NadegataPapaのクラシック音楽試聴記

クラシック音楽の試聴記です。オーケストラ、オペラ、室内楽、音楽史から現代音楽まで何でも聴きます。 カテゴリーに作曲家を年代順に並べていますが、外国の現代作曲家は五十音順にして、日本人作曲家は一番下に年代順に並べています。

カラヤン

モーツァルトミサ曲 第14番 ハ長調“戴冠式ミサ”K.317」カラヤン指揮ウィーン・フィル

教皇ヨハネ・パウロ2世により挙行された荘厳ミサ モーツァルト:ミサ曲ハ長調 K.317
ウィーン楽友協会合唱団
ユニバーサル ミュージック クラシック
2005-12-14

 1779年3月23日 ザルツブルクで作曲されたミサ曲。「戴冠式」という題名は後年つけられたもので、モーツァルトはあずかり知らぬ名前。作曲動機については諸説あったが、現在では1779年4月4日か5日にザルツブルクで行われた復活祭で演奏するために書かれたというのが有力になっている。もっともこの曲がモーツァルトの生前戴冠式に演奏された可能性はあるので、あながち根拠のない題名ではないのかもしれない。

1985年6月29日に、ローマのヴァチカン、サンピエトロ大聖堂で教皇ヨハネ・パウロ二世により挙行された荘厳ミサ全体より、奉献文、教皇の説教などを除いたライブ・ハイライト盤。典礼はラテン語、聖書朗読はスペイン語、英語。アヴェ・ヴェルム・コルプスはヘルムート・フロシャウアーの指揮で、途中で教皇庁立教会音楽学院聖歌隊によって歌われるグレゴリオ聖歌などもカラヤンの指揮ではない。

教皇ヨハネ・パウロ2世のお祈りや朗読、アレルヤ合唱など、ミサの雰囲気が味わえるので、モーツァルトの時代にはこうしたミサの行事をはさみながら演奏されたことが実感できる。と言いつつ、お祈りなどは何度も聴かなくていいかな。

演奏はライブで真価を発揮するカラヤンの面目躍如。迫力満点、緊張感の漲る演奏が繰り広げられている。グローリアの速めのテンポで畳みかけるのような表現はライブのノリに痺れてしまう。ヘルムート・フロシャウアーの指揮するウィーン楽友協会合唱団が大活躍で、ハッキリした鋭い発音で音楽のフォルムをくっきり浮かび上がらせている。

バトルはこうした宗教的な曲に相応しい歌い方で対応し、ツェルリーナのおきゃんな歌い方とは一味違っている。特にアニュス・デイでは表現の幅が大きく感動的な歌唱を披露した。バトル、一世一代の歌唱ではないか。

一回きりのライブ録音なので制約が多かったと思うが、それなりによく録れている。オーケストラやソリストの残響は少なめだが、フレーズが終わった時には音が残っているのが分かる。教皇の声がクローズアップされて十分響いており、ちょっと違和感があった。

キャスリーン・バトル(S)
トルデリーゼ・シュミット(A)
エスタ・ヴィンベルイ(T)
フェルッチョ・フルラネット(B)
ウィーン楽友協会合唱団(合唱指揮:ヘルムート・フロシャウアー)
ルドルフ・ショルツ(オルガン)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
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モーツァルト「ディヴェルティメント第15番K.287」カラヤン指揮ベルリン・フィル

モーツァルト:セレナード第13番「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、ディヴェルティメント第15番
ヘルベルト・フォン・カラヤン
ユニバーサル ミュージック
2016-09-07

カラヤンはこの曲を気に入っているのか3回も録音している。1回目は1952年~55年にフィルハーモニア管と、2回目は1965年にベルリン・フィルと。これは3回目の1987年の録音。オケはベルリン・フィル。

カラヤンならこういった演奏をするだろうという予想通りの演奏だが、その美しさは比類がない。リッチでゴージャス。美しく磨き上げられた弦楽器はビロードの様。未だかつてこれほど美しさに拘ってオーケストラを磨き上げた指揮者がいただろうかというくらい美しい。

特に弦楽器の高音域はカラヤンじゃなければ出せない音色。引き絞ったような純粋な音で、こんな音は他の演奏家では聴いたことがない。ニュアンス豊かで、どこにも荒っぽさやゴツゴツしたところはなく、全てが流麗に、そして軽やかに、気品をもって流れていく。古楽器オケの対極にあるような演奏で、それは20世紀前半の美学に貫かれている。

1777年6月にザルツブルクで書かれたディヴェルティメント。ザルツブルクの貴族ロドロン家のアントニーナ夫人の霊名の祝日のために書かれた。1年前にも 同様の理由でディヴェルティメントが書かれており「第1ロドロン・ セレナーデ」と呼ばれ、K.287は「第2ロドロン・セレナーデ」と呼ばれている」。

この曲を書いた1777年、モーツァルトはコロレド大司教に休暇願を出し旅に出る。窮屈なザルツブルクにはもういられない。こんなところにいたんじゃ、俺は田舎の宮廷音楽家で埋もれてしまう!と思っただろう。

しかし今までの様に父レオポルトと一緒という訳にはいかない。父は一旦クビになった後大司教に復職願を出して認めてもらったばかりなのだ。今、君主の機嫌を損ねることは絶対にできなかった。かといって、ヴォルフガング一人をたびに出すわけにもいかない。何しろ息子はまったく世間知らずのお子ちゃまで、音楽以外は身の回りのことを何一つ自分でできないのだ。

仕方なく、母がつい行くことになった。母マリア・アンナ・モーツァルト、この時57歳。楽天的で健康的でこだわりのない性格、息子を目に入れても痛くないほど可愛がっていたということだが、いままで旅行のこまごましたことは全部レオポルトがしていたのだ。さぞかし不安だっただろう。

しかし行かねばならぬ。天才ヴォルフガングをザルツブルクの田舎に埋もれさせてはならない。息子を世に出すことに人生を賭けて来たのだ。1777年9月。母と息子は故郷ザルツブルクを後にした。

伝記 モーツァルト―その奇跡の生涯
ブリギッテ ハーマン
偕成社
1991-12T






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モーツァルト「交響曲第29番 イ長調 K.201 (186a)」カラヤン指揮ベルリン・フィル

Symphonies 29 & 39
Bpo
Polygram Records
1990-10-25

1987年2月の録音。カラヤン最晩年の録音で、本拠地ベルリンのフィルハーモニー・ザールで録られている。カラヤンはこの曲を1960年DGと1965年EMIにベルリン・フィルと録音しており、演奏会でも採り上げていることから、後期の交響曲ほどではないが、気に入ったレパートリーとしていたのだろう。1988年5月2日東京サントリーホール公演でも採り上げられ、CD化されている。

晩年のカラヤンらしく、ベルリン・フィルの弦が徹底的に磨き上げられ、ビロードのような滑らかな感触で演奏されている。当時普及しつつあった古楽器奏法などまったく意に介さず、19世紀から続く大オーケストラによるモーツァルト演奏が貫かれている。

何となくロマン派の交響曲を聴いている気分になってくる。スケールが大きく感情の起伏を大きく表現するやり方は、20世紀前半の美意識と言っていいだろう。それもここまで徹底的に追及されると、有無を言わさない説得力がある。

第1楽章のテンポは速めで、手触りが美しい故の停滞感はなく、力強く進んでいく。対照的に第3楽章はテンポを遅く取って、ロマンチックな情感を露にしている。こんなロマンチックなモーツァルトは今ではもう聴くことができない。

このCDの聴き物は何といっても第39番。冒頭序奏のスケールの大きさ、音楽の深さは、モーツァルトが意図したものを超えてるんじゃないかと思うほど。リヒャルト・シュトラウスかワーグナーを聴いている気分になってくる。こうした演奏を受け入れる余地がモーツァルトの後期の交響曲にはあるという事だが、この楽譜からそれをイメージして再現するカラヤンも凄い。一度聴き始めたら耳を話せない面白さだ。

交響曲第29番は、1774年4月6日 ザルツブルクで作曲。ザルツブルク宮廷の依頼で書かれたと思われるが、モーツァルトはこの曲を気に入っていたらしく、ウィーンで自活するようになってからもこの曲の楽譜を送ってくれるよう父に手紙を書いている。

 1783年1月4日の手紙で、父に催促したのは次の4曲。①セレナードニ長調K.204 ②交響曲第29番 イ長調K.201 ③交響曲第28番変ロ長調K.182 ④交響曲第25番ト短調K.183。多分ウィーンで開いた自身の演奏会で演奏されたのだろう。
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モーツァルト「ディヴェルティメント(K.136,K.137,K.138)」カラヤン指揮ベ ルリン・フィル

モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク
カラヤン(ヘルベルト・フォン)
ユニバーサル ミュージック クラシック
2005-06-29

1772年(16歳)の1〜3月にザルツブルクで書かれた3曲のディヴェルティメント。いずれも編成は弦楽四重奏になっているが、室内楽的というより奏者を複数にすればシンフォニーとすることができる音楽になっている。イタリアやミ ラノで聴いた弦楽器奏者の名人芸に触発されてイタリア的な音楽の追及を始めたと言える。



K.136
カラヤンらしい音作りで、ベルリン・フィルの低音域が非常に充実している。豪華で脂の乗ったモーツァルトで、少年モーツァルトが立派で恰幅の紳士になっている。第2楽章は意外にテンポが速く、ロマンチックな味わいとはちょっと違っている。ここはいつものカラヤンらしく耽溺するような音楽になっているかと思った。

第3楽章も速い。ベルリン・フィルの弦楽セクションがスリリングな切れ味を出している。ノリにノッテル感じ。

K.137
第1楽章はしっとり落ち着いた中にも堂々として風格がある。第2楽章は例によってスピード重視で攻めている。溌溂とした生気があっていい感じ。

K.138
この曲も同じパターンで演奏されている。第1楽章はしっかりと緊張感をもった立派な演奏。この第2楽章は心持ち遅めのテンポでしっとりとした情緒が感じられる。第3楽章には勢いがあり、爽快に駆け抜けている。

1960年代の録音なので、少々音が古くなったことは否めない。現在、モーツァルトをこんな風に豪華に演奏する人はいないので、音が古くなってもこの演奏の価値は永遠に失われないだろう。

Kaarjan Mozart

ベートーヴェン「交響曲第9番”合唱付き”」カラヤン指揮ベルリン・フィル

Beethoven - Symphony No 9 [DVD]
Karajan
Medici Arts
2008-02-29

1977年12月31日ベルリン・フィルハーモニーでのライブ収録。カラヤンとベルリン・フィルの映像によるベートーヴェン交響曲全集に含まれていたもので、私はこのレーザーディスクセットを大枚はたいて買ったが、それがなんと今ではYouTubeでタダで見られるとは。

オーケストラのメンバーを三角の台の上にのせてその前でカラヤンが指揮棒を振るという凝った映像が多かったが、この第9番はライブ収録なので演奏会での自然な姿が見られる。それでも現在よくあるコンサート映像とは少々趣が違っていて、カラヤンが真正面からとらえられていたり顔のアップが多用されていたりしている。

演奏はライブならではの緊張感が高いもので、特に第1楽章のラスト近く、ティンパニィの連打の場面辺りからは物凄い迫で迫ってくる。最後にビシッと決める姿は誠にカッコいい!

第2楽章は、ともすれば力押しの演奏になってしまいそうな曲で、冒頭から速めのテンポで力一杯ぶちかましてくれる。ライブならではの迫力だが、歌う所はちゃんと雰囲気たっぷりに歌ってくれるので、この切り替えの見事さに感心してしまう。

第3楽章の様な音楽は、カラヤンはとても上手い。決して甘く媚びるような歌わせ方はせず、堂々と正統派の歌を聴かせ。それで心が洗われるような崇高な美しさを表現できるのはカラヤンの美意識のなせる業だと思う。

この曲を聴くといつも思うのは、第4楽章だけ、何だか他の楽章と違っているってこと。歌手と合唱が入ることもあるが、それまでストイックにひたすら素材の変化で聴かせていた音楽が、ここにきて祝祭的音楽に変わり、「これまでのことは忘れてパッとやろうや!」と開き直っているように聴こえる。

もちろん、全く歓喜の歌をぶち上げて終わるだけの音楽ではないのは重々分かっているが、どうしてもこの年末によくかかってるメロディを聴くと、そんなことを考えてしまう。

カラヤンの演奏は、決して恣意的なテンポ変化などせず、縦の線をきっちり合わせ、アクセントは固く、速めのテンポでかっちりとした造形で力強く進んでいく。しっかりした伝統の上に築かれた確固としたベートーヴェンって感じだった。




Symphonies Nos. 5 & 9 [Blu-ray]
Karajan
Euroarts
2015-03-02



ベートーヴェン「交響曲第7番」カラヤン指揮ベルリン・フィル1978.1.28

Karajan

数年前に通信販売で購入したカラヤン&BPhのライブCD-R。当時カラヤンのライブCD-Rがたくさん売られていたが、ベートーヴェンはこの7番しか買わなかった。今となっては、もっと買い漁っていればよかったな~と、ちょっと後悔している。

ベートーヴェン「交響曲第7番」
1978年1月28日 ベルリン、フィルハーモニーホールでの収録。前半ではシューマンの交響曲第4番が演奏された。

多分ラジオ放送用の録音だと思うけど、音は悪くない。さすがに最新録音並みとは言えないし、細かい所がハッキリ聴こえてこないが、鑑賞に支障はないレベル。

第1楽章
セッション録音に比べてトゥッティで打ち付ける所での力の込め方が凄く、熱い思いを感じる。そういった所での音色は明るく、非常に前向きな力強さを感じる。テンポも速めだが、この曲でのセッション録音も少々速めのテンポ設定だった気がするので、この点は変わりないのかも。

第2楽章
よどみのないスムーズな音楽運びはセッション録音と同様だが、ダイナミクスの大きさが際立っている。途中で盛り上がる所で見せる精神的な高揚は胸を打つし、弦だけで奏でられるピアノの部分も強い緊張感を維持している。

第3楽章
この楽章でも前進性が凄い。どんどん前に進んでいく。この楽章でこんなに力強く推進する必要があるのか?という気がするくらい、迫力があった。

第4楽章
70年代、80年代のセッション録音でも迫力十分の演奏を聴かせていたが、ここではもっと熱狂的な演奏になっている。フィナーレはもの凄い感情の爆発で、思わず叫び出したくなるほど。これに比べたらセッション録音はキレイにまとまっているイメージがしてしまう。叩きつける音はきちんと揃えようなどと言うレベルを超えた、白熱の高揚感が味わえる。終わった後の叫び声と拍手も凄かった。


ベートーヴェン:交響曲第7番&第8番(SHM-CD)
ヘルベルト・フォン・カラヤン
Universal Music
2018-10-24

80年代のデジタル録音。



ベートーヴェン:交響曲第5番&第7番
カラヤン(ヘルベルト・フォン)
ユニバーサル ミュージック クラシック
2006-11-08

70年代の録音。

ブラームス「交響曲第1番」カラヤン指揮ウィーン・フィル

ブラームス:交響曲第1番、悲劇的序曲
ヘルベルト・フォン・カラヤン
ユニバーサル ミュージック
2019-12-18

1959年、カラヤン51歳の時の録音で、この曲をウィーン・フィルと録音したのはこれが唯一だ。

第1楽章
この曲の冒頭は、オーケストラのトゥッティで始まり、その合奏の力がものを言う場所だ。後のカラヤンとベルリン・フィルの録音では、圧倒的な音圧が迫ってきて、誠に力強いのだが、少々押しつけがましいというか、重戦車の進軍の様な勢いに圧倒される時もある。体調のすぐれない時に聴くとなおさらだ。

その点このウィーン・フィルとの録音は、弦の音が引き締まっていて、力強さはあってもスッキリしているので聴きやすい。ベルリン・フィルの弦はスケールが大きいが音が拡散しているイメージがあった。

若い時の録音だが、テンポはむしろ遅めで、フレーズをゆっくりと着実に掘り下げながら進んでいる。後の録音はもっとサラッと進んでいたような気がする。要所要所で渾身の力を籠めるのはいつものカラヤンだが、のべつまくなし力で押すようなことはないので、思いのほかスッキリしていた。「あれ?もっとガンガン行くんじゃないの?」と思った所もいくつかあった。

第2楽章
ここでもテンポはゆっくりで、じっくり進んでいく。前半のオーボエのソロが情感たっぷりに歌っているのが素晴らしい。全体的にカラヤンの意思が強く表れていて、人工的な感じもするが、ウィーン・フィルの音色の魅力がそれを不自然に感じさせないようにしている。

第3楽章
ここでもウィーン・フィルの管楽器奏者たちの名人芸が光っている。何とのびやかに、屈託なく、そして情感込めて歌うのか。聴いていて、しばし陶酔の境地に浸れる。

第4楽章
序章の間は遅めのテンポでじっくり入念に情景を描き出す。その後出てくる歓喜の歌に似たテーマのテンポは中庸。ここは後の録音でも遅くしたり速くしたりしないので、カラヤンの中で不動のイメージがあるのだろう。歓喜の歌から盛り上がって行くところは段々スピードを速めて爆発的な盛り上がりに持って行く。この辺の演出の上手さはカラヤンならでは。

フィナーレは若々しい覇気があって、音色も明るめ。とても力強くポジティブに表現されている。ベルリン・フィルとの録音とはフレーズの歌い方も、テンポの揺らし方も、音色も、一味違っていて、非常に面白かった。


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ロッシーニ「弦楽のためのソナタ」

Rossini;Four String Sonatas
Berlin Philharmonic
Deutsche Grammophon
2002-10-07

ジョアキーノ・アントーニオ・ロッシーニ(イタリア語: Gioachino Antonio Rossini, 1792年2月29日 - 1868年11月13日)は、イタリアの作曲家。「ウィリアム・テル」や「セビリアの理髪師」など、大ヒット・オペラを幾つも手がけ「ナポリのモーツァルト」と讃えられた。ベートーヴェンはその才能を認めていたが、あまりに持て囃されるので歯噛みしたとか。おまけに美食家でハンサムとか、どんだけリア充なのか。

私はロッシーニのオペラは、有名な作品をいくつか見たことがあるが(テレビで)、いずれも1回見ただけで何度も見返すことはなかった。セビリアの理髪師はどこの公演を見たのか覚えていない。ウィリアム・テルはロンコーニの演出でムーティが指揮していた奴。舞台の上を大きな画面が移動していた事しか覚えていない。

アバドが150年ぶりに蘇演したという「ランスへの旅」もNHKでみたが、音楽は豊かで美しかったが、やたら長くてストーリーに緊張感がなくて退屈したのを覚えている。

そういうわけで、ロッシーニの肝であるオペラには馴染みがないが、この6つの弦楽のためのソナタはモーツァルトを思わせるような明るく朗らかな音楽が楽しめる。これが12歳の時の夏、イタリアのラヴェンナに滞在中に書かれたというのだから驚きだ。

いろんな編曲がなされているが、原曲はヴァイオリン2本、チェロ、コントラバスという編成で書かれている。カラヤンとベルリン・フィルによる演奏はベルリン・フィルの豊潤な弦を活かし、カラヤンお得意のレガート奏法でとても美しく仕上げられている。少々時代がかっている気がするが、混じりけのなく分厚い弦の響きは弦楽合奏を聴く喜びを感じさせてくれる。


ロッシーニ:弦楽ソナタ集
アンサンブル・エクスプロラシオン
キング・インターナショナル
2003-02-26
  
こちらはチェロ奏者、ロエル・ディルティエンスRoel Dieltiensが1995年に設立したアンサンブル・エクスプラシオンEnsemble Explorationsによるアルバム。弦楽オーケストラで演奏されることが多いロッシーニ「弦楽ソナタ集」をオリジナル形態で演奏している。しかも楽器は古楽器を使っており、ロッシーニの時代に響いたであろう音楽を再現している。

カラヤン盤の様な豊潤さはないが、素朴な味わいがあってなかなかいい。少しささくれだった雑音が混じる弦の音がリアル。

Rossini: Une larme
harmonia mundi
2013-01-21


『ロッシーニ:弦楽のためのソナタ集-2』
【曲目】
1) セレナータ変ホ長調
2) 弦楽のためのソナタ第6番ニ長調
3) チェロとコントラバスのための二重奏曲ニ長調
4) 弦楽のためのソナタ第3番ハ長調
5) ひとつぶの涙(主題と変奏)
【演奏】
ロエル・ディールティエンス(指揮(1,2,4)、チェロ(3,5))
アンサンブル・エクスプロラシオン
【録音】
2001年12月,2003年10月 アカデミーザール,St Trond,ベルギー

A-2391096-1456587561-9710


Gioacchino Rossini: Sonatas for Wind Quartet
tg-edition
2017-09-22

ロッシーニの弦楽のためのソナタにはいろんな編曲版があって、フルートと弦楽器とか、このCDのような管楽器4本による演奏もある。多分フルート、クラリネット、ファゴット、ホルンじゃないかな。

弦楽合奏版とは全然雰囲気が違っている。管楽合奏になるとちょっとユーモアがあって、優しい感じなる。こっちの方が聴いていてほっとする。



 



チャイコフスキー、ドヴォルザーク「弦楽セレナード」カラヤン指揮ベルリン・フィル

チャイコフスキー&ドヴォルザーク:弦楽セレナード
カラヤン(ヘルベルト・フォン)
ユニバーサル ミュージック
2016-09-07

チャイコフスキーとドヴォルザークは、 ドヴォルザークが1つ年上と同年代だし、同じスラヴ民族で、ヨーロッパの辺境の地から世界的な名声を得た作曲家という共通点もある。生前2人は結構親交があったようだ。

具体的には、1888年2月1日プラハを訪れたチャイコフスキーがドヴォルザークの来訪を受け、2人は意気投合して2時間も話し込んでいる。同じ年の11月に再びプラハを訪れ、エフゲニー・オネーギンを上演した際にも、 ドヴオルザークとチャイコフスキーは旧交を温めているそうだ。

1889年1月にはドヴォルザークから熱烈な内容の手紙を受け取っているし、2月にはロシアにドヴォルザークを招待する計画を立て、了承されている。この演奏会は1990年モスクワで実現している。

音楽的にも同質なところが多い2人なので、気が合えば仲を妨げるものはなかったのではないかと思うが、何せチャイコフスキーは同性愛者なので、下衆な私としては、あまりに篤い友情はつい変なことを考えてしまうのだ。

チャイコフスキー「弦楽セレナード」
チャイコフスキーの弦楽セレナードは1880年に作曲され、モスクワ音楽院に着任した時からの親友コンスタンチン・アルブレヒトに献呈された。初演は1881年10月18日、ペテルブルクでナプラヴニクの指揮で行われている。

第1楽章、ベルリン・フィルの大編成弦楽セクションによるロマンチックな演奏。チャイコフスキーは総譜に「弦楽奏者は多ければ多いほど作曲者の意図に合う」と書いているので、こうした行き方は間違いではないだろう。

1980年の録音で、冒頭は弦の手触りがハッキリしないかなと思ったが、高音域が主体になるとクリアに聴こえて来た。歌い方はシンフォニックで、揺るぎない造形による演奏だが、抒情的なところもしっかり味わえる。

結構緊張感の強い演奏を繰り広げていて、細かい音符の一つ一つ確実に音にしている。それを速めのテンポで弾ききり、大見得を切る冒頭主題もスケールが大きく思い切って決めている。

第2楽章はお得意のワルツ。優美にして豪華。この上なく美しく、一般的なイメージ通りの演奏で、ベルリン・フィルの研ぎ澄まされた弦の高音域が切れそうに美しい。

第3楽章、エレジー。瑞々しい表現で、抒情的な香りを振りまいているが、テンポを落として過度にのめり込むようなことはしない。最近ならこうした所はぐっと遅くして演奏する人もいそうだけど、カラヤンは割とイン・テンポを貫いている。

第4楽章は前半の濃厚は表現が思い入れたっぷりでいい。段々盛り上がっていって、第1楽章の冒頭テーマが再現されるところは、正に感動的。この曲はこうあって欲しいと思うとおりの演奏で大満足だ。

ドヴォルザーク「弦楽セレナード」
ドヴォルザークの弦楽セレナードは、1875年5月に作曲され、1876年12月10日にアドルフ・チェヒの指揮するプラハ・フィルによって行われた。 ドヴォルザークがオーストリア政府から奨学金を与えられ、将来に光が見えてきた時期に当たる。

ロマンチックでスケールの大きいチャイコフスキーに比べて、 ドヴォルザークの弦楽セレナードは、瑞々しい親しみ易さに溢れていて室内楽的だ。第1楽章冒頭のメロディの、何と美しいことか。何度聴いても聴き惚れてしまう。

第2楽章は、ドヴォルザーク特有の物悲しく哀愁を感じさせる舞曲。そんな中にも懐かしい趣があり、聴いていると胸を切なくさせるようだ。 

特に胸を打つのが第4楽章。チェコの有名なドヴォルザーク研究家のショウレックはこの楽章について「愛の力と美と高貴を歌った夜想曲」「夜のしじまを破る優しいその風のような小さい間奏曲」と最高の賛辞を送っている。

専門家がこんな表現をするのはどうなのか?とも思うが、考えることは専門家も素人も同じなのか、この言葉どおりの美しい音楽だ。ここはベルリン・フィルの弦が絶品。

第5楽章は緊張感を湛えた躍動的な楽章。チャイコフスキーと同じように、第1楽章冒頭の美しいメロディが戻って来て感動的。静かにこのメロディが演奏され、激しいコーダに繋がって幕となった。

①ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
「弦楽セレナード、ハ長調作品48」1880年
②アントニン・ドヴォルザーク
「弦楽セレナード ホ長調作品22」1875年
指揮:ヘルベルト:フォン・カラヤン
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
収録:1980年9月21-23日28、30日
ベルリン、フィルハーモニーホール
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バッハ「ブランデンブルク協奏曲」カラヤン指揮ベルリン・フィル

バッハ:ブランデンブルク協奏曲全曲
カラヤン(ヘルベルト・フォン)
ユニバーサル ミュージック
2013-11-13

カラヤンが録音したバッハのブランデンブルク協奏曲。1978年から79年にかけて録音され、ソリストには当時のベルリン・フィルの首席奏者が起用されている。1965年にもベルリン・フィルのメンバーと録音しており、この時はデジタルでの2回目の録音となる。

当時は古楽器オーケストラでの演奏が少しずつ広がりつつあった頃だった。作曲家が生きていた時代の楽器で演奏することをどう思うか?と問われたカラヤンは「ナンセンス!」と答えており、当時幅を利かせつつあった古楽器による演奏に対するカラヤンの答えと受け取っていいだろう。

第1番
今聴くととても面白い演奏だ。第1楽章はとても速いテンポで始まる。65年の演奏はここまで速くなかった。ちょっと急いでいるようにも聴こえてしまう。

第2楽章は弦のレガート奏法が美しく、思わずうっとりさせられるが、楽章ラストの極端なppにはビックリ。まるでロマン派オペラの間奏曲を聴くような演出で、「おっと!そこまでやるか!?」とうなってしまった。

第3楽章もテンポをグッと落として、じっくり聴かせる演出は心憎い。

第4楽章は極端に遅めのテンポをとっており、古楽器演奏に慣れた耳には異様に聴こえる。神々しく壮麗な演奏でまるでオペラに出てくる神殿での儀式の様なイメージ。9分58秒もかかっている。ちなみに65年の演奏では12分以上かかっていて、すごく重厚な雰囲気だったので、これでもちょっとは速くなった方なのだ。

第4番の第2楽章の様なゆったりとした楽章は、ロマンチックな美観がたっぷり味わえる。恋愛映画のバックに流れていそうなイメージで、悲劇的な感傷に浸れる。

第5番
余裕のテンポで始まる。終始エレガントな雰囲気が漂っていて、ちょっとアンニュイな感じさえしてくる。チェンバロの独奏からトゥッティに入る所など、きっとカラヤンなら思いっきり盛り上げてくるに違いないと思ったが、そうでもなく、あくまで上品に決めていた。こうして聴いていると、最近の古楽器演奏がとても乱暴なものに思えてくる。

6番の第2楽章もいい。何だか気持ちが沈み込んでいくような気分になる。暗いけれど美しくしんみりとした感情。マーラーの5番のアダージェットに通じるものがある。

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