NadegataPapaのクラシック音楽試聴記

クラシック音楽の試聴記です。オーケストラ、オペラ、室内楽、音楽史から現代音楽まで何でも聴きます。 カテゴリーに作曲家を年代順に並べていますが、外国の現代作曲家は五十音順にして、日本人作曲家は一番下に年代順に並べています。

レヒナー

グルジエフ、コミタス、モンポウ「モデラート・カンタービレ」P:クチュリエ、Vc:レヒナー

Moderato Cantabile
Anja Lechner
Ecm Records
2014-09-16


フランスのジャズ・ピアニスト、フランシス・クチュリエと、 ドイツ、カッセル生まれのチェロ奏者、アニア・レヒナーが作ったアルバム。クチュリエの作品と共に、グルジエフ、コミタス、モンポウといつた作曲家が採り上げられている。
 
グルジエフは、1866年、アルメニア生まれの著述家・舞踏作家・作曲家。色んな肩書きがあることからも分かるように、作曲以外にも、東洋を遍歴したり、心身統合セラピーを始めたりと、色んなことをしてあちこちに影響を及ぼした人だ。ただの怪しい人物と言う人もいる。
 
①「サイイドの祈りと踊り第3番、賛美歌第7番」は、エレジー調の物悲しい曲。調性の枠内にある音楽で、とてもロマンチックだ。映画音楽に使ったら良さそうな曲で、歌詞をつけたらいいバラード曲になりそう。
 
③「詩篇第8番“夜の行進"」も、物悲しく暗い雰囲気。ここでは不協和音も聴こえて来る。⑨詩編第11番も不気味なチェロのフレーズで始まり、静かな中で抒情的なフレーズが彷徨っているような曲。途中でモンポウの曲に繋がって行き、土俗的なフレーズをチェロが弾いて雰囲気もガラッと変わった。
 
このCDでピアノを弾いているクチュリエも、さりげなく自分の曲を3曲滑り込ませている。

②「ヴォヤージュ」は、ゆつたりとしたテンポの物悲しい曲。チェロの渋い音色に情感がこもっているのがいい。時々引きつったような音を出して、現代性もアピールしているのが、ちょっとしたアクセントになっている。ピアノの伴奏がずっと四分音符の和音を弾いている所がポピュラー音楽っぽい。
 
⑥「ソレイユ・ルージュ」は、複雑なリズムの曲で、このCDの中では異彩を放っている。ジャズのイディオムで書かれており、チェロもベースのようなフレーズを弾いているところもジャズそのもの。
 
⑦「蝶々」では、チェロが特殊奏法で奇妙な音を出しているが、そこに入ってくるピアノは割と聴き易いメロディ。チェロのフレーズは終始前衛的だけど、ピアノは透明で抒情的なジャズ・フレーズを歌っている。
 
ヴァダペット・コミタスは、アルメニアの作曲家。アルメニアの民謡を採取し、それを基にした作曲活動を行った。ここに納められている③「あなたはスズカケの木」は、ちょっと暗めの雰囲気のミディアム・バラード。ミニマル音楽っぱいピアノ伴奏に流麗なチェロのメロディが乗っている。
 
このCDで一番有名なのは、フェデリコ・モンポウだろう。熊本マリが入れ込んでいるって話なので、私でも名前くらいは知っていた。モンポウは、1893年、バルセロナ出身の作曲家。多くのピアノ曲を残している。

④「歌と踊り第6番」も物悲しく、①~③と同種の、調性に根ざした曲。後半でリズムが弾み始めると、独特の雰囲気に変わる。ここでは演奏者が前半のロマンチックな雰囲気を引きずってしまっていて、キチッとした変換ができていない。もっと鮮やかに弾き方を変えて、激しく鋭い演奏でコントラストを見せて欲しかった。
 
⑤「ひそやかな音楽第28番/内なる印象第1番」は、穏やかなバラードで、終始物悲しい雰囲気だった。

最後もモンポウで、⑩「内なる印象第8番」。ちょっと神秘的な雰囲気が漂っているけど、メロディは抒情的でロマンチック。あまりに耳当たりが良くて、つい他のことを考えてしまう。
 
CD全体を通しても、あまり集中して聴く音楽ではなく、BGM的に流してい洒落た雰囲気や東洋的なエキゾチックな世界に浸れる音楽だった。
 
「モデラート・カンタービレ(Moderato cantabile)」
①ゲオルギイ・グルジエフ(George Ivanovich Gurdjieff、1866~1949)&トーマス・ド・ハルトマン
「サイイドの歌/踊り第3番/詩篇第7番」
②フランソワ・クチュリエ:ヴォヤージュ
③ヴァダペット・コミタス(Komitas):あなたはスズカケの木
④フェデリコ・モンポウ(Federico Mompou,1893~1987):歌と踊り第6番
⑤モンポウ:ひそやかな音楽第28番/内なる印象第1番
⑥クチュリエ:ソレイユ・ルージュ
⑦クチュリエ:蝶々
⑧グルジエフ:詩篇第8番/ナイト・プロセッション
⑨グルジエフ:詩篇第11番/モンポウ:遠い祭り第3番
⑩モンポウ:内なる印象第8番
ピアノ:フランソワ・クチュリエ(Francois Couturier)
チェロ:アニア・レヒナー(Anja Lechner)
収録:2013年11月ルガーノ、スイス・イタリア語放送オーディトリオ
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マンスリアン「Quasi Parlando」Vn:コパチンスカヤ、Vc:レヒナー、トンプソン指揮アムステルダム・シンフォニエッタ

Quasi Parlando
T. Mansurian
Ecm Records
2014-03-31


ティグラン・マンスリアン(Tigran MansurianまたはTigran MansUlγan)は、1937年、レバノン生まれのアルメニア人作曲家。私は今まで全く知らない名前だったが、CDは結構出ていて、ECMが継続的に録音を行っている。カシュカシュアンによるヴィオラ協奏曲 なんてのもあった。
 
パトリシア・コパチンスカヤが参加していることがこのCDの目玉と言っていいだろう。あとジャズや現代音楽に造詣が深いドイツのチェロ奏者、アニヤ・レヒナーが参加している。
 
現代音楽と言っても、最近ではー昔前のように前衛一本槍でとにかく何がなんやら分からない音楽ばかりではなく、ハッキリしたメロディがあったり、調性が分かる伝統的な響きでできている曲もある。もちろん前衛的な音楽が廃れたわけではなく、基本的には現代音楽と言えば無調の前衛音楽という枠組みは生き残っていて、要するに何でありの状態で、これからの音楽はこれだ!というものは誰にも分からないのだ。
 
1曲目「ヴァイオリン、チェロ、弦楽オーケストラのための二重協奏曲」。聴衆の耳を惹き付けるようなメロディは見いだせないが、曲としてのまとまりは掴みやすく、全く混沌として何がなんやら分からないという風ではない。

最初は静々と始まり、楽章の中間辺りで激しい音楽になる。弦楽器が鋭く切り込み、不協和昔がギシギシときしみながら迫ってくる。まるで心に刃を突きつけられているような音楽だった。そんな具体的なイメージを思い浮かべることができるのは、調性がなくても曲の構造が把握し易いからだろう。後半はまた静かになり、結構変わった響きが出てきて、意外性を見せてくれた。
 
第2楽章も第1楽章と同じくラルゴの指定があるが、こちらは終始静かなまま。柔らかく伝統的な和声でできた曲だった。

「ヴァイオリンと弦楽オーケストラのためのロマンス」は、名前の通り抒情的な響きが現れていて、このCDの中では一番聴きやすい。断片的ではあるが、どこか東洋的な哀愁漂うメロディも聴かれ、静かな雰囲気と相まって、穏やかな湖の水面を児ているような曲だ。

3曲目には「Quasi(殆ど) Pariando」という題名がついているが、意味は分からなかっ た。②「ロマンス」ほど抒情的な雰囲気はなく、静かでちょっと不安な曲だ。所々調性のある和声が聞こえてくるし、メロディの断片はそこらに落ちているが、何となく掴み所のない曲だった。
 
最後に4楽章の大曲(?)ヴァイオリンと弦楽オーケストラのための協奏曲第2番「4つの厳粛な歌」が入っている。全楽章通して静かな部分が多いが、第1楽章は中でもとても静か。現れるフレーズが地味で変化が少なく、音数も極端に少ない。ハッキリ言ッて少々退屈だった。
 
第2楽章は弦楽オーケストラが活躍し、後期ロマン派の合奏曲のような感じ。激しいフレーズが色っぽい表現で迫ってきて、例えて言うならシェーンベルクの「浄夜」のようだった。
 
第3楽章はこの作曲家には珍しく、ソロ・ヴァイオリンに複雑なリズムが使っててあり、静かな部分が多くていいアクセントになっている。
 
アタッカで第4楽章に入り、ここではヴァイオリンの長く伸ばした音だけの、静かで単純な音楽に変化する。ビブラートなしで弾かれる弦の音は、まるで氷のように冷たく透明な印象で、その冷たい世界が次第に調性のある暖かい和音に包まれていく様は、じんわりと世界が変わっていくようだった。そして音楽は静かに終わる。
 
ティグラン・マンスリアン(Tigran Mansurian)
①ヴァイオリン、チェロ、弦楽オーケストラのための二重協奏曲
 (Dubbel Concerto voor viool, cello en strijkorkest) 
②ヴァイオリンと弦楽オーケストラのためのロマンス
 (Romance voor viool en strijkorkest) 
③チェロと弦楽オーケストラのための“Quasi parlando"
 (Quasi parlando voor cello en strijkorkest) 
④ヴァイオリンと弦楽オーケストラのための協奏曲第2番「4つの厳粛な歌」
(Concert no.2 'Four Serious Songs' voor viool en strijkorkest) 
ヴァイオリン:パトリシア・コパチンスカヤ(Patricia Kopatchinskja)
チェロ:アニヤ・レヒナー(Anja Lechner)
弦楽オーケストラ:アムステルダム・シンフォニエッタ(Amsterdam Sinfonietta)
指揮:カンディダ・トンプソン
収録: 2012年10月アムステルダム、ムジークへボウ
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