amazonのサイトでは演奏者がパールマンになっている。買って大丈夫なんだろうか?
ヴァインベルクのヴァイオリン・ソナタ全集をリリースしたドイツのヴァイオリ二スト、リナス・ロスが、今度はブリテンとヴァインベルクのヴァイオリン協奏曲を録音した。伴奏はミケル・キュトソン指揮のベルリン・ドイツ交響楽団。
ブリテンのヴァイオリン協奏曲は1939年に作曲され、翌年1940年にバルビローリ指揮ニューヨーク・フィルによって初演された。ブリテンは当時の潮流だった無調音楽には組しない姿勢を取っており、この曲でも特定の調性によっているわけではないが、一つ一つのフレーズごとの調性感は明確で、そのことが親しみ易さに繋がっている。
全体を覆う雰囲気はとても不気味だが、中間部の静かになった所などではイタリア風の懐かしいメロディが出て来たりして、甘い雰囲気に包まれる。無調的ではないが、奇妙な香りが感じられる音楽で、ブリテンの曲の中では取っつきやすい方だと思う。
第2楽章はヴィヴアーチェで、急速なテンポで音楽が疾走して行くが、フレーズが特徴的で耳に馴染みやすいので、曲想を把握しやすい。その上で奇妙な雰囲気はちゃんと保たれていて、ブリテン独自の音楽が展開されている。
第3楽章も同様の特徴を持っているが、ゴチャゴチャしてグロテスクな楽想の中に突然甘いメロディが出て来て意表を突かれる。これが周りの伴奏と一体になって抒情的な雰囲気を作るのではなく、突然そこだけ甘いメロディになるので、周りと調和せずにかえって変な気分を感じてしまうのだ。中程で盛り上がる所ではロシア風で、チャイコフスキーを思わせる所もあった。
ヴァインベルクのヴァイオリン協奏曲は1959年の作品。良くも悪くもヴァインベルクらしい作品だ。第1楽章は緊張感の高いカッコいい主題で始まる。ロシア民謡風の濃いメロディが至る所に顔を出し、不協和音も手伝って、適度に前衛的に感じさせるところがヴァインベルク風。それでもブリテンの曲に比べると、やはり穏健な気がする。ブリテンは楽想が分かり易くてもその奇妙さは突き抜けた個性があったが、ヴァインベルクにはそれがない。
やっぱりヴァインベルクの本質は、ロシア風の抒情的なメロディということになるのだろう。それがある程度の不協和音や前衛的な構成を伴うことで緊張感を高めている。「ショスタコーヴィチを抒情的にしたような作品」と言われるのもそこが原因だと思う。
第2楽章の悲劇的な開始は、いかにもそれを物語っている。暗い雰囲気で濃厚なメロディが歌われるのは聴いていてゾクゾクするが、なかなかそれが続かないというか、緊張感が維持できない所が弱い。
第3楽章もメランコリックなメロディが世をはかなむような雰囲気を作り出していて、ヴァインベルクの悲劇的な人生を思わせるが、第2楽章と同様、美しいメロディが突き抜けた爆発、慟哭といったものに発展して行かない所がもどかしい。
第4楽章は明るく前向きの音楽で、多少の邪気を孕んでいる。メリハリの利いた楽想が展閲され、楽しませてくれるが、やはりどことなく冗長さが拭えない。それはヴァイオリンのロスと、キュトソン指揮ベルリン・ドイツ響が負うべきところもあって、どうもこのコンビはヴァインベルクの曲から一歩引いて客観的な演奏を目指そうとしているようなのだ。
高い緊張感のある演奏で曲の良さを感じてもらおうという方法は、曲によってはアリだと思うが、ヴァインベルクの様な構成が少々弱い曲では、演奏者の思い入れの強さが必要なのではないだろうか。もっと曲にのめり込んで、曲と格闘して見せるやり方じゃないと、曲の良さが発揮できない気がした。
高い緊張感のある演奏で曲の良さを感じてもらおうという方法は、曲によってはアリだと思うが、ヴァインベルクの様な構成が少々弱い曲では、演奏者の思い入れの強さが必要なのではないだろうか。もっと曲にのめり込んで、曲と格闘して見せるやり方じゃないと、曲の良さが発揮できない気がした。
音質は非常に良い。ヴァイオリンの音はとても美しく、艶やかで鋭く、雑音や嫌な音は全く感じられない。オーケストラとの溶け合いもバッチリな一方、ちゃんとソロが存在感を持って浮き上がっているのは、協奏曲の録音としては特筆すべきレベルに達していると思う。
①ベンジャミン・ブリテン(Benjamin Britten)「ヴァイオリン協奏曲作品15」
②ミェチスワフ・ヴァインベルク(Mieczyslav Weinberg)「ヴァイオリン協奏曲ト短調作品67」
ヴァイオリン:リナス・ロス(Linus Roth)
管弦楽:ベルリン・ドイツ交響楽団(Deutsches Symphonie-Orchester Berlin)
指揮:ミケル・キュトソン(Mihkel Kutson)
指揮:ミケル・キュトソン(Mihkel Kutson)
Plaatpaal このCDが聴けるサイト