピアノの不協和音がスリリングだし、最後の「遊園地のパレード」では底抜けに楽しいパレードが繰り広げられた。

続く「バッカナール」「ポストニアーナ」「ルイヴィル協奏曲」も同種の音楽で、イベールの巧みな管弦楽法が駆使され、明るく賑やかな音楽が展開されている。「ポストニアーナ」はちょっと現代音楽っぽい所が多かった。

イベールの音楽は、深刻でシリアスな感情を掘り下げるタイプとは正反対で、穏やかな指向の中でオーケストレーションの妙技を発揮して聴衆を楽しませてくれる。それはドビュッシ一、ラヴェルから続くフランス音楽の伝統でもあり、イベールもその血を受け継いでいるという事だろう。

そう言ってしまうと、いかにもイベールが浮ついた音楽を次から次へと書いていったように思えるが、決してそんなことはなく、一つ一つの作品に真摯に向かい合い、あくまで緊密な音楽を作り上げようとしていたことが分かる。

最後にイベールの言葉を。「伝統を擁護する者たちと、前衛の信奉者たちとの対立のもととなるすべての偏見から、私は自由でいたい。そして私が望むような意識と原語の自由は、私自身と私の表現手段に対して、常に厳しい目を光らせることによって初めて実現するものである」(レコード芸術2012年8月号から抜粋)。

デュトワとモントリオール響の演奏は、明るい音色でイベールのオーケストレーションを隅々までクリアな音色で音にし、晴れやかなデッカ・サウンドがこれに拍車をかけている。最初は感心して聴いていたが、さすがにこの調子で79分聴き通すと、ちょっと疲れてしまった。

1 「寄港地 3つの交響的絵画」(ローマ~バレルモ、チュニス~ネフ夕、バレンシア)
2 フルート協奏曲
3 モーツァルトのオマージュ
4 交響組曲「パリ」
 1 Le Metro(地下鉄)
 2 Faubourgs(周辺)
 3 La Mosquee de Paris(パリの回教寺院)
 4 Restraurant au Bois de Bpulogne(ブロ一ニュの森のレストラン)
 5 Le Paquebot“Ile-de・France” 「フランス島」丸)
 6 Parade foraine(遊園地のパレード)
5 バッカナール(酒の神バッカスの宴)
6 ポスト二アーナ(ボストン交響楽団75周年記念の委嘱)
7 ルイヴィル協奏曲(ルイヴィル管弦楽団のために)


「フランスの風」レ・ヴァン・フランセ CD-1

フランスの風
レ・ヴァン・フランセ
EMIミュージックジャパン
2012-04-11


フランス人木管楽器奏者たちで結成されたレ・ヴァン・フランセのCD。以前からNHKのクラシック倶楽部でライブが放送されたり、アクロス福岡シンフォニーホールでライブがあったりして、何度かその演奏を聴いてきたが、今回はPlaatpaalでCDを聴いた。ライブは聴いていたけど肝心のリリースされたCDは今まで聴いたことがなかったのだ。CDは2枚組で、今回の記事はそのCD1。主にフランス人作曲家の作品が取り上げられている。
 
ジャック・イベールは1890年パリ生まれの作曲家で、交響組曲「寄港地」や「パリ」、「フルート協奏曲」が有名。「木管楽器のための3つの小品」は1960年に作曲されている。軽妙洒脱な作風を旨とし、前衛的なところは殆ど感じられない。第1楽章はちょこまかと動き回るカワイイ曲、第2楽章はちょっと憂欝で優しい曲、第3楽章は明るくユーモラスでしゃれた味わいを感じさせる曲だった。
 
「クープランの墓」は、ラヴェルが1914年から17年にかけて作曲した最後のピアノ独奏曲だが、ここではメイソン・ジョーンズが木管五重奏曲に編曲したものが演奏されている。ラヴェルはこの曲を自身で管弦楽版に編曲しているが、ジョーンズの編曲とは「プレリュード」「フーガ」「メヌエット」「リゴードン」の4曲編成となっていて、管弦楽曲版では「フーガ」ではなく「フォルレーヌ」が入っている。
 
ピアノ曲が木管五重奏曲になると、メロディが浮き立って曲が持っている抒情性が増している。その一方で木管楽器特有のとぼけた味わいが感じられた。「フーガ」が優しい曲で、木管楽器の音色が微妙に変化していく様が味わい深くて、なんだか癒やされる気分。メヌエットは有名なメロディで、オーボエが吹くと哀愁感たっぷりに聴こえた。「リゴードン」は速めのテンポで力ワイさを演出。
 
アンドレ・ジョリヴェは1905年生まれのフランスの作曲家。生まれが20世紀になると、かなり曲想が現代的になってくる。響きが奇妙で前衛的な印象を受けるが、断片的にはメロディがあったりして結構楽しめる。第2楽章は2人(オーボエとバソン)が暗闇の中で奇妙なダンスを踊っているようなイメージだった。
 
ダウリス・ミヨーは、1892年、エクス=アン=プロヴァンス生まれの作曲家。「ルネ王の暖炉」は「愛の騎馬行列」という映画のために作った曲を7曲の木管五重奏組曲に編曲したもの。「ルネ王」とは、15世紀にプロヴァンス伯としてプロヴァンス地方を治めていたヴァロワ家傍系(ヴァロワ=アンジュ一家)のフランス貴族ルネ・ダンジューのことで、一時ナポリ王位に就いていたため「ルネ王」(roi Rene)と呼ばれ、また「善良王」 (Le bon)の異名を持つ。
 
ミヨーの故郷エクス=アン=プロヴァンスには、冬の間もよく日が当たって風が当たらず暖かい場所があって、ルネ王はそこへ毎日のように出かけたという逸話があり、エクスの人々はその場所を「ルネ王の暖炉」と呼んでいたことからこうした題名がついたらしい(ウィキペディア)。
 
曲はとても色彩感豊かで、カワイイメロディがふんだんに出てくる。お伽噺の伴奏のような曲でとても聴きやすかった。7曲がそれぞれ特徴的で、動きがあっておどけた曲や、穏やかで抒情的な曲など、聴いていて飽きさせない楽しさがある。

ポール・タファネルは1844年、ボルド一生まれの作曲家。ちょっと時代が遡るので、曲調がロマンチックに感じる。CD1の中で一番「普通」な曲だ。それ故一番特徴がないように感じる。他の曲に比べて響きが伝統的だから。所々抒情的で瑞々しいメロディが聴かれるが、曲全体としての求心力に欠けるような気がした。
 
レ・ヴァン・フランセ
「フランスの風、20世紀の木管五重奏曲」CD-1 
1.イベール「3つの小品」 
2.ラヴェル「クープランの墓」
3.ジョリヴェ「オーボエとファファゴットのためのソネチネ」
4.ミヨー「組曲"ルネ王の暖炉"」 
「行列」「朝の歌」「軽業師」「ラ・マウザングラード」「アルク川での馬上試合」「ヴァラブルでの狩り」「マドリガル・ノクチュルヌ」
5.タファネル「木管五重奏曲」
レ・ヴァン・フランセ
フルート:エマニュエル・パユ(Emmanuel Pahud)
オーボエ:フランソワ・ルルー (Francois Leleux)
クラリネット:ポール・メイエ (Paul Meyer)
ホルン:ラドヴァン・ヴラトコヴィチ (Radovan Vlatkovic)
バソン:ジルベール・オダン(Girbert Audin)
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