いしいしんじ
May 02, 2007
『ぶらんこ乗り』 いしいしんじ 【by ぶんこや】
ぶらんこ乗り
いしいしんじはマジシャンだ。
なあんて、解説なんかによくありそうな書き出しをしてみた(笑)
いしいしんじの世界は独特で、そこから何かをつかもうと、あるいは学ぼうとか作者の考えを知ろうとか、そういうことを思いながら読むと魅力が半減してしまうと思う。もちろん作品の中から受ける教訓(っていう言葉はちょっとイヤだけど)みたいなものはある。作者がどんな意図で作品を書きたかったかとかも、おぼろげながら、わかる。でも、そうやって「分析」のような作業をしてしまうには、もったいない。もっと感性で読みたい。それが、いしいしんじの世界だ。
『ぶらんこ乗り』は絶賛されたとかものすごく泣けたとか、そういう評価が一人歩きしているような作品だと思う。作品自体はそういう強いものではない。注意深く目を凝らしていないとするっと過ぎてしまうような言葉や想いがたくさんある。だから、感性を大きく開いた状態でないと、「なんだこりゃ?」になってしまう物語かもしれない。けっして「泣き」を期待して読んではいけない。
物語は、物語の舞台の当初から2年目に声を失ってしまう、天才的な弟が書いた、さまざまな「おはなし」を主に語られる。そのおはなしがいろいろな意味で奥深い。とても優しい気持ちに包まれるのだけど、なにかぽっかりとさみしい、そんな気分にさせられる。平易な言葉とひらがなで書かれているところがまたいい。
いしいしんじは、何かを訴えたいとか何かを表現したいとかそういうのではなくて、おとぎ話を書き続けていきたいんだろうな、とぶんこやはそう思っている。
『ぶらんこ乗り』は良かった。それなのに★3つなのは、たぶん『プラネタリウムのふたご』が良すぎたせいだと思う。★3つにしたけれど、限りなく4にちかい★3、というくらいに考えてほしい。どちらが好きかは人によると思う。世の中の評価は『ぶらんこ乗り』の方が高いみたいよ。
【いつも応援ありがとう★ ぶんこや】
いしいしんじはマジシャンだ。
なあんて、解説なんかによくありそうな書き出しをしてみた(笑)
いしいしんじの世界は独特で、そこから何かをつかもうと、あるいは学ぼうとか作者の考えを知ろうとか、そういうことを思いながら読むと魅力が半減してしまうと思う。もちろん作品の中から受ける教訓(っていう言葉はちょっとイヤだけど)みたいなものはある。作者がどんな意図で作品を書きたかったかとかも、おぼろげながら、わかる。でも、そうやって「分析」のような作業をしてしまうには、もったいない。もっと感性で読みたい。それが、いしいしんじの世界だ。
『ぶらんこ乗り』は絶賛されたとかものすごく泣けたとか、そういう評価が一人歩きしているような作品だと思う。作品自体はそういう強いものではない。注意深く目を凝らしていないとするっと過ぎてしまうような言葉や想いがたくさんある。だから、感性を大きく開いた状態でないと、「なんだこりゃ?」になってしまう物語かもしれない。けっして「泣き」を期待して読んではいけない。
物語は、物語の舞台の当初から2年目に声を失ってしまう、天才的な弟が書いた、さまざまな「おはなし」を主に語られる。そのおはなしがいろいろな意味で奥深い。とても優しい気持ちに包まれるのだけど、なにかぽっかりとさみしい、そんな気分にさせられる。平易な言葉とひらがなで書かれているところがまたいい。
いしいしんじは、何かを訴えたいとか何かを表現したいとかそういうのではなくて、おとぎ話を書き続けていきたいんだろうな、とぶんこやはそう思っている。
『ぶらんこ乗り』は良かった。それなのに★3つなのは、たぶん『プラネタリウムのふたご』が良すぎたせいだと思う。★3つにしたけれど、限りなく4にちかい★3、というくらいに考えてほしい。どちらが好きかは人によると思う。世の中の評価は『ぶらんこ乗り』の方が高いみたいよ。
【いつも応援ありがとう★ ぶんこや】
March 22, 2007
『プラネタリウムのふたご』 いしいしんじ
プラネタリウムのふたご
読書の喜び、物語を読むたのしさを久しぶりに心から味わうことができた。物語が進んでいくわくわく感、勇気、感動、哀しみ。言葉にするとありふれてしまうが、本物のそういうものたちが1冊にぎゅぎゅっとつまっている。『モモ』や『星の王子様』に通じるような純粋なプロットがあり、あえてひらがなで記されたやわらかい言葉(こころ・おもい・ねがい・かなしい などなど)と美しい文章の中で、この世の邪悪なものやまちがったものも語られる。
星の見えない村のプラネタリウムで拾われ、彗星にちなんで名づけられたテンペルとタットル。ある日村を訪れた手品師一座の荷物の中にひょんなことから紛れ込んでしまったテンペルは、そのまま一座と共に旅する。明るく気が強いテンペルは世界一の手品師に、穏やかで夢見がちなタットルは昼間は郵便夫、夜はプラネタリウムの”星の語り部”にと、運命は双子を離れ離れにした。テンペルから送られてくるたくさんのうれしい知らせ、山の掟やまじない、星が語る真実、人の心を救済するテンペルの手品・・・。汚れたものがあふれる世界で、ふたごたちはいつでも清らかだ。読み終わってからもしばらく涙が止まらなかった。
決して教訓的ではないのに、生き方や物の見方をもういちどきちんと考え直してみたくなるような小説だった。
生きているうちにあとどれだけ、こういう素敵な物語にめぐりあえるだろうか。
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読書の喜び、物語を読むたのしさを久しぶりに心から味わうことができた。物語が進んでいくわくわく感、勇気、感動、哀しみ。言葉にするとありふれてしまうが、本物のそういうものたちが1冊にぎゅぎゅっとつまっている。『モモ』や『星の王子様』に通じるような純粋なプロットがあり、あえてひらがなで記されたやわらかい言葉(こころ・おもい・ねがい・かなしい などなど)と美しい文章の中で、この世の邪悪なものやまちがったものも語られる。
星の見えない村のプラネタリウムで拾われ、彗星にちなんで名づけられたテンペルとタットル。ある日村を訪れた手品師一座の荷物の中にひょんなことから紛れ込んでしまったテンペルは、そのまま一座と共に旅する。明るく気が強いテンペルは世界一の手品師に、穏やかで夢見がちなタットルは昼間は郵便夫、夜はプラネタリウムの”星の語り部”にと、運命は双子を離れ離れにした。テンペルから送られてくるたくさんのうれしい知らせ、山の掟やまじない、星が語る真実、人の心を救済するテンペルの手品・・・。汚れたものがあふれる世界で、ふたごたちはいつでも清らかだ。読み終わってからもしばらく涙が止まらなかった。
決して教訓的ではないのに、生き方や物の見方をもういちどきちんと考え直してみたくなるような小説だった。
生きているうちにあとどれだけ、こういう素敵な物語にめぐりあえるだろうか。
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February 16, 2007
『東京夜話』 いしいしんじ (新潮文庫)
東京夜話
最近の注目の作家のひとりらしいが、なかなか懐に秘めているものの深さ広さを感じる。自堕落な村上春樹風?というか、雰囲気が初期の村上春樹の短編によく似ているが、味付けやエッセンスがまるで違う。苦手な人はまったく受けつけないタイプの作品だと思う。絵本作家だったこともあるらしいので、こういったエッセイ風のもの以外ではどんな小説としてできあがっているのか、とても気になる。たしかに注目の作家さんであることは間違いないようだ。
本作品は、東京の街(下北沢、神保町、銀座、池袋、柴又などなど)を題材にした、個性あふれるシュールで、それでいてリアリスティックな17の短編が集められている。「こりゃいかんなぁ」というもの(たとえば「銀座」)もあれば、心のどこかが震えるようなもの(たとえば「浅草」)もある。変な話あり、不思議な話あり、薄汚れた感じの話あり、気持ち悪い話あり、しみじみした話あり、のまさに現代の東京に巧みなイマジネーションを加えてお話にしたものだ。現代のおとぎ話みたいなものかな。
東京という巨大な街に住みつくでもなく、なじむでもなく、拒否するでもなく、受け入れるでもなく、なんというか、”そこにそのままいる”といったかんじがあふれる現代版都会のものがたり。好きか嫌いかは、あなたの感覚しだい。
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最近の注目の作家のひとりらしいが、なかなか懐に秘めているものの深さ広さを感じる。自堕落な村上春樹風?というか、雰囲気が初期の村上春樹の短編によく似ているが、味付けやエッセンスがまるで違う。苦手な人はまったく受けつけないタイプの作品だと思う。絵本作家だったこともあるらしいので、こういったエッセイ風のもの以外ではどんな小説としてできあがっているのか、とても気になる。たしかに注目の作家さんであることは間違いないようだ。
本作品は、東京の街(下北沢、神保町、銀座、池袋、柴又などなど)を題材にした、個性あふれるシュールで、それでいてリアリスティックな17の短編が集められている。「こりゃいかんなぁ」というもの(たとえば「銀座」)もあれば、心のどこかが震えるようなもの(たとえば「浅草」)もある。変な話あり、不思議な話あり、薄汚れた感じの話あり、気持ち悪い話あり、しみじみした話あり、のまさに現代の東京に巧みなイマジネーションを加えてお話にしたものだ。現代のおとぎ話みたいなものかな。
東京という巨大な街に住みつくでもなく、なじむでもなく、拒否するでもなく、受け入れるでもなく、なんというか、”そこにそのままいる”といったかんじがあふれる現代版都会のものがたり。好きか嫌いかは、あなたの感覚しだい。
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