1779年3月23日 ザルツブルクで作曲されたミサ曲。「戴冠式」という題名は後年つけられたもので、モーツァルトはあずかり知らぬ名前。作曲動機については諸説あったが、現在では1779年4月4日か5日にザルツブルクで行われた復活祭で演奏するために書かれたというのが有力になっている。もっともこの曲がモーツァルトの生前戴冠式に演奏された可能性はあるので、あながち根拠のない題名ではないのかもしれない。
1985年6月29日に、ローマのヴァチカン、サンピエトロ大聖堂で教皇ヨハネ・パウロ二世により挙行された荘厳ミサ全体より、奉献文、教皇の説教などを除いたライブ・ハイライト盤。典礼はラテン語、聖書朗読はスペイン語、英語。アヴェ・ヴェルム・コルプスはヘルムート・フロシャウアーの指揮で、途中で教皇庁立教会音楽学院聖歌隊によって歌われるグレゴリオ聖歌などもカラヤンの指揮ではない。
教皇ヨハネ・パウロ2世のお祈りや朗読、アレルヤ合唱など、ミサの雰囲気が味わえるので、モーツァルトの時代にはこうしたミサの行事をはさみながら演奏されたことが実感できる。と言いつつ、お祈りなどは何度も聴かなくていいかな。
演奏はライブで真価を発揮するカラヤンの面目躍如。迫力満点、緊張感の漲る演奏が繰り広げられている。グローリアの速めのテンポで畳みかけるのような表現はライブのノリに痺れてしまう。ヘルムート・フロシャウアーの指揮するウィーン楽友協会合唱団が大活躍で、ハッキリした鋭い発音で音楽のフォルムをくっきり浮かび上がらせている。
バトルはこうした宗教的な曲に相応しい歌い方で対応し、ツェルリーナのおきゃんな歌い方とは一味違っている。特にアニュス・デイでは表現の幅が大きく感動的な歌唱を披露した。バトル、一世一代の歌唱ではないか。
一回きりのライブ録音なので制約が多かったと思うが、それなりによく録れている。オーケストラやソリストの残響は少なめだが、フレーズが終わった時には音が残っているのが分かる。教皇の声がクローズアップされて十分響いており、ちょっと違和感があった。
キャスリーン・バトル(S)
トルデリーゼ・シュミット(A)
エスタ・ヴィンベルイ(T)
フェルッチョ・フルラネット(B)
ウィーン楽友協会合唱団(合唱指揮:ヘルムート・フロシャウアー)
ルドルフ・ショルツ(オルガン)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
トルデリーゼ・シュミット(A)
エスタ・ヴィンベルイ(T)
フェルッチョ・フルラネット(B)
ウィーン楽友協会合唱団(合唱指揮:ヘルムート・フロシャウアー)
ルドルフ・ショルツ(オルガン)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン