ヴァインベルクの珍しい木管楽器のための室内楽を集めたCD。木管楽器のための曲は、同じ室内楽の弦楽四重奏曲とは趣を異にしている。音楽が緊密に書かれていて充実度が高い弦楽四重奏曲に対して、木管楽器は内省的というか、緊密度が薄い替りに、音楽が心の中を彷徨い迷っているような印象を受けた。
また各楽器固有の響きや特性に音楽が影響を受けている。クラリネット・ソナタはほの暗く愁いを秘めた音色が音楽に生かされていて、ヴァインベルク特有の抒情的なメロディが心にしみる。イギリスの作曲家が書いているクラリネットのための曲と似たような印象だった。
「フルートとピアノのための12の小品」は、いかにも演奏会用の小品って感じ。前衛的で不気味な響きは後退し、明るく爽やかなフルートの音色を生かした音楽になっている。もちろんヴァインベルクの曲なので、古典派音楽のように朗らかではなく、不協和音の多用が歪んだ響きを作り出している。プロコフィエフのフルート・ソナタを彷彿とさせるが、そこまで緊張感のある曲ではなかった。
無伴奏ファゴットのためのソナタは大変珍しく、ロシアの名ファゴット奏者ヴァレリー・ポポフのために書かれた曲だ。ファゴットがひたすらモノローグを展開して行く様子はユーモラスで、ファゴットという楽器がこんな表情を出すこともできるんだと感心させらるが、これを聴いて弦楽四重奏や交響曲のように感動するかと言えば、そうは思わない。やっぱり音楽がスカスカで、充実度が薄い気がする。物珍しさも手伝って感心するが、感動するところまで行ってない。
フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタは、有名なドビュッシーのソナタと同じ編成。ドビュッシー以前にこの編成のソナタはなかったが、ドビュッシー以後は同じ編成の曲が増えている。武満徹も「そして、それが風であることを知った」という曲を作っている。
ドビュッシーはメロディがハッキリしていて古典的なスタイルを生かしながら、爽やかで神秘的な響きを作り出していたが、ヴァインベルクはハッキリ言って暗い。不協和音が不気味な音を響かせ、フレーズへの拘りが強迫的な印象を与えるが、編成のせいで頭を抱えるような重苦しさは軽減されている。
ドビュッシーはメロディがハッキリしていて古典的なスタイルを生かしながら、爽やかで神秘的な響きを作り出していたが、ヴァインベルクはハッキリ言って暗い。不協和音が不気味な音を響かせ、フレーズへの拘りが強迫的な印象を与えるが、編成のせいで頭を抱えるような重苦しさは軽減されている。
第1楽章は幽玄なフレーズで神秘的に始まる。旋律はハッキリ明確に聴こえて来るが、雰囲気はとても不気味な色彩が濃い。第2楽章は第1楽章よりは明るい雰囲気だが、かえってそれが虚ろな感じに聴こえる。無気力と言うか絶望的というかやるせないというか、素直に明るさを喜べない感じ。
第3楽章になってテンポが速くなり、ちょっとは爽やかになるかと思ったが、ホントにちょっとだけだった。相変わらず不気味な音楽が続き、編成の透明さとフレーズの不気味さが、奇妙な雰囲気を作り出しているような曲だった。
1 クラリネット・ソナタOp.28
2 フルートとピアノのための12の小品Op.29
3 無伴奏ファゴツトのためのソナタOp.133
4 フルート、ヴィオラ、ハープのための三重奏曲Op.127
P:エリザヴェッタ・ブルミナ
Cl:ヴェンゼル・フックス
Fl:へンリク・ヴィーゼ,
Fg:マティアス・パイア
Vn:ニムロッド・グェス
Hrp:ウタ・ユングヴィルト