オッフェンバック:歌劇「ホフマン物語」
モリス(ジェイムズ)
ユニバーサル ミュージック
2015-01-14

小澤征爾がラジオ・フランスとの共同製作で録音した、オッフェンバックの「ホフマン物語」。ドミンゴ、グルベローヴァ、クリスタ・ルートヴィヒ、アンドレアス・シュミット、ジェイムス・モリスなど、当代一流の歌手をそろえた豪華なCDになっている。私が持っているのは、2枚組CDの聴き所を集めた抜粋盤。

前奏曲の入りの激しいこと。気合い入りまくりって感じ。ドミンゴが歌うホフマンは、持ち前の輝かしい声が響き渡っているし、嘆きに満ちたホフマンの性格描写も上手い。何もかも上手過ぎて、もうちょっとフラフラと迷っていて情けないところがあってもいい気がするけど、その辺りは好みの問題だろう。

このCDではグルベローヴァがオランピア、アントーニア、ジュリエッタの3人のヒロインを一人で歌っている。オッフェンバックは舞台でも3人を一人のソプラノが歌うよう指示しているが、実際は負担が多き過ぎるのか、舞台では別の歌手が分担することが多い。

舞台では大変だが、CD録音ならば簡単に問題解決する。この場合歌手の喉への負担よりも、3人のキャラクターをどう歌い分けて違いを出すかの方が大変になってくるだろう。

自動人形のオランピアは、透明感があって美しい声の上に、得意のコロラトゥーラで、とても可愛いのキャラクターを表現している。機械仕掛けのたどたどしさを感じさせるところもあって完璧。

アントーニアの「逃げてしまった雉鳩は」の所などは、抒情的で奥行きのある歌唱を聴かせ、オランピアノ時とはまた違った魅力がある。

ジュリエッタも当然上手く歌っているけど、ここはグルベローヴァの純粋でクリアな声で聴くと、何だかジュリエッタが清らかな心の持ち主に聴こえて来る気がした。ジュリエッタって、ホフマンの鏡の中の影を編し取ってしまう性悪女じゃなかつたっけ?ここだけ聴くと、本当はホフマンを愛している美しい女のようなイメージがした。

ニクラウスとミューズを歌っているクラウディア・エーダーは、発音が不明瞭だが、暖かくふくよかな声で聴かせるタイプ。ちょっと昔ながらのメゾ・ソプラノって感じに聴こえた。

ジュリエッタと共に歌う有名な舟歌では、グルベローヴァと見事なデュエットを聴かせる。エーダーの声がモヤモヤしているが、そこが却って上手くグルベローヴァのクリアな声と溶け合って、美しく夢のような世界を作っていた。最後のミューズの歌も、暖かい情感が発揮されて、しみじみとした歌が聴けた。

ミュンヘンでヴォータンを歌っていたジェイムズ・モリスが、アントーニアを破滅させるミラクル博士を歌っている。ちょっと声質が軽く聴こえるが、深刻で恐ろしげな歌い方は上手い。

ここではアントーニアの母にクリスタ・ルートヴィヒが起用され、豪華歌手陣の共演を堪能できる。とても盛り上がる場面で、圧倒的な盛り上がりを見せるが、オーケストラに比べて歌手の音量が大きすぎる気がしないでもない。

これはこの録音全体に言えることだが、歌唱がクローズアップされていて、その点では歌を満喫できるが、ヴォリュームを上げると、最大音量の所では録音の限界が見えてしまいビビっている。生き生きとして力演しているオーケストラとのバランスがもうちょっと上手く取れていたら、舞台全体が盛り上がって聴こえると思うんだけど。

Offenbach: Tales of Hoffman
Etc.
Deutsche Grammophon

私が聴いているハイライト盤は、全体で68分57秒。もう1曲入るんじゃない?と思ってしまう。ジュリエッタの幕が終わってすぐに最後のミューズの歌が入っているので、この間に場面を入れて、ミューズの歌を聴く準備を聴く者にさせるようにして欲しかった。

オッフェンバック
歌劇「ホフマン物語」抜粋盤
ホフマン:プラシド・ドミンゴ
オランピア、アントーニア、ジュリエッタ:エディタ・グルベローヴァ
ニクラウス、ミューズ:クラウディア・エーダー
リンドルフ:アンドレアス・シュミット
コッペリウス:ガブリエル・パキエ
ミラクル博士:ジェイムズ・モリス
ダベルトゥット:フスティーノ・ディアス
クレスペル:ハラフレト・シュタム
アントニアの母の声:クリスタ・ルートヴィヒ
指揮:小澤征爾
管弦楽:フランス国立管弦楽団
合唱:フランス放送合唱団
収録:1986年5,6月、1988年7月、1989年8月パリ、ラジオ・フランス

3045050

3045051