June 02, 2023
『盗作小説』ジーン・ハンフ・コレリッツ/鈴木恵(訳)
謎解きが複雑であればあるほどミステリーはおもしろい。あたりまえだ。ミステリーを読み慣れてくると、仕掛けにも慣れてくるので、ちょっとやそっとのひねりでは物足りなくなってしまう。それはそれでどうなのかと思うけれど。
ややひねりが足りないかな、というのが正直な感想だ。原作の題名(『The Plot』)どおり、プロットそのものは悪くない。でも、なんだかストーリーが見えてしまって、意外にもそれが思った通りの結末だったという……。あ、やっぱりそこに落ち着いたね、というかんじ。逆に言えば、伏線がしっかりしていたからわかりやすかったのか? ヒントがわかりやすかった?
新作を書くことができなくなった元ベストセラー作家のジェイコブは、大学で創作のクラスを教えている。ある年、エヴァンという生意気で態度も悪い生徒が入ってくるが、その生徒の作品のプロットを聞いて、その素晴らしさに衝撃を受ける。しかし3年後エヴァンがすでに亡くなっていたことを知り、ジェイコブは彼のプロットを自分の作品として発表し、それが超ベストセラーとなる。
そんなところに、あれは盗作だということを知っている、といった内容の手紙が届き始める。
エヴァンは生前、ジェイコブ以外のだれにもあのプロットを話していなかったはずだ。ましてや、ジェイコブがそのプロットを知っていることを知る人物など思い当たらない。いったい誰が、どんな目的で、そもそもどうやってその事実を知りえて、この手紙を出してくるのか。ジェイコブは怯え、でも誰かに相談するわけにもいかず、自ら手紙の主を探すことにする。
作者の思惑どおりなのかもしれないけれど、本筋よりもその問題となるベストセラー作品、「クリブ」がのストーリーがおもしろい。最近よくある手法のような気もするが、一つの作品で二つおいしい、お得な(?)つくりだ。
あらためて考えると、ひねりが足りないわけではない。ひねったもののほどき方なのかな。
読者をびっくりさせる方法がすこし甘いような気がする。
……なあんて、エラそうだな。笑