(社説)小池氏3選 改めるべき点を忘れず

社説

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 勝利に安堵(あんど)する余裕はない。山積する難題に全力を挙げ取り組まねばならない。

 東京都知事選小池百合子氏が3選を決めた。8年間にわたる小池都政の継続の是非が問われたが、都民は現職に再びかじ取りを託した。

 少子化や医療費の増大、介護人材不足が懸念される高齢化など、一刻の猶予もない課題ばかりだ。過去の政策の成果が不十分な点も省みて、策を練り直すのが急務だ。

 小池氏は公約で無痛分娩(ぶんべん)の費用助成や保育無償化の対象拡大などを掲げた。だが、お金を配ってどれだけ効果があるのか、疑問の声がある上、他の自治体との格差を広げ、一極集中を加速させかねないといった批判もある。首都以外にも視野を広げ、多角的に検討する必要がある。

 選挙では議論が深まらなかった重要な問題も多い。

 明治神宮外苑の再開発を小池氏は「争点にならない」と明言したが、認可を与えたトップとして無責任ではないか。樹木伐採や高層ビル計画には強い反対の声がある。地元への説明など意思決定のあり方も問われており、見直しを含め再考してもらいたい。

 「首都防衛」というなら災害時のデマ対策も首長の任務だ。関東大震災後に朝鮮人らが虐殺された史実に背を向けるような姿勢は改め、朝鮮人らを悼む式典への追悼文の送付を再開すべきである。

 残念だったのは、候補者同士がテレビなどで討論する場が十分になかったことだ。他候補からは小池氏が応じなかったと批判された。もしそうなら、なぜ現職として受けて立ち、有権者に判断の材料を示そうとしなかったのか。不都合なテーマでの論争を避けたなら、信任を得たと胸を張ってはいえまい。トップとしての説明責任の重さを改めて自覚しなければならない。

 今選挙は、選挙運営についても課題を残した。過去最多の56人が立候補し、うち24人は同じ政治団体関連の候補者だった。ポスター掲示場の枠が事実上「販売」され、候補者以外の人物や動物の写真が大量に貼られた光景は、民主主義の根幹である選挙の趣旨から大きくはずれ、あるべき姿ではない。

 制限する規定がないとはいえ、投票と無関係のものが混在しては有権者を惑わせかねない。都選管は貼る場所がない候補者にはクリアファイルを渡して固定するよう求めたが、あまりに対応が後手で公平性にも問題があった。選挙運動表現の自由に配慮しつつ、脱法的な行為をどう防ぐか、法規制のあり方を含め与野党で議論を急ぐときだ。

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