SONATAS FOR VIOLIN & PIAN
MOZART, W. A.
SONYC
2013-05-03

モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ 第24番K.296は、1778年3月11日、マンハイムでピアノを教えた15歳の少女テレーゼ・ピエロン のために作曲された。彼女はマンハイム宮廷顧問官ゼラリウスの養女で、モーツァルト母子はゼラリウスの好意によって宿屋を引き払い、彼の家に厄介になっていたのだった。

モーツァルトはピエロン嬢のことを「僕たちのところの女の精」と書いており、 美しい少女に目のないところを発揮している。

作曲されたのはモーツァルト母子がマンハイムを立つ前の3月11日。3月12日に知人たちとのお別れコンサートが開かれ、モーツァルトはこの曲をピエロン嬢への餞別としたのだった。

「ローザ・カンナビヒ嬢が第1を、ヴェーバー嬢が第2を、そして(わが家の妖精)ピエロン・ゼーラリウス嬢が第3を弾きました。3回練習して、とてもうまく行きました。」

ズーカーマンとナイクルグの全集は、この曲が「クラヴィーア二重奏曲」と書かれ、現在聴かれるヴァイオリンが主役の音楽と違って、どちらかといえばピアノが主役のソナタであることを意識したのか、他の録音とは違って、ヴァイオリンが引っ込み気味に録られている。

もちろんそれを意識してこのバランスになっているのか分からないが、聴いた感じではそう聴こえる。もう少しヴァイオリンが前に来てもいいと思ってしまう。

ズーカーマンのヴァイオリンは、古楽器演奏様式などどこ吹く風で、ロマンチックに歌っている。少々線の細い音色でしなやかに歌われるストラディバリウスは、時代を超えた美しさを保っている。

ピンカス・ズッカーマン(ヴァイオリン)
マーク・ナイクルグ(ピアノ)
録音時期:1990年
録音場所:ニューヨーク、マンハッタン・センター

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